店の裏に建つ接客の棟
関根家住宅主屋は、茨城県桜川市真壁町真壁390にある木造平屋建の建物で、1875年(明治8年)に同家の店舗の背後に建てられ、2002年(平成14年)に国の登録有形文化財となった。
店舗の背面に接続し、片側へ角屋状に張り出すため、2棟は平面でL字を描く。屋根は桟瓦葺、この町の古い建物の多くと同じ葺きかたである。関根家住宅主屋は全体が1階建てで、上に階を重ねない。
内部の構成は、住まいというより接客の場に近い。6畳間が2室と8畳間、それに付随する空間からなる。建築面積は63平方メートルで、前に建つ2階建の店舗より床面積は広い。
部屋は外へ開く。文化庁の解説は縁の扱いを取り上げ、開放的だと述べている。縁が壁で囲い込まれれば奥の部屋は内部になるが、ここのように開いていれば、庭の側が部屋の一部になる。
客座敷がなぜ「主屋」なのか
登録簿に載る名称は、少し考える価値のある問題を含んでいる。ふつうの商家であれば主屋は家族が暮らす棟を指す。ところが文化庁は関根家住宅主屋をそう読んでいない。解説は、古くは別棟の住居があったと記したうえで、この棟は店舗とつながる当初の客座敷と考えられるとしている。
この読みは建物の性格を変える。商家の店には、帳場ごしに済ませるわけにいかない相手を通す場所が要る。仕入先、金主、陣屋の役人といった人びとである。店の裏の座敷はその役目を負っていた。のちに別棟の住居が失われると、この棟が主屋の役割を引き受け、名も引き継いだ。
登録簿は建物を現状の姿で記録する。名称と来歴がわずかにずれているのはそのためで、正面を通り過ぎるだけの見学では手に入らない種類の情報である。
関根家住宅主屋の登録は2002年6月25日、告示は同年7月16日、員数は1棟、登録番号は08-0061、第33回の登録にあたる。適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」である。これは登録であって指定ではない。使われ続け、個人の手に残る建物を対象とする、より軽い制度である。
明治の座敷まわりの造作
関根家住宅主屋について登録が評価しているのは、造作の質である。文化庁の解説は、丁寧なつくりの床と、書院造の伝統がその脇に据えてきた付書院を挙げ、そこに近代和風の造形が現れていると読む。古い格式ある部屋の型を、明治の大工が新しい精度で仕上げ直した仕事である。
この年代は費用の説明にもなる。明治期の真壁は良い時期に入っていた。真壁銀行などの資本が整い、製糸業が興り、陣屋の前に延びる御陣屋前通りには呉服太物商が軒を連ねて、見世蔵や土蔵の建設が相次ぐ。藩の規制が外れたことで、商家は一代前なら許されなかった薬医門を次々に構えた。関根家住宅主屋が建つ1875年はその流れの初期にあたり、丁寧に刻まれた床は、次の十年が前の十年より良くなると見込む家が出す種類の出費である。
部屋の広さも意味を持つ。6畳2室に8畳という組み合わせは、家族の生活の間取りではなく接客の一式である。客に序列をつけて座らせるだけの広さがあり、8畳の側が床を備えて上座になる。大きな台所土間も作業床もないのは、その機能が前の店舗と、失われた住居の側にあったからである。
関根家住宅主屋の見学
はじめに前提を書いておく。関根家住宅主屋は店舗の背後に建つ個人の建物で、公開されていない。桜川市が配る登録文化財の地図も、外から見るにとどめ、敷地には入らないよう求めている。通りから見えるのはおもに店舗で、その棟の向こうに主屋の低い桟瓦の屋根がのぞき、張り出した角屋の側面に光が当たる。入口も料金も受付もない。
暦のうえでの例外は真壁のひなまつりである。毎年2月4日から3月3日まで開かれ、町の100軒を超える民家や商店が雛人形を飾る。見学は無料。参加は家ごとの判断で年によって変わるため、特定の1軒をあてにせず、期間中に町なかで無料配布される会場地図を使って歩くのがよい。
関根家住宅主屋を公道から撮影することに制限はないが、前に店舗が建つぶん角度は限られる。敷地の内側や室内へ向けての撮影、居住者の撮影は避けてほしい。
真壁に鉄道駅はない。JR水戸線の岩瀬駅まで来て、桜川市バス「ヤマザクラGO」で約20分、上宿または下宿で降りる。東京方面からはつくばエクスプレスでつくば駅へ、北部シャトルで筑波山口まで約50分、市バスで最後の20分という経路になる。車なら県道41号で入り、常磐自動車道の土浦北インターチェンジ、または北関東自動車道の桜川筑西インターチェンジから向かう。有料駐車場は高上町駐車場が使える。
