貸すために建てられた、4棟でいちばん古い町家
旧村上家住宅貸家は、愛媛県大洲市大洲字志保町東にある江戸後期(1751年〜1830年)建築の町家で、令和5年(2023年)8月7日に登録有形文化財となった。木蝋商の村上家が構えた屋敷のうち、志保町(しおまち)通に西面する付属屋のさらに北隣に建つ。木造2階建、瓦葺、建築面積39平方メートル。
名前のとおり、この棟は人に貸すための建物である。文化庁の国指定文化財等データベースは4棟それぞれに種別を与えているが、主屋・付属屋・土蔵が「住宅」に分類されるのに対し、旧村上家住宅貸家だけは「産業3次」、つまり第三次産業の建物として扱われている。分類が用途の違いを記録している。
建築年代も4棟の中で最も古く、江戸後期にさかのぼる。主屋の明治2年頃(1869年)はもちろん、江戸末期建築の付属屋よりも前である。村上家が喜多郡屈指の豪商になる以前から、この敷地に建っていた棟ということになる。その後、昭和前期と令和元年(2019年)の二度、改修を受けた。
登録の理由と「建ちが低い」という評価
旧村上家住宅貸家の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁のデータベースは評価の末尾に、建ちが低く地域の歴史的景観をつくる町家、と書いている。「建ちが低い」は建物全体の高さが抑えられているという意味で、町家の年代を読む手がかりになる表現である。
近世の町家は2階の階高を低く抑えるのが普通だった。時代が下るにつれて2階が本格的な居室として使われるようになり、階高が上がっていく。旧村上家住宅貸家の低い姿は、主屋の高い正面と並べたときに、両者の建築年代の隔たりをそのまま見せることになる。
もう一点、志保町通に面した1階の造りが主屋・付属屋と異なる。愛媛県の解説によれば、通りに面した1階を軒の深い出桁造(だしげたづくり)とするのは主屋と付属屋の2棟で、旧村上家住宅貸家については文化庁のデータベースも下屋を付すとのみ記す。同じ屋敷の中で、貸家だけが少し簡素な構えを持つ。
屋根は切妻造の平入で桟瓦葺。登録有形文化財という制度は、こうした主役ではない建物にも保護の網をかけられるところに特徴がある。
見どころ
2階の正面には出窓が設けられている。この点は付属屋と共通するが、旧村上家住宅貸家では出窓の内側に縁を付し、そこから通りを見下ろす構成になっている。西面する町家なので、午後になると縁のあたりまで日が差し込む。
1階は前土間形式で、土間は建物の前寄りに納まる。奥へ抜ける通り土間ではない。39平方メートルという規模で貸すことを前提にすれば、この間取りは合理的である。
2階は2室に分かれ、西室に床構えが備わる。床の間を持つ座敷を、縁とともに通り側に置いた。貸家であっても客を通す部屋を上に持たせるという判断が、この4棟に共通する考え方だったことが分かる。
外から3棟を並べて見るとき、旧村上家住宅貸家は北の端に立つ。南から主屋、付属屋、貸家と続き、間口も軒の高さも一様ではない。ひとつの家が時期を分けて建て継いだ結果が、そのまま通りの表情になっている。
見学方法とアクセス
旧村上家住宅貸家は現在、分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」のOKI棟の一部として使われている。所在地は大洲市大洲字志保町東378で、ほかの3棟の379とは地番が分かれる。内部に入れるのは宿泊者や施設利用者に限られ、一般の見学は受け付けていない。外観は志保町通から自由に見られ、料金はかからない。
撮影は、通りからの外観であれば自由に行える。内部については営業中の宿泊施設であるため、運営者の案内に従ってほしい。
JR予讃線の伊予大洲駅から南へおよそ1.5キロ。徒歩で20分ほど、車では5分ほどの距離である。運営者は前日までの予約制で駅からの送迎車を運行している。車で向かう場合は松山自動車道の大洲肱南インターチェンジから約10分。宿泊者用の駐車場は「おはなはん通り駐車場」にある。
肱南(こうなん)地区の古い町割りが残る一帯で、旧村上家住宅貸家の前を通る志保町通は、南へたどると付属屋と主屋の正面に続く。
よくある質問
- 旧村上家住宅貸家は見学できますか。
- 外観は志保町通からいつでも無料で見られます。内部は宿泊施設として使われており、宿泊者や施設利用者に限られます。
- 旧村上家住宅貸家はいつ建てられたのですか。
- 江戸後期、西暦では1751年から1830年の間の建築と推定されており、村上家の4棟で最も古い建物です。昭和前期と令和元年(2019年)に改修されています。
- 旧村上家住宅貸家はどの文化財区分ですか。いつ登録されましたか。
- 登録有形文化財(建造物)です。令和5年(2023年)8月7日に登録されました。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。
- 旧村上家住宅貸家は主屋とどこが違うのですか。
- 建物全体の高さが低く、1階の構えも簡素です。また文化庁の分類でも、主屋が「住宅」であるのに対し、この棟だけが「産業3次」として扱われています。
- 旧村上家住宅貸家へのアクセスを教えてください。
- JR予讃線の伊予大洲駅から南へおよそ1.5キロ、徒歩20分ほどです。車では5分ほどで、運営者が前日までの予約制で送迎車を出しています。松山自動車道の大洲肱南インターチェンジからは約10分です。
基本データ
| 名称 | 旧村上家住宅貸家(きゅうむらかみけじゅうたくかしや) |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県大洲市大洲字志保町東378 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 令和5年(2023年)8月7日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積39平方メートル |
| 所有者 | 株式会社KITA |
| 公開状況 | 宿泊施設として活用。外観は通りから見学可、内部は宿泊者等に限る |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 旧村上家住宅貸家(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014696
- 文化遺産オンライン 旧村上家住宅貸家
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/550018
- わがまちの文化財 旧村上家住宅 主屋・付属屋・土蔵・貸家(大洲市)
- https://www.city.ozu.ehime.jp/site/bunkazai/66298.html
- えひめの文化財 旧村上家住宅主屋ほか3件(愛媛県)
- https://www.pref.ehime.jp/ehimenotakara/758.html
- NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町 OKI棟
- https://www.ozucastle.com/stay/oki
- NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町 アクセス
- https://www.ozucastle.com/access/
最終更新日: 2026.09.04