廊下の突き当たりに置かれた棟

亀屋商事(旧飯島家住宅)本館旧食堂及び旧浴室は、茨城県古河市雷電町1-78にある昭和10年(1935年)頃の木造平屋建の棟で、平成16年(2004年)に登録有形文化財に登録された。銅板葺の屋根の下に2室を収め、建築面積は合わせて55平方メートルである。

この棟は、主屋から北へ延びる廊下の突き当たりをふさぐ位置にある。東側が旧食堂で、桁行3間半、梁間3間。棟を南北に通し、屋根は一方の端だけを寄棟とする片寄棟造とする。西側が旧浴室で、桁行3間、梁間2間。棟は東西に通り、屋根は寄棟造である。2室、2つの棟方向、2つの屋根形式が、隅で継がれている。

外装はいずれも下見板張。ここが効いてくる。同じ敷地の表に建つ本館はタイルと大理石で仕上げられているから、通りから裏へ回るあいだに、外壁の表情は石造を思わせるものから塗装した板へ移り変わる。

食堂と浴室の棟が登録された理由

登録番号は第08-0126号、登録日は2004年6月9日。適用基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、主屋、土蔵、県道向かいの煉瓦倉庫と同じ基準、同じ日付である。

この棟が群に加えているのは、家族が実際にどう暮らしていたかの手がかりである。食堂と浴室を主屋から離し、廊下の先にまとめて置くという判断には結果がともなう。食事と入浴は独立した一角として扱われ、通り抜ける場所ではなく、そこへ向かって歩く場所になった。文化庁の記録に残る内部の仕上げも、儀礼的というより日常の生活に属するものである。

保存の観点からも指摘しておきたいことがある。水まわりは住宅のなかで最も早く近代化される部分で、浴室にいたっては長い使用のあいだに何度も更新されるのが普通である。亀屋商事(旧飯島家住宅)本館旧食堂及び旧浴室は、内部の仕上げによって国の記録に記述できるだけの当初の性格を残した。この種の棟としては、めずらしい残り方といってよい。

知っておきたい2つの内部の細部

ひとつはガラスである。文化庁のデータベースは、旧食堂の窓にステンドグラスがあることを記録している。昭和10年頃の地方の住宅で、これは考えたうえでの出費だった。どの部屋に色のついた光を入れたかったかが分かる。玄関でも客間でもなく、食事をする部屋である。

もうひとつは天井。旧浴室には竿縁天井が残る。細い竿縁を見せて板を支える天井だが、文化庁の解説はこれを傘状と記す。竿縁が壁から中央へ向かって上がる形で、平らに並行して走る通常の竿縁天井とは違う。平天井であれば和室の当たり前の仕上げだが、浴室の上に浅い円錐を張るのは当たり前ではない。湯気と天井高と、入浴する人の頭上の見え方を考えた人がいたということである。

どちらも外からは見えない。それでも知っておく価値はある。55平方メートルの水まわりの棟がなぜ国の登録に載っているのかを説明するのが、この2点だからだ。

亀屋商事(旧飯島家住宅)本館旧食堂及び旧浴室へのアクセス

この建物は公開されていない。亀屋商事株式会社が所有し使用する敷地の奥、本館の背後にあり、私有地を通らなければ近づけない。拝観の受付も公開時間も料金も設定されておらず、前項で触れたステンドグラスと天井を見学することはできない。

県道東野田古河線からは、角度によって塀越しに銅板葺の低い屋根が見えることがあるものの、視線の大半は本館にさえぎられる。公道からの撮影に制限はないが、敷地に立ち入ることはできない。古河市も茨城県も、この物件について内部公開の案内は出していない。

敷地はJR宇都宮線古河駅の東口から北へ約600メートル、徒歩8分ほどの位置にある。建物についての問い合わせは古河市文化振興課(電話0280-22-5111)へ。2026年9月に確認した情報である。

Q&A

Q亀屋商事(旧飯島家住宅)本館旧食堂及び旧浴室のステンドグラスは見学できますか?
Aできません。この棟は亀屋商事株式会社の私有地内にあり公開されていないため、旧食堂の窓に残るステンドグラスを見学することはできません。
Q亀屋商事本館旧食堂及び旧浴室はどんな構成の建物ですか?
A2室です。東側の旧食堂が桁行3間半、梁間3間、西側の旧浴室が桁行3間、梁間2間で、あわせて建築面積55平方メートルになります。
Q亀屋商事本館旧浴室の傘状の竿縁天井とはどんなものですか?
A細い竿縁を見せて板を支える竿縁天井のうち、竿縁が中央へ向かって上がり、浅い円錐状になったものです。平らに張る一般的な形とは異なります。
Q亀屋商事本館旧食堂及び旧浴室はいつ登録されましたか?
A2004年6月9日、登録番号第08-0126号として登録されました。本館、本館土蔵、旧飯島製糸の煉瓦倉庫も同じ日の登録です。
Q亀屋商事本館旧食堂及び旧浴室のある場所へはどう行きますか?
A古河駅東口から北へ約600メートル、徒歩8分ほどです。県道沿いに建つ本館と同じ敷地の奥にあります。

基本データ

名称亀屋商事(旧飯島家住宅)本館旧食堂及び旧浴室
所在地茨城県古河市雷電町1-78
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成16年(2004年)登録
員数1棟
寸法建築面積55平方メートル、旧食堂は桁行3間半・梁間3間、旧浴室は桁行3間・梁間2間
所有者亀屋商事株式会社
公開状況非公開。私有地の奥にあり道路からはほとんど見えない

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「亀屋商事(旧飯島家住宅)本館旧食堂及び旧浴室」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004112
茨城県教育委員会 いばらきの文化財「亀屋商事(旧飯島家住宅)本館旧食堂及び旧浴室」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6286/
茨城県教育委員会 いばらきの文化財「亀屋商事(旧飯島家住宅)本館」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6280/
古河市「指定・登録文化財 建造物」
https://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/soshiki/bunka/15/siteitourokubunnkazai/kogabunkazaikennzoubutu/index.html

最終更新日: 2026.09.05