森家住宅湯殿とは
森家住宅湯殿は、愛媛県西条市氷見にある天保12年(1841年)頃建築の浴室棟で、令和5年(2023年)8月7日に登録有形文化財(建造物)として登録された。屋号を「住吉屋」と称した大地主・森家の屋敷にあり、主屋の上段の間から渡廊下でつながる位置に建つ。
建築面積は24平方メートル。5件ある森家住宅の登録物件のなかで最も小さいが、屋敷の格式を考えるうえでは外せない一棟である。石鎚山へ向かう街道に面した敷地で、この建物だけが石垣を築いて一段高い場所に据えられている。
藩主のための水まわり
森家住宅湯殿がなぜ丁寧に造られているかは、屋敷の使われ方を知るとわかる。森家は伊予西条藩から庄屋格を与えられ、最盛期には2,000石を有した。西条藩主のほか小松藩主や松山城主を迎えた記録が残り、藩主専用の御成門まで敷地の北に設けられている。
文久4年(1864年)の森家文書には、西条藩主が訪れた際にどの部屋をどう使ったかが詳しく書かれている。愛媛県の答申資料は、その記述に対応する建物が現存する点を、森家住宅の価値を高める要素として挙げた。湯殿はその部屋割りの一部を占める。文化庁の解説も、御成門の格式は湯殿まわりの格に対応すると述べている。
構造は木造平屋建、瓦葺。入母屋造桟瓦葺の屋根を架け、内部には中廊下を通す。街道側を厠として木製の便器を据え、庭側を湯殿として木製の湯船を置いた。上段の間から渡廊下を進めばそのまま到達できる動線で、来客が母屋を横切らずに用を足せる構成になっている。登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。
見どころ
まず外から石垣を見てほしい。森家住宅湯殿は平屋でありながら、地面より一段高い位置にある。排水を処理しやすくする実用の判断でもあり、同時に建物の格を上げる操作でもある。
庭側には出格子窓が開く。湯を使う場所に格子窓を設けるのは、視線を遮りながら湯気を抜き、庭の緑を目に入れるためである。湯船に身を沈めた高さから外がどう見えるかを想像しながら立ってみたい。
内部では木製の湯船と木製の便器が残っている点に注目したい。水まわりは傷みやすく、使い続ける家では真っ先に更新される部分である。文化庁の解説は、この建物が内外ともに当時の姿を保っていると評価している。
主屋との接続部にあたる渡廊下も見どころのひとつで、森家住宅湯殿が独立した小屋ではなく、接客の一連の流れに組み込まれた設備だったことがわかる。
見学方法
森家住宅湯殿は一般財団法人氷見古民家研究会が「住吉屋」として維持管理しており、定期の見学会で公開されている。開館日は毎月第2土曜日、8月と10月のみ第1土曜日、時間は午前10時から正午まで。それ以外の日は非公開で、団体見学や日程外の希望は同会への事前連絡が必要である。
見学料と撮影の可否は公式サイトに記載がなく、本記事の作成時点では確認できなかった。内部の見学範囲は当日の状況によって変わることがあるため、現地で係の方に確認してほしい。
所在地は西条市氷見丙658(上町)。JR予讃線の伊予氷見駅から徒歩約10分、せとうちバス「氷見」停留所からも徒歩約10分。車では松山自動車道いよ小松インターチェンジから国道11号を経由して約11分、いよ西条インターチェンジからは約24分で、駐車場がある。
Q&A
- 森家住宅湯殿はいつ建てられましたか?
- 天保12年(1841年)頃の建築です。主屋と同じ時期にあたり、令和5年(2023年)8月7日に登録有形文化財(建造物)として登録されました。
- 森家住宅湯殿の内部はどうなっていますか?
- 中廊下を挟み、街道側が木製便器を据えた厠、庭側が出格子窓のある湯殿で木製の湯船が置かれています。建築面積は24平方メートルです。
- 森家住宅湯殿はなぜ石垣の上に建っているのですか?
- 石垣で一段高い位置に据えられており、排水を処理しやすくすると同時に建物の格を高める効果があります。主屋の上段の間から渡廊下でつながります。
- 森家住宅湯殿は藩主が使ったのですか?
- 森家には西条藩主を迎えた記録があり、文久4年(1864年)の森家文書に御成の際の部屋の使い方が記されています。文化庁の解説は御成門の格式が湯殿まわりの格に対応すると述べています。
- 森家住宅湯殿は見学できますか?
- 毎月第2土曜日(8月と10月は第1土曜日)の午前10時から正午までの見学会で公開されています。それ以外の日は非公開です。
基本情報
| 名称 | 森家住宅湯殿(もりけじゅうたくゆどの) |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県西条市氷見字上町丙658-2 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 38-0176 |
| 指定年 | 令和5年(2023年)8月7日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積24平方メートル |
| 所有者 | 一般財団法人氷見古民家研究会 |
| 公開状況 | 毎月第2土曜日の午前10時から正午まで公開 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「森家住宅湯殿」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014691
- 文化庁 国指定文化財等データベース「森家住宅御成門及び塀」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014692
- 愛媛県教育委員会文化財保護課「森家住宅主屋」「旧村上家住宅主屋」など9件が登録有形文化財(建造物)に登録されます(文化審議会答申)
- https://www.pref.ehime.jp/page/3948.html
- 西条市教育委員会社会教育課「森家住宅主屋他4件が国有形文化財(建造物)に登録されました」
- https://www.city.saijo.ehime.jp/soshiki/syakaikyoiku/morikebunkazaitouroku.html
- 一般財団法人氷見古民家研究会「アクセス」
- https://iyo-himikominka.or.jp/accsess/
最終更新日: 2026.09.05