家老屋敷の跡に建った商家

上甲家住宅は、愛媛県宇和島市吉田町東小路にある土蔵造の商家建築で、1911年ごろに建てられ、2002年に登録有形文化財となった。

東小路は旧吉田藩の重臣が屋敷を構えた通りである。上甲家は1901年にそのうちの一軒、家老屋敷を買い取り、およそ十年のちに内陸の立間から移り住んで、この敷地に現在の建物を建てた。

家業は清酒と醤油の醸造・販売だった。大正期には醤油が主体となり、建物は昭和30年代、すなわち1955年から始まる十年間まで店舗として使われている。資料館になったことは一度もない。上甲家住宅はいまも人が住む家であり、一部は事務所や店舗として動いている。使われている建物の当たり前の疲れ方をしているのは、そのためである。

登録有形文化財としての価値

上甲家住宅が2002年に登録有形文化財となった根拠は、登録基準のうち「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。建築としての傑出性を問う基準ではない点は押さえておきたい。ここで守られているのは一本の通りであり、この建物がそれを支えている度合いが評価されている。

台帳には1棟、土蔵造平屋建、瓦葺、建築面積174平方メートルと記される。年代については二つの資料が食い違う。国の台帳は大正初期、つまり1912年から1925年の間とし、宇和島市の解説は1911年の創建とする。

東小路に登録建造物は一つではない。同じ通りを少し行った旭醤油醸造場も、2002年の同じ日に登録されている。二件を並べて読むと、醸造を営む家が似た構えで建て継いだ通りの姿が見えてくる。上甲家住宅はそのうち町の中心に最も近く、宇和島市役所吉田支所のすぐ隣に建つ。

通りから見る

まず壁を見てほしい。上甲家住宅の正面は真壁で、柱を塗り込めずに面へ出し、その間を漆喰で埋めている。土蔵の壁のように全体を一枚の皮で覆ってはいない。その上、壁面の上部に格子形の窓が左右対称に並ぶ。商家の店構えで左右対称はふつう望めないもので、東小路のなかでこの家を他と分けているのは、まずこの点である。

屋根は切妻造、出入口を長手側に開く平入で、桟瓦葺が載る。技の要はその下にある。大規模な和小屋を架けることで、垂れを出さずに間口いっぱいを渡している。間口は6.5、奥行は7.5間あり、この通りとしては広い敷地である。

台帳は平屋建とするが、屋根裏には低いつし二階がある。上部の格子窓は、この階のために開いているものである。

内部は非公開だが、壁の向こうを知っていると正面の見え方が変わる。玄関を入ると創建時のままの土間が約20坪、およそ66平方メートル広がり、頭上にはつし二階の梁と床板が今も残る。土間の中ほどから中の間、仏間、座敷と部屋が一列に連なる。間仕切りの建具や付書院の明かり取り障子は、手をかけた仕事である。

見学の作法

上甲家住宅は日常的に使われている個人の住宅である。開館時間も入館料もなく、内部の見学もできない。見られるのは東小路から望む外観で、そもそも登録はその外観のためになされている。

宇和島市は、市内の文化財の多くが個人の所有であり私有地にあることを踏まえるよう求めている。所有者の許可が要る場合があること、団体で訪ねるなら事前に了承を得ること、写真撮影も所有者の許可を得ることが挙げられている。問い合わせは市の文化・スポーツ課文化財保護担当が受けている。よい角度を求めて敷地へ踏み込まず、道路から眺めてほしい。

行き方は難しくない。JR予讃線の伊予吉田駅から約1キロ、町の中心へ向かって徒歩15分ほどである。隣の市役所吉田支所を目印にすればよい。正面には午前中の光が当たるので、道路から写真を撮るつもりなら時間帯を選びたい。

Q&A

Q上甲家住宅の内部は見学できますか。
Aできない。個人の所有で、住居のほか事務所や店舗として日常的に使われており、内部は非公開である。外観は東小路の道路からいつでも見ることができ、料金もかからない。
Q上甲家住宅へはどう行けばよいですか。
AJR予讃線の伊予吉田駅から約1キロ、宇和島市吉田町の中心部へ向かって徒歩15分ほどである。宇和島市役所吉田支所の隣に建っているので、支所を目指すのがいちばんわかりやすい。
Q上甲家住宅はいつ建てられ、何に使われていたのですか。
A宇和島市は1911年の創建とし、国の台帳は大正初期、1912年から1925年の間としている。上甲家は清酒と醤油を醸造・販売し、のちに醤油が主体となった。建物は昭和30年代、1955年から始まる十年間まで店舗として使われた。
Q上甲家住宅はなぜ登録有形文化財なのですか。
A2002年に「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。台帳は1棟、土蔵造平屋建、瓦葺、建築面積174平方メートルと記し、東小路の街路景観を構成している点を評価している。
Q上甲家住宅の写真は撮ってもよいですか。
A宇和島市は、個人所有の文化財の撮影について所有者の許可を得るよう求めている。道路から正面を撮るのが通例だが、敷地には入らず、住んでいる方への配慮を忘れないでほしい。

基本情報

名称上甲家住宅
所在地愛媛県宇和島市吉田町東小路甲71-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2002年登録
員数1棟
寸法土蔵造平屋建、瓦葺、建築面積174平方メートル
所有者個人
公開状況道路からの外観のみ。使用中の個人住宅のため内部は非公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 上甲家住宅
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002698
宇和島市 国登録 上甲家住宅
https://www.city.uwajima.ehime.jp/site/sizen-bunka/13joukou.html
宇和島市 文化財を見学するにあたって
https://www.city.uwajima.ehime.jp/soshiki/33/bunka-visit.html
文化庁 国指定文化財等データベース 旭醤油醸造場
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002699

最終更新日: 2026.09.05