大谷石を積んだ大正期の石蔵
坂長本店石蔵は、茨城県古河市中央町にある大正期の石造2階建の蔵で、平成12年(2000年)9月26日に国の登録有形文化財となった。
屋敷地の端に長く伸び、敷地の奥を塞ぐように建つ。外壁は大谷石の切石積とする。大谷石は栃木県宇都宮市の大谷周辺で採れる凝灰岩で、軟らかく加工しやすい。1階には扉口をいくつも設け、扉口の両脇柱とまぐさには、開口をひとまたぎにする長大な切石を一石から挽き出して使っている。屋根は切妻造、桟瓦葺。2階の妻壁には窓が並ぶ。建築面積は104平方メートル。
坂長の屋敷を構えた佐藤家は江戸初期にこの地へ移り、両替商から始めて9代目に酒問屋へ転じた。同じ屋敷の6棟が同時に登録されており、坂長本店石蔵はそのなかで最も新しい。文化庁の国指定文化財等データベースは、建築年代を大正期、西暦では1912年から1925年の間としている。
北関東の石蔵のなかで
坂長本店石蔵に適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」である。文化庁の解説は規模に触れ、北関東における石蔵のなかでも大規模な部類に属すとする。登録番号は第08-0034号で、第25回の登録で坂長の屋敷から出された6件のうちの1件にあたる。
この屋敷で石造はここだけである。ほかの蔵はいずれも土蔵造で、外壁を白い漆喰で仕上げている。石で建てるということは、採石地から材を運び、切って積める石工を呼び、開口部の荷重を木の梁ではなく石で受ける構法に切り替えることを意味した。その転換が起きるのは明治後期から大正にかけてで、鉄道貨物が大谷石を安く運べるようになった時期と重なる。
年代の根拠は墨書ではなく国の記録による。隣接する2棟と違って、坂長本店石蔵の梁には年号を記した墨書が見つかっていない。
切石の積み方を見る
敷地の奥に立ち、坂長本店石蔵の壁を正面からではなく、長手方向に沿って見てほしい。長さがこの建物の性格である。目地は水平に長く通り、石は時間帯によって表情を変える。晴れた昼にはほとんど白く、曇天では凝灰岩が湿気を含んで灰緑色に沈む。
開口部は近づいて見る価値がある。扉口はいずれも2本の縦石と1本のまぐさで枠取られ、そのすべてが一石から切り出されている。公式の解説がわざわざ長大さに言及しているのは、この石を採り、運び、据えることが工事のなかで最も費用のかかる部分だったからである。
視線を上げると妻壁の窓がある。小ぶりで高い位置にあり、壁の強度を落とさずに2階へ光を入れる。その上を覆う瓦は屋敷のほかの蔵と同じ桟瓦葺で、石造の一棟を屋敷の景観につなぎ止めているのはこの屋根である。
隣に建つのは白漆喰の中蔵で、土蔵造の壁と石積の壁が一度に視野へ入る。江戸から大正までに家の建て方がどれだけ変わったかは、この並びを見るのがいちばん早い。
ホールとしての現在と訪ね方
坂長本店石蔵は現在、ステージを備えたミニホールとして使われ、「古河のお休み処 坂長」の運営者がコンサートなどの催しに貸し出している。貸館が入っている時間帯は内部を自由に見られないことがあるため、静かな平日のほうが落ち着いて見学できる。
施設の開館は午前9時から午後5時、年末年始は休館する。入場は無料。問い合わせ先の電話は0280-22-2781。
JR宇都宮線の古河駅から徒歩9分。車では東北自動車道の久喜インターチェンジまたは館林インターチェンジから約30分、圏央道の境古河インターチェンジから約35分。駐車場は坂長駐車場、中央町広場、古河文学館の3か所が使える。
撮影については運営者による明文の規定が見当たらない。外観は道路から撮影できるが、内部は展示や貸館の状況で扱いが変わるため、受付で確認するのが確実である。
Q&A
- 坂長本店石蔵の内部は見学できますか?
- 貸館が入っていなければ見学できます。ステージ付きのミニホールとして貸し出されているため、その日の予約状況によります。到着したら受付で確認してください。
- 坂長本店石蔵の開館時間と入場料は?
- 施設の開館は午前9時から午後5時で、年末年始は休館します。入場料はかかりません。
- 古河駅から坂長本店石蔵まではどう行きますか?
- JR宇都宮線の古河駅から徒歩9分です。車の場合は久喜インターチェンジまたは館林インターチェンジから約30分、境古河インターチェンジから約35分です。
- 坂長本店石蔵にはどんな石が使われていますか?
- 栃木県宇都宮市の大谷周辺で採れる凝灰岩、大谷石です。切石を積み上げた壁で、1階の扉口では両脇柱とまぐさに一石から切り出した長大な石を用いています。
- 坂長本店石蔵はいつ建てられ、いつ登録されましたか?
- 文化庁は建築年代を大正期、1912年から1925年の間としています。登録は平成12年(2000年)9月26日、登録番号は第08-0034号です。
基本情報
| 名称 | 坂長本店石蔵 |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県古河市中央町3-1-39(国指定文化財等データベースの表記は中央町3-5742・5743他) |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成12年(2000年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 石造2階建、瓦葺、建築面積104平方メートル |
| 所有者 | 個人(茨城県教育委員会の記載による) |
| 公開状況 | 「古河のお休み処 坂長」の一部として公開。午前9時から午後5時、年末年始休館、入場無料 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「坂長本店石蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001852
- 茨城県教育委員会 いばらきの文化財「坂長本店店蔵(旧古河城文庫蔵)ほか5棟」
- https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6530/
- 古河のお休み処 坂長 公式サイト「総合案内」
- https://sakacho.com/info
- 古河のお休み処 坂長 公式サイト「アクセス」
- https://sakacho.com/access
最終更新日: 2026.09.07