新宿通りに建つ土蔵造の店と住まい

安達家住宅見世蔵及び主屋は、茨城県桜川市真壁町の新宿通り北側に建つ江戸時代末期の商家建築で、平成29年(2017年)に登録有形文化財に登録された。文化庁の国指定文化財等データベースは、建設年代を1830年から1868年の間としている。

通りに面する棟は見世蔵で、本来は火に備えた蔵に用いる厚い塗り壁の構法を、そのまま店舗に使っている。桁行は5、長手側から出入りする平入。その奥に主屋が直角に取り付く。見世蔵も主屋も2階建で、いずれも土蔵造、建築面積は合わせて135平方メートルである。

桜川市によれば、真壁の商家がこの造りを選ぶようになった転機は1837年の大火だった。それまで茅葺や板葺が主体だった町並みが焼け、建て直しにあたって商家は見世蔵や土蔵を構えるようになる。

内部は、東側が入口から奥へ通る土間、西側に帳場と居間などが並ぶ。店と住まいが背中合わせに一棟へ収まる形で、在郷町の商家の暮らし方が平面にそのまま出ている。

「造形の規範」として登録された

登録有形文化財の登録基準は3種類あり、安達家住宅見世蔵及び主屋に適用されたのは「造形の規範となっているもの」だった。同じ敷地に建つ座敷と薬医門は、いずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で登録されている。町並みの一部としてではなく、建物の造りそのものが評価された点が、この一棟の位置づけを決めている。

登録番号は第08-0300号。登録年月日は2017年10月27日で、第88回の登録にあたる。員数は1棟、所有者は個人である。

真壁町真壁を中心とする一帯には約100棟の登録有形文化財があり、うち約17.6ヘクタールが2010年に重要伝統的建造物群保存地区に選定された。関東地方でこれだけまとまって商家の建物が残る町は多くない。安達家住宅見世蔵及び主屋の登録は、その選定より後のことになる。

2011年の東日本大震災で、真壁は全国の保存地区のなかで最も被害の大きい地区となった。桜川市の説明では、保存地区の伝統的建造物の90パーセント以上が被災している。この建物自体は、それに先立つ1995年に改修を受けていた。

通りに立って見えるもの

新宿通りの反対側から安達家住宅見世蔵及び主屋を見上げると、まず2階の階高の低さが目につく。人が起居する階というより荷を置く階に近く、明治以降に真壁で建てられた背の高い町家と並べれば違いははっきりする。

軒は出桁造で、桁を壁面より前へ持ち出して軒を深く出す。土蔵造としての徹底ぶりが出ているのは、その下の軒蛇腹まで塗り込めてしまっているところで、外気に触れる木部がほとんど残らない。

2階の窓は観音扉。厚い扉を左右に開く形式で、火が迫れば閉じて隙間を漆喰で目張りした。開いた状態なら扉の厚みが見え、防火の実質がどこにあるのかが分かる。

見世蔵と主屋が取り合う部分の屋根を目で追ってほしい。通りから直角の平面を読み取れる手がかりは、この棟の重なり方だけである。

見学方法とアクセス

安達家住宅見世蔵及び主屋は個人の住まいで、内部は公開されていない。見学は新宿通りからの外観に限られる。敷地内に立ち入ったり、窓や門口から中をのぞいたりすることは避けてほしい。

撮影は、道路から外観を撮る範囲であれば妨げられていない。居住者や玄関の内側が写り込まないよう配慮したい。

公共交通なら、JR水戸線の岩瀬駅から桜川市バス「ヤマザクラGO」に乗り、旧町なかの「下宿」または「上宿」で降りる。つくばエクスプレスのつくば駅からは、つくば市バス北部シャトルで筑波山口へ出て「ヤマザクラGO」に乗り換える経路があり、全体でおよそ90分をみておきたい。車では常磐自動車道の土浦北インターチェンジから40分ほどである。

毎年2月上旬から3月3日にかけて「真壁のひなまつり」が開かれ、町なかの商家や民家が雛人形を店先や座敷に飾る。参加するかどうかは各戸の判断であり、安達家住宅見世蔵及び主屋が毎年公開されるとは限らない。訪ねる前に桜川市商工観光課(0296-55-1159)へ確認するのが確実である。

Q&A

Q安達家住宅見世蔵及び主屋の内部は見学できますか?
Aできません。現在も個人の住まいであり、内部は非公開です。見学は新宿通りからの外観に限られますが、通りからでも全体の姿は十分に見えます。
Q安達家住宅見世蔵及び主屋は写真撮影できますか?
A道路から外観を撮る分には問題ありません。敷地内に入っての撮影、玄関の内側の撮影、居住者を写す撮影は避けてください。
Q安達家住宅見世蔵及び主屋へは電車とバスでどう行きますか?
AJR水戸線岩瀬駅から桜川市バス「ヤマザクラGO」に乗り、「下宿」か「上宿」で下車します。つくば駅からの場合は北部シャトルで筑波山口へ出て乗り換え、全体でおよそ90分です。
Q安達家住宅見世蔵及び主屋はいつ建てられ、いつ登録されましたか?
A文化庁のデータベースは建設年代を1830年から1868年の間、すなわち江戸時代末期としています。登録は2017年10月27日、登録番号は第08-0300号です。
Q安達家住宅見世蔵及び主屋の「見世蔵」とはどんな建物ですか?
A蔵と同じ厚い塗り壁で建てた店舗のことです。開口部には重い扉が付きます。真壁では1837年の大火のあとに広まった形式で、この建物は早い時期の例にあたります。

基本情報

名称安達家住宅見世蔵及び主屋
所在地茨城県桜川市真壁町真壁字新宿町424-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成29年(2017年)登録
員数1棟
寸法土蔵造2階建、瓦葺、建築面積135平方メートル
所有者個人
公開状況内部非公開。外観は新宿通りから見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「安達家住宅見世蔵及び主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011860
茨城県教育委員会 いばらきの文化財「安達家住宅見世蔵及び主屋ほか2棟」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-5932/
桜川市「桜川市真壁伝統的建造物群保存地区」
https://www.city.sakuragawa.lg.jp/education/bunkazai/city_bunkazai/kuni_bunkazai/page003423.html
桜川市「真壁の町並み」
https://www.city.sakuragawa.lg.jp/tourism_guide/learn/page000455.html

最終更新日: 2026.09.05