函館YWCA会館:昭和初期の郊外住宅建築が伝える函館の暮らしと文化

北海道函館市松陰町のみどりまち通りに静かにたたずむ函館YWCA会館は、昭和初期の洗練された郊外住宅の趣を今に伝える貴重な建造物です。大正15年(1926年)頃に専用住宅として建てられたこの美しい木造建築は、1950年(昭和25年)から函館YWCAの活動拠点として使用されてきました。2016年(平成28年)11月には国の登録有形文化財に認定され、函館の歴史的景観を構成する重要な建物として、地域内外から注目を集めています。

歴史的背景:「文化村」から地域コミュニティの拠点へ

20世紀初頭の函館は、港町から郊外へと宅地開発が進んでいました。その中で、金森洋物店で知られる豪商・三代目渡辺熊四郎が松陰町みどりまち通り沿いに開発・分譲したのが、「文化村」と呼ばれる一帯です。1区画300坪(約990平方メートル)という広々とした敷地に、前庭と裏庭を設け、屋根は緑色に塗り、洋風応接間を備えるという条件を付けて、統一感のある上質な街並みが形成されました。

現在の函館YWCA会館となっている建物は、この文化村の一角に大正15年(1926年)頃、専用住宅として建設されたものです。1949年(昭和24年)、日本YWCAの働きかけと遺愛学院の協力により函館YWCAが発足。翌1950年(昭和25年)にこの建物を取得し、以来70年以上にわたり、英会話教室や平和活動、人権・環境活動、そして世代を超えた学びの場として地域に根ざした活動を続けています。

文化財指定の理由:函館の歴史的景観を守る

函館YWCA会館は、2016年(平成28年)11月29日に国の登録有形文化財(建造物)に認定されました。函館市内では五島軒本店旧館、函館中華会館、高龍寺などに続く18番目の登録有形文化財となりました。登録有形文化財の認定には、建設後50年以上が経過した建造物であることに加え、①国土の歴史的景観に寄与していること、②造形の規範となっていること、③再現することが容易でないこと、のいずれかの基準を満たす必要があります。

本建物は、文化村の特徴を残して現存する希少な建物として、昭和前期の質の高い郊外住宅の趣を示していることが高く評価されました。国の登録に先立ち、1981年(昭和56年)には「函館の歴史風土を守る会」によるコンクールで「名建築番付」に選ばれ、翌年には「歴風保存文化賞」を受賞しています。

建築の見どころと意匠の特徴

函館YWCA会館は、木造一部二階建て、鋼板葺の建物で、建築面積は138平方メートルです。最も目を引くのは非対称な外観で、通りを歩く人々に動きのある印象を与えます。

外壁は下見板張りで、淡いピンク色に塗られています。緑色の切妻屋根にはハーフティンバー(柱型や格子状)の装飾が施されており、この色彩の対比が建物に優雅な華やかさを添えています。函館に多く見られる洋風建築の側面と、昭和前期の郊外住宅としての品格を兼ね備えた外観です。

正面玄関は建物の最大の見どころといえます。大きく前方に迫り出したポーチの屋根は、装飾を抑えた荘重なドリス式の角柱によって支えられています。ポーチの屋根は、日本建築の唐破風を洋風にアレンジした緩やかな照り起りの曲線を描いており、和洋折衷の意匠が見事に融合しています。両開きの玄関扉や、台形状のアルコーブ(開口部)に沿ったソファが残る応接間など、建設当時の姿をとどめている部分も多く見られます。

生きた文化遺産としての函館YWCA

函館YWCA会館の魅力は、単なる歴史的建造物としてだけではなく、今も活き活きとした地域活動の場として機能していることにあります。70年以上にわたり、英会話教室、平和・人権・環境に関する活動、多世代交流の場として、幅広い活動が展開されてきました。

2017年からは「会館みらいプロジェクト」が発足し、社会貢献の場としての会館の価値を再認識するとともに、より一層の活用を目指した取り組みが進められました。この成果として、2019年に大規模改修が実施されました。約900万円の現金寄付に加え、建材や家具の現物寄付、市内の廃校からの備品譲渡、壁塗りやタイル張りを行うDIYサポーターの協力など、函館市内外から多大な支援が寄せられました。館内にはカフェ&ショップ「リ・ボーン」も設けられ、地域に開かれた場としての魅力がさらに高まっています。

見学・来館情報

函館YWCA会館は、火曜日から土曜日の10:00〜16:00に開館しています。日曜日・月曜日、祝日、夏期(8月)、年末年始は休館です。イベント等により開館日時が変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。

