焼杉とは

焼杉は、杉板の表面を火で焼いて炭化させた板材である。表面にできる炭の層が、雨や日射、虫や菌から板の内部を守るとされ、塗装をしなくても長く使えることから、西日本を中心に外壁材として用いられてきた。黒い炭の層を残したまま張るものと、表面の炭を落として木目を浮き立たせたものがある。

焼杉は、壁の中でも特に傷みやすい部分に使われることが多い。土蔵や町家では、白い漆喰の壁の下部、地面から跳ね返る雨を受ける腰の部分に焼杉の板を縦に張り、上部の漆喰を守る構成がよく見られる。白い壁と黒い腰板の対比は、西日本の蔵や町並みの特徴的な景観になっている。

腰に板を張る仕上げは下見板張とも共通するが、下見板は板を横に重ねて張る仕上げの名称で、焼杉は板の材料と処理の名称である。焼杉の板を下見板として横に張ることも、竪板として縦に張ることもある。

記録と実物で見分ける手がかり

記録では、板の張り方と合わせて「焼杉竪板張」のように書かれる。奈良県橿原市の瑞穂酢(大西家住宅)の建物群では、旧味噌蔵が壁を軒まで漆喰で塗り込めて腰を焼杉竪板張とし、中蔵も外壁を軒まで漆喰塗込、腰を焼杉竪板張とする。旧仕込み場や旧充填場も同じ構成で、一つの醸造所の建物群が同じ仕上げで統一されていることが分かる。

現地では、腰板の表面の色と質感を見る。黒く、細かなひび割れ状の炭化層が残っていれば焼杉である。長い年月を経ると炭の層が薄れて灰色がかり、ふつうの古い板と見分けにくくなることもある。修理で板を取り替えた例も多く、板が新しくても焼杉の仕上げが守られていれば、当初の意匠が継承されていると考えられる。

参考文献

瑞穂酢(大西家住宅)旧味噌蔵|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014511
瑞穂酢(大西家住宅)中蔵|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014513
瑞穂酢(大西家住宅)旧仕込み場|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014518

最終更新: 2026.09.26