旧甲斐家住宅蔵座敷とは
旧甲斐家住宅蔵座敷は、福島県喜多方市字一丁目にある大正12年(1923年)完成の土蔵造2階建の座敷蔵で、平成13年(2001年)に登録有形文化財に登録された。
醸造家甲斐家の屋敷のいちばん奥、西寄りに建ち、建築面積は169平方メートル。外壁は黒い漆喰で塗り重ねられ、屋根は瓦葺である。1階に客を迎える座敷を設け、2階は家財を納める蔵とした。文化庁の登録名称は「蔵座敷」だが、喜多方市の資料では「座敷蔵」と書かれる。どちらも土蔵の中に上質な座敷を組み込んだ座敷蔵の形式を指している。
建てたのは四代目甲斐吉五郎で、主屋・店蔵・庭と同時に足かけ7年をかけて整えた。工事は蔵の外まわりを先に立ち上げ、主屋を建て替えたあと、最後に旧甲斐家住宅蔵座敷の内部を造作する順で進んだと伝わる。冠婚葬祭のほかは、四代目が賓客を招いて酒宴を張るための座敷だった。
登録の理由 ― 造形の規範となる座敷蔵
旧甲斐家住宅蔵座敷は「造形の規範となっているもの」という基準で登録された。文化庁の解説は、良質な材料を用いた2階建の土蔵造であること、1階に床・床脇を備えた21畳の上段ノ間と18畳の次ノ間を並べることを挙げ、この地域でも大規模かつ重厚な建物と評価している。
喜多方市が甲斐家の覚書をもとにまとめた記録では、座敷は上段の間21畳、下段の間18畳、畳廊下12畳の計51畳になる。上段・下段とも本床と脇床を構え、上段の間には書院を設ける。外まわりには幅4尺(約1.2メートル)、厚さ2寸の欅板を敷き詰めた切目縁が付き、大理石の浴室と手洗いも備えていた。
平成13年(2001年)4月24日の登録は、旧甲斐家住宅の10件のうちで最も早い。喜多方市で最初の登録有形文化財とする紹介もある。
見どころ ― 総檜の座敷と銘木の床柱
旧甲斐家住宅蔵座敷の造作は、節のない檜でそろえた「総檜造り」とされる。唐紙と障子の縁には紫檀を使っており、檜の敷居ではその重さを支えきれないため、敷居に樫を埋め込んで補ったという。仕上げに隠れる部分まで、材の硬さを計算して組み合わせている。
床柱は上段の間が鉄刀木(たがやさん)と四方柾の檜、下段の間が縞黒檀で、書院の窓には黒檀を用いる。壁は金雲模様の大唐紙で覆われ、壁土がどこにも見えない。畳表は上質の藺草だけで編まれ、昭和54年(1979年)の畳替えまで一度も張り替えずに使えたと伝わる。
外から見ると、黒漆喰の壁と瓦屋根のどっしりした量感が目に残る。座敷は主屋と連なって庭を囲む位置にあり、庭師松本亀吉の手がけた庭を座敷から眺める構成になっている。
旧甲斐家住宅蔵座敷の見学方法
旧甲斐家住宅蔵座敷は、屋敷全体の保存修理工事のため令和5年(2023年)4月から公開を休止している。2025年には店蔵・醤油蔵とともに構造補強の工事が行われた。敷地の奥にあるため、道路からはほとんど見えない。
内部に入れるのは、工事期間中に年1回程度開かれる特別公開の機会に限られる。次回は令和9年(2027年)3月の予定で、日時と申込方法は喜多方市が発表する。市のサイトでは修理前と工事中の建物内部を記録したVR動画が公開されており、51畳の座敷の奥行きを前もって確かめられる。屋敷への行き方と工事の予定は旧甲斐家住宅のページにまとめてある。
Q&A
- 旧甲斐家住宅蔵座敷はいつ建てられましたか?
- 大正6年(1917年)に着工し、大正12年(1923年)に完成したと伝わります。四代目甲斐吉五郎が主屋・店蔵・庭とあわせて、足かけ7年をかけて整えました。
- 旧甲斐家住宅蔵座敷の内部は見学できますか?
- 令和5年(2023年)4月から保存修理工事のため休館中で、通常の見学はできません。工事期間中は年1回程度の特別公開があり、次回は令和9年(2027年)3月の予定です。
- 旧甲斐家住宅蔵座敷の座敷は何畳ありますか?
- 上段の間21畳、下段の間18畳、畳廊下12畳の計51畳です。文化庁の解説では上段ノ間・次ノ間とも床と床脇を備えるとされています。
- 旧甲斐家住宅蔵座敷にはどんな木材が使われていますか?
- 節のない檜を基本に、唐紙・障子の縁に紫檀、床柱に鉄刀木と縞黒檀、書院の窓に黒檀、切目縁に欅を使います。敷居には重さを受けるため樫が埋め込まれています。
- 旧甲斐家住宅蔵座敷と「座敷蔵」「烏城」は同じものですか?
- 文化庁の登録名称が「蔵座敷」、喜多方市の資料での呼び名が「座敷蔵」で、同じ建物を指します。「烏城」は黒漆喰の外壁にちなむ屋敷全体の別名です。
基本情報
| 名称 | 旧甲斐家住宅蔵座敷 |
|---|---|
| 所在地 | 福島県喜多方市字一丁目4611-1他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成13年(2001年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造2階建、瓦葺、建築面積169㎡ |
| 所有者 | 喜多方市 |
| 公開状況 | 2023年から保存修理工事のため休館中(工事は2030年度まで予定)。内部は特別公開時のみ |
参考文献
- 旧甲斐家住宅蔵座敷(文化庁 国指定文化財等データベース)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002110
- 旧甲斐家住宅蔵座敷(文化遺産オンライン)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/186840
- 旧甲斐家蔵住宅とは(喜多方市)
- https://www.city.kitakata.fukushima.jp/site/kyukaike/57980.html
- 旧甲斐家蔵住宅の保存修理工事を行っています。(喜多方市)
- https://www.city.kitakata.fukushima.jp/site/kyukaike/57982.html
- 旧甲斐家蔵住宅のVR動画公開中!(喜多方市)
- https://www.city.kitakata.fukushima.jp/site/kyukaike/49341.html
最終更新日: 2026.10.01