館内のカフェ&ショップ「リ・ボーン」では、歴史ある空間でくつろぎながら軽食やお飲み物を楽しむことができます。また、会議や少人数の集まりに利用できる貸室も用意されています。

アクセスは、函館市電「杉並町」電停から徒歩約5分です。駐車場は15台分ありますが、台数に限りがあるため、混雑時は公共交通機関のご利用をおすすめします。

周辺の見どころ

函館YWCA会館の周辺には、函館の歴史と文化を感じられるスポットが数多くあります。

  • 遺愛学院(旧遺愛女学校):杉並町電停近くに位置する、関東以北で最初の女学校。サーモンピンクの木造本館と白亜の旧宣教師館(ホワイトハウス)は、いずれも国の重要文化財に指定されています。春にはクロッカスの花が美しく咲き誇ります。
  • 五稜郭:幕末の歴史を今に伝える星形の城郭で、桜の名所としても有名です。五稜郭タワーからの眺望は圧巻です。市電で気軽にアクセスできます。
  • 函館西部地区:旧函館区公会堂、函館ハリストス正教会、金森赤レンガ倉庫群など、明治・大正期の洋風建築が立ち並ぶ歴史的なエリアです。坂道からの港の眺めも見どころのひとつです。
  • 函館山:「世界三大夜景」にも数えられる函館山からの夜景は必見です。ロープウェイで山頂の展望台へ登ることができます。

Q&A

Q函館YWCA会館の内部は見学できますか?
Aはい、火曜日から土曜日の10:00〜16:00に開館しており、館内の見学やカフェ&ショップ「リ・ボーン」のご利用が可能です。日曜日・月曜日、祝日、夏期(8月)、年末年始は休館です。イベント等により開館日時が変更される場合がありますので、事前にご確認ください。
Qどのような文化財指定を受けていますか?
A函館YWCA会館は、2016年(平成28年)11月29日に国の「登録有形文化財(建造物)」に認定されました。函館市内では18番目の登録有形文化財です。建設後50年以上が経過し、国土の歴史的景観に寄与する建造物として評価されています。
Q「文化村」とはどのような場所ですか?
A「文化村」とは、20世紀初頭に金森洋物店で知られる豪商・三代目渡辺熊四郎が松陰町みどりまち通り沿いに開発した高級住宅地の通称です。1区画300坪の広い敷地に、緑色の屋根や洋風応接間を備えた住宅が建ち並びました。函館YWCA会館は、この文化村の特徴を現在に伝える貴重な建物のひとつです。
Q公共交通機関でのアクセス方法を教えてください。
A函館市電「杉並町」電停で下車し、徒歩約5分です。敷地内に15台分の駐車場がありますが、台数に限りがあるため、公共交通機関のご利用やお乗り合わせをおすすめしています。
Q入館料はかかりますか?
A外観および共用部分の見学は無料です。館内のカフェ&ショップ「リ・ボーン」は営業時間内にご利用いただけます。貸室のご利用は有料です。詳細は函館YWCAまで直接お問い合わせください。

基本情報

名称 函館YWCA会館
文化財指定 国登録有形文化財(建造物)/2016年(平成28年)11月29日登録
建設年代 大正15年(1926年)頃/1955年改修/2019年大規模改修
構造 木造平屋一部2階建、鋼板葺、建築面積138㎡
所在地 〒040-0003 北海道函館市松陰町6-2
所有者 一般財団法人函館YWCA
開館時間 火曜日〜土曜日 10:00〜16:00(日曜・月曜・祝日・夏期・年末年始休館)
アクセス 函館市電「杉並町」電停より徒歩約5分/駐車場15台
連絡先 TEL: 0138-51-5262 / FAX: 0138-54-9548 / E-mail: hakodate@ywca.or.jp
公式サイト https://www.hakodate.ywca.or.jp/

参考文献

函館YWCA会館の歴史 〜登録文化財としての価値 | 一般財団法人 函館YWCA
https://www.hakodate.ywca.or.jp/bunkazai/readme/
函館YWCA会館 — 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/284296
国登録文化財一覧 | 函館市
https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2016072500049/
函館YWCA会館と旧藤澤家住宅 国の登録有形文化財に — eHAKO
https://www.ehako.com/news/news2016a/10423_imode_msg.shtml
函館YWCA会館 — 全国近代化遺産活用連絡協議会
https://www.zenkin.jp/koukai/4565

最終更新日: 2026.04.03