1875年に建った商家の店

関根家住宅店舗は、茨城県桜川市真壁町真壁390に建つ木造2階建の商家建築で、1875年(明治8年)の建設と伝えられ、2002年(平成14年)に国の登録有形文化財となった。

建つのは真壁の市街地の北寄り、筑波山地の西麓にひらけた町場である。町割そのものは1615年(慶長20年)までに成立していたと考えられており、関根家住宅店舗はその古い区画の上に載っている。屋根は切妻造、葺材は桟瓦葺。建物は長い軒側を通りへ向ける平入の構えをとり、通り側にはさらに半間(約0.9メートル)幅の下屋庇が張り出す。

この庇は飾りではない。道と店のあいだに屋根のかかった帯をつくり、商品を並べ、客が雨をよけながら店先に立てるようにするための空間である。

庇の奥、1階は二つの領域に分かれる。土を突き固めたL字型の土間が平面を折れながら通り、その脇に帳場が座る。帳場は帳簿を置き、取引をおこなった板張りの高い床のことをいう。文化庁の解説は関根家住宅店舗のこの組み合わせを指して、開放的な下屋部分と土間が相まって商家らしい構えをよく残していると記す。

登録がすくい上げたもの

関根家住宅店舗の登録は2002年6月25日、告示は同年7月16日である。登録番号は08-0060、第33回の登録にあたる。員数は1棟。適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」である。

真壁の名を知らしめてきたのは蔵造の店だった。1837年(天保8年)の大火のあと、この町の商家は萱葺・板葺をやめて土蔵造へ移り、厚い塗壁の見世蔵が並ぶ景観ができあがる。写真に写るのはたいていそちらである。関根家住宅店舗はその線の向こう側にある。耐火の蔵ではなく、ふつうの木造町家として組まれ、仕上げられた建物で、桜川市の町並み案内も明治初期の典型的な関東の町屋と説明している。

そのふつうさが意味を持つ。重厚な蔵だけを拾う登録であれば、真壁の例外的な建物ばかりが記録され、多数派が抜け落ちていた。町では1999年(平成11年)に始まった集中的な取り組みで約100棟が登録され、その幅の広さが、周囲の街路が2010年(平成22年)に重要伝統的建造物群保存地区へ選定された理由の一部にもなっている。

制度の呼び分けは正確にしておきたい。この建物は登録されたのであって、指定されたのではない。登録は、日常の使用が続き、個人の手に残る建物を対象とする軽い仕組みである。

通りから正面を読む

関根家住宅店舗の建築面積は46平方メートルにすぎず、道の向かい側の一点から正面の全体が視野に入る。まず見るのは2階の高さである。低く、庇より上の壁面は浅い。1875年の店とはそういう姿をしている。

同じ通りの先にある、背の高い2階建の町家と比べてみたい。あれらが普及するのは筑波鉄道が真壁に達した大正期以降で、上階の下に深い出し桁を見せる。関根家住宅店舗は同じ発想の、より早く、より静かな版である。

次に足元を見る。下屋を支える柱は道の縁に立ち、その柱の線が公と私の境になっている。この通りの建物は全体がその線に合わせて並ぶ。庇を失った隣家があれば、正面の座り方の違いはすぐわかる。

ここに登録された建物はどれも2011年(平成23年)を身に受けている。東日本大震災で真壁は全国の伝統的建造物群保存地区のなかで最も被害の大きい地区となり、市の記録では伝統的建造物の90パーセント以上が損傷した。復旧はその後も長く続いている。街路で目にする新しい漆喰、葺き直された棟瓦、据え直された礎石は装飾ではなく、その作業の跡である。

関根家住宅店舗には対になる建物がある。関根家住宅主屋は別個に登録された1棟で、店舗の背面に接続し、片側へ角屋状に張り出す。道からは店舗の棟の上にその低い屋根がのぞく。両者の登録日は同じである。

関根家住宅店舗の見学

関根家住宅店舗は個人の建物で、内部は公開されていない。桜川市が配布する登録文化財の地図も、建物は外から見て楽しみ、敷地に立ち入らないよう求めている。入場料はなく、受付もない。見学は公道の上で完結する。

