木蝋商の店構えを残す町家
旧村上家住宅主屋は、愛媛県大洲市大洲字志保町東にある明治2年頃(1869年)建築の町家で、令和5年(2023年)8月7日に登録有形文化財となった。旧大洲城下の志保町(しおまち)通に西面して建ち、木造2階建、瓦葺、建築面積は165平方メートルを測る。
村上家は江戸時代から「堀之内」の屋号で商いを続けた家である。幕末から明治前期にかけては、和ろうそくなどの原料となる木蝋(もくろう)の製造で喜多郡屈指の豪商となった。7代目の村上長次郎(1853〜1919)は大洲銀行の設立に加わって長く頭取を務め、製糸業をはじめとする地元産業の育成にも関わり、愛媛県議会議員などの公職を歴任している。
建築年代の根拠となったのは、建物に残る「家内安全」の祈祷札(きとうふだ)である。大洲市の文化財解説はこの札をもとに明治2年の建築としており、文化庁の国指定文化財等データベースも西暦1869年を採る。昭和57年(1982年)頃と令和元年(2019年)の二度、改修を受けている。
登録の理由と、間口6間半という数字
旧村上家住宅主屋の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁のデータベースは、間口が長大で地域の歴史的景観をつくる町家、と短く評価している。
その間口は6間半、およそ12メートルある。町家は通り沿いに軒を接して並ぶため、間口の広さがそのまま家の格を示した。志保町通に面した1階は軒の深い出桁造(だしげたづくり)で、桁を柱筋より前へ持ち出して深い庇をつくる形式である。愛媛県の解説によれば、この軒下を支えるのは彫刻を施した持送りで、装飾を惜しまない構えになっている。
2階の外壁は漆喰塗り仕上げの大壁とし、柱を塗り込めて壁面を平らに見せる。そこへ出格子を突き出して、白い壁と木の格子の対比をつくる。屋根は切妻造の平入で、桟瓦葺。通りに向かって下屋が差し掛かる。
登録有形文化財は届出制を基本とする緩やかな保護制度で、外観を保ちながら建物を使い続けることを前提としている。旧村上家住宅主屋のように、住宅から宿泊施設へ用途を変えて残った例は、この制度の趣旨に沿ったものといえる。
見どころ
通りに立って最初に目に入るのは、長い1階の軒である。深く張り出した庇の下は影になり、その奥に出格子が並ぶ。夕方、西日が正面から当たる時間帯には、格子の桟が壁に細い縞を落とす。西を向いた正面だからこそ起きることで、朝と夕方では表情がまるで違う。
内部の骨格も旧村上家住宅主屋の見どころである。1階には中土間が奥まで通る。土間は炊事や作業の場であると同時に、店と住まいを繋ぐ通路でもあった。大洲市の解説は、この表土間に大黒柱が立つことを記している。土間の南東側には床構えを備えた座敷があり、客を迎える場として整えられている。
2階には南側に三間続きの座敷が並ぶ。町家の2階を接客用の座敷にするのは、この4棟に共通する特徴である。旧村上家住宅主屋ではその規模がもっとも大きい。欄間には「宮島」や「富士山」が描かれたものが残り、桃をかたどった釘隠しも見られると、現在この建物を運営する事業者は説明している。
見学方法とアクセス
旧村上家住宅主屋は現在、分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」のOKI棟として使われている。フロントが置かれた建物で、内部に入れるのは宿泊や施設利用の場合に限られる。外観は志保町通から自由に眺められ、見学料はかからない。
撮影については、通りからの外観撮影に制限はない。内部は営業中の宿泊施設であるため、撮影の可否は運営者に確認してほしい。
最寄り駅はJR予讃線の伊予大洲駅で、旧村上家住宅主屋までは南へおよそ1.5キロ。徒歩なら20分ほど、車では5分ほどの距離にある。運営者は前日までの予約制で駅からの送迎車を用意している。車の場合は松山自動車道の大洲肱南インターチェンジから約10分。宿泊者用の駐車場は近くの「おはなはん通り駐車場」に用意されている。
建物は肱南(こうなん)地区の町並みの中にあり、志保町通に沿って北へ、付属屋、貸家と並ぶ。3棟をまとめて正面から見ると、間口の広さの違いがよく分かる。
よくある質問
- 旧村上家住宅主屋は見学できますか。料金はかかりますか。
- 外観は志保町通からいつでも見られ、料金はかかりません。内部は宿泊施設として使われており、宿泊者や施設利用者に限られます。
- 旧村上家住宅主屋はいつ建てられたのですか。
- 明治2年頃、西暦では1869年頃の建築とされます。建物に残る「家内安全」の祈祷札が年代の根拠です。昭和57年(1982年)頃と令和元年(2019年)に改修されています。
- 旧村上家住宅主屋はどの文化財区分ですか。いつ登録されましたか。
- 登録有形文化財(建造物)です。令和5年(2023年)8月7日に、付属屋・土蔵・貸家とともに登録されました。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。
- 旧村上家住宅主屋へは伊予大洲駅からどう行けばよいですか。
- JR予讃線の伊予大洲駅から南へおよそ1.5キロ、徒歩20分ほどです。車なら5分ほどで、運営者が前日までの予約制で送迎車を出しています。松山自動車道の大洲肱南インターチェンジからは約10分です。
- 旧村上家住宅主屋は誰が建てた建物ですか。
- 木蝋の製造で財を築いた大洲の商家、村上家の住宅です。屋号は「堀之内」。7代目の村上長次郎は大洲銀行の頭取や愛媛県議会議員を務めた人物です。
基本データ
| 名称 | 旧村上家住宅主屋(きゅうむらかみけじゅうたくおもや) |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県大洲市大洲字志保町東379 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 令和5年(2023年)8月7日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積165平方メートル |
| 所有者 | 株式会社KITA |
| 公開状況 | 宿泊施設として活用。外観は通りから見学可、内部は宿泊者等に限る |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 旧村上家住宅主屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014693
- 文化遺産オンライン 旧村上家住宅主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/560855
- わがまちの文化財 旧村上家住宅 主屋・付属屋・土蔵・貸家(大洲市)
- https://www.city.ozu.ehime.jp/site/bunkazai/66298.html
- えひめの文化財 旧村上家住宅主屋ほか3件(愛媛県)
- https://www.pref.ehime.jp/ehimenotakara/758.html
- NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町 OKI棟
- https://www.ozucastle.com/stay/oki
- NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町 アクセス
- https://www.ozucastle.com/access/
最終更新日: 2026.09.04