歩くときに頭に置いておきたいことがひとつ。この地区は2011年(平成23年)の東日本大震災で、全国の伝統的建造物群保存地区のなかで最も大きな被害を受け、伝統的建造物の90パーセント以上が損傷した。復旧はその後も長く続いている。前年の2010年(平成22年)に重要伝統的建造物群保存地区へ選定されたばかりだった。足場や仕上げ途中の壁は、この町を訪ねるという経験の一部である。
Q&A
- 関根家住宅主屋の内部を見学できますか。
- できません。関根家住宅主屋は個人所有で、内部は非公開です。桜川市も、登録文化財は公道から眺めるにとどめ、敷地には立ち入らないよう案内しています。受付も拝観料もありません。
- 客座敷だったのに、なぜ関根家住宅主屋という名称なのですか。
- 文化庁のデータベースは、古くは別棟の住居があったと記し、この棟を店舗とつながる当初の客座敷と考えられるとしています。のちに別棟の住居が失われ、この建物が主屋の役割と名称を引き継いだとみられます。登録簿は建物を現状の姿で記録するため、名称は当初の機能ではなく現在の位置づけを反映しています。
- 関根家住宅主屋は通りからどこまで見えますか。
- あまり見えません。店舗の背後に建つため、道から確認できるのは店舗の棟の向こうに立ち上がる低い桟瓦屋根と、張り出した角屋の側面くらいです。登録が評価している床、付書院、開放的な縁といった内部の造作は、外からは見えません。
- 関根家住宅主屋はいつ、どの番号で登録されましたか。
- 2002年6月25日に登録有形文化財として登録され、告示は同年7月16日、登録番号は08-0061、第33回の登録です。建物自体は1875年(明治8年)の建設と伝えられます。これは「指定」ではなく「登録」です。両者は別々の制度で、登録は軽いほうにあたります。
- 関根家住宅主屋へはどう行きますか。
- JR水戸線の岩瀬駅から桜川市バス「ヤマザクラGO」で約20分、上宿または下宿で下車します。東京方面からはつくばエクスプレスのつくば駅から北部シャトルで筑波山口へ約50分、市バスでさらに20分という行き方もあります。真壁に鉄道駅はありません。ひなまつりの交通規制日は近くのバス停が使えなくなり、桜川市役所真壁庁舎前での乗降になります。
基本情報
| 名称 | 関根家住宅主屋(せきねけじゅうたくしゅおく) |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県桜川市真壁町真壁390 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2002年(平成14年)6月25日登録、7月16日告示 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積63平方メートル |
| 所有者 | 個人。文化庁データベースに所有者名の記載なし |
| 公開状況 | 非公開。公道から外観の一部が見えるのみ |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「関根家住宅主屋」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002747
- 桜川市「桜川市真壁伝統的建造物群保存地区」
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/education/bunkazai/city_bunkazai/kuni_bunkazai/page003423.html
- 桜川市「登録文化財マップ/真壁を歩こう」(PDF)
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/data/doc/1487569963_doc_23_1.pdf
- 茨城県教育委員会「桜川市真壁伝統的建造物群保存地区」
- https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-8557/
- 桜川市「真壁の町並み」
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/tourism_guide/learn/page000455.html
最終更新日: 2026.09.07