年に一度、通りの性格が変わる時期がある。真壁のひなまつりは毎年2月4日から3月3日まで開かれ、100軒を超える民家や商店が雛人形を飾る。見学は無料である。ただしどの建物が参加するかは年によって変わるため、特定の物件が開いていると想定せず、期間中に町なかで無料配布される会場地図を手に入れてから歩きたい。

関根家住宅店舗の外観を公道から撮影することに制限はない。ただし建物は現に使われている私有物なので、敷地の内側や室内へカメラを向けること、居住者を撮ることは避ける。

真壁に鉄道駅はなく、最後の区間はバスになる。JR水戸線の岩瀬駅から桜川市バス「ヤマザクラGO」で約20分、上宿または下宿で降りればいずれも市街地北部まで徒歩圏である。東京方面からはつくばエクスプレスでつくば駅へ出て、つくば市の北部シャトルで筑波山口まで約50分、そこから同じ市バスに乗り継いでさらに20分。車の場合は県道41号で入り、常磐自動車道の土浦北インターチェンジ、または北関東自動車道の桜川筑西インターチェンジからのアクセスとなる。町なかの有料駐車場では高上町駐車場が最も近い。

廃止された筑波鉄道の線路跡は現在サイクリングロード(りんりんロード)として整備され、市街地の東縁を南北に走る。市の町並み地図にも記載がある。貸自転車は岩瀬駅前と筑波山口にある。

Q&A

Q関根家住宅店舗の内部は見学できますか。
Aできません。関根家住宅店舗は個人所有の建物で、内部は公開されていません。桜川市も、登録文化財は公道から外観を見るにとどめ、敷地には立ち入らないよう案内しています。入場の受付がないため、拝観料もありません。
Q関根家住宅店舗はいつ建てられ、どのような文化財ですか。
A文化庁のデータベースは1875年(明治8年)の建設と伝えると記録しています。2002年6月25日に登録有形文化財として登録され、登録番号は08-0060です。これは「登録」であって「指定」ではありません。両者は別々に運用される制度で、登録は軽いほうにあたります。
Q関根家住宅店舗へはどう行けばよいですか。
AJR水戸線の岩瀬駅から桜川市バス「ヤマザクラGO」で約20分、上宿または下宿で下車します。東京方面からはつくばエクスプレスのつくば駅から北部シャトルで筑波山口へ約50分、市バスに乗り継いでさらに20分という経路もあります。真壁に鉄道駅はありません。ひなまつり期間の交通規制日には最寄りのバス停が変わり、桜川市役所真壁庁舎前での乗降となります。
Q関根家住宅店舗を撮影してもよいですか。
A公道からの外観撮影に制限はありません。正面はもともと通りから見られることを前提につくられています。現に使われている私有の建物ですので、敷地内や室内へカメラを向けること、居住者を撮ること、角度を求めて敷地に入ることは避けてください。
Q関根家住宅店舗と関根家住宅主屋はどういう関係ですか。
A同じ敷地に建つ2棟で、それぞれが2002年6月25日に個別に登録されています。店舗が通りに面し、主屋はその背面に接続して片側へ角屋状に張り出します。文化庁の解説は、古くは別棟の住居があったことから、主屋は店舗とつながる当初の客座敷と考えられるとしています。

基本情報

名称関根家住宅店舗(せきねけじゅうたくてんぽ)
所在地茨城県桜川市真壁町真壁390
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2002年(平成14年)6月25日登録、7月16日告示
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積46平方メートル
所有者個人。文化庁データベースに所有者名の記載なし
公開状況公道からの外観見学のみ。内部は非公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「関根家住宅店舗」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002746
桜川市「桜川市真壁伝統的建造物群保存地区」
https://www.city.sakuragawa.lg.jp/education/bunkazai/city_bunkazai/kuni_bunkazai/page003423.html
桜川市「登録文化財マップ/真壁を歩こう」(PDF)
https://www.city.sakuragawa.lg.jp/data/doc/1487569963_doc_23_1.pdf
茨城県教育委員会「桜川市真壁伝統的建造物群保存地区」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-8557/
桜川市「真壁の町並み」
https://www.city.sakuragawa.lg.jp/tourism_guide/learn/page000455.html

最終更新日: 2026.09.07