愛媛県の登録番号38-0001
宇和島市立歴史資料館(旧宇和島警察署)は、愛媛県宇和島市住吉町にある明治17年(1884年)建築の木造2階建洋風建築で、平成8年(1996年)12月20日に登録有形文化財となった。建築面積は約214平方メートル、屋根は瓦葺である。
文化庁の記録では、この建物の登録番号は38-0001。38は愛媛県を指す番号で、下4桁は県内での通し番号にあたる。登録回も第1回である。登録有形文化財の制度そのものが平成8年に動き出したばかりの時期で、宇和島のこの建物は、愛媛県から最初に名前が挙がった1棟だった。
適用された登録基準は「再現することが容易でないもの」だった。同じものをもう一度つくれない、という理由である。
警察署として建ち、町役場として働いた
この建物は明治17年(1884年)9月、宇和島市内の広小路に「宇和島警察署」として建てられた。工事を率いたのは棟梁の稲垣弥吉である。設計者としての建築家がいたわけではなく、在来の大工の頭領が、洋風の意匠を図面と実物から学び取って建てた。
その後の経歴が変わっている。昭和28年(1953年)2月、建物は解体されて南宇和郡西海町(現在の愛南町)へ移築され、同町の役場として使われた。役目が終わるのは平成2年(1990年)1月。庁舎の新築を機に取り壊しの話が出たとき、市民をはじめとする協力によって宇和島への「里帰り」が決まり、平成4年(1992年)3月、住吉町の樺崎砲台跡のそばに復元された。
建てられた場所、働いた場所、いま建っている場所が、すべて違う。宇和島市立歴史資料館(旧宇和島警察署)の履歴は、明治の洋風建築が生き延びるために通ってきた道筋そのものである。
棟梁が読み解いた洋風
外観は擬洋風建築に分類される。西洋建築の様式書を体系的に学んだのではなく、在来工法を土台に、見よう見まねで洋風の形をつくり出した建築群を指す呼び名だ。
宇和島市立歴史資料館(旧宇和島警察署)で目を引くのは、1階と2階を貫いて立ち上がる玄関ポーチと、その頂部に載る三角形のペディメントである。上下に開閉する窓、軒下に回された蛇腹の飾りも備わる。これらは洋風建築の語彙をひととおり押さえた構成で、真似の域を出ない当時の建物とは水準が違う。文化庁の解説も、当地方における先駆的な本格洋風建築として、棟梁の技術の高さを評価している。
見えない部分にも評価がある。平成4年の復元にあたって行われた調査では、小屋組の合掌に隅合掌や蕪束(かぶらづか)といった工法が確認された。屋根裏という、完成すれば誰の目にも触れなくなる場所に、水準の高い仕事が入っていた。
建物そのものが展示品
館内の常設展は、この建物を主題のひとつに据えている。1階の第1展示室とロビーでは、本館の歴史と建築的な特徴を、同時代の古写真や古地図とあわせて解説する。「大正の広重」と呼ばれた吉田初三郎が描いた昭和初期の宇和島鳥瞰図絵も、ここに並ぶ。
2階に上がると第2展示室が宇和島の先史時代から江戸時代までを扱い、伊吹町遺跡や拝鷹山貝塚、宇和島城などの出土資料が置かれる。第3展示室は明治に活躍した宇和島出身の人物にあてられ、大津事件の司法判断で知られる児島惟謙や、法学者の穂積陳重、「鉄道唱歌」の作詞で知られる大和田建樹らが並ぶ。宇和島出身の彫刻家・三好直の作品もここにある。
そして第4展示室が「擬洋風建築の粋」。この部屋では、建物の建築技法や細部意匠そのものを展示品と見立て、解説パネルが添えられている。壁に掛かった何かを見るのではなく、壁そのものを見る部屋である。窓の外には隣接する樺崎砲台跡がよく見える。安政2年(1855年)に宇和島湾の防備のため築かれた砲台の跡で、砲台と洋風の庁舎という、幕末から明治への二つの「西洋への応答」が、ひとつの視界に収まる。
宇和島出身の挿絵画家・高畠華宵に焦点をあてた「華宵の部屋」も、年1回のペースで開かれている。
見学方法
宇和島市立歴史資料館(旧宇和島警察署)の開館時間は午前9時から午後5時まで。入館は無料である。休館日は火曜日で、火曜が祝休日にあたる場合はその直後の平日が休みになる。年末年始は12月29日から1月3日まで閉まる。休館日は令和3年(2021年)4月に月曜から火曜へ変更されているので、古い案内を見ている場合は注意したい。
撮影については、建物外観は自由に撮れる。館内の撮影可否は公式サイトに明示がないため、受付で確認してほしい。
アクセスは、JR宇和島駅から宇和島市内バスの大浦・赤松行きで6分、住吉町のバス停で降りて徒歩2分。運賃は大人片道150円である。無料の駐車場があり、車の場合は松山方面からなら宇和島道路の朝日インターチェンジ、四万十方面からは国道56号を使う。
Q&A
- 宇和島市立歴史資料館の開館時間と入館料は?
- 午前9時から午後5時までで、入館は無料です。休館日は火曜日(火曜が祝休日の場合はその直後の平日)と、12月29日から1月3日までの年末年始です。休館日は2021年4月に月曜から火曜へ変更されました。
- 宇和島市立歴史資料館の建物はもともと何だったのですか。
- 明治17年(1884年)9月に宇和島市内の広小路に建てられた宇和島警察署です。昭和28年(1953年)に南宇和郡西海町(現在の愛南町)へ移築されて町役場となり、平成2年(1990年)までその役目を果たしました。平成4年(1992年)に宇和島へ戻され、住吉町に復元されています。
- 宇和島市立歴史資料館の指定区分と登録年は?
- 登録有形文化財(建造物)で、登録年月日は平成8年(1996年)12月20日、官報告示は同年12月26日です。登録番号は38-0001で、愛媛県で最初の登録にあたります。登録基準は「再現することが容易でないもの」が適用されました。
- 宇和島市立歴史資料館の建築上の見どころはどこですか。
- 1階と2階を貫いて立ち上がる玄関ポーチと、その頂部の三角形のペディメントです。上下窓や軒下の蛇腹飾りも備わります。2階の第4展示室「擬洋風建築の粋」では、建物の技法や細部意匠そのものを展示品として解説パネル付きで見ることができます。
- 宇和島市立歴史資料館へはどう行けばよいですか。
- JR宇和島駅から宇和島市内バスの大浦・赤松行きで6分、住吉町バス停で下車して徒歩2分です。運賃は大人片道150円。無料駐車場もあり、松山方面からは宇和島道路の朝日インターチェンジ、四万十方面からは国道56号経由で向かえます。
基本情報
| 名称 | 宇和島市立歴史資料館(旧宇和島警察署)/うわじましりつれきししりょうかん(きゅううわじまけいさつしょ) |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県宇和島市住吉町2-4-36 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成8年(1996年)12月20日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積約214平方メートル |
| 所有者 | 宇和島市 |
| 公開状況 | 午前9時から午後5時まで公開、入館無料。休館日は火曜日(祝休日の場合は直後の平日)と12月29日から1月3日 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):宇和島市立歴史資料館(旧宇和島警察署)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000104
- 文化遺産オンライン:宇和島市立歴史資料館(旧宇和島警察署)
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/112984
- 宇和島市:宇和島市立歴史資料館について
- https://www.city.uwajima.ehime.jp/site/siryoukan/rekishitop.html
- 宇和島市:宇和島市立歴史資料館 アクセス
- https://www.city.uwajima.ehime.jp/site/siryoukan/rekishikokotsu.html
最終更新日: 2026.09.04