屋敷の最も奥に建つ土蔵
坂長本店中蔵は、茨城県古河市中央町にある江戸中期の2階建土蔵で、平成12年(2000年)9月26日に国の登録有形文化財となった。
坂長の屋敷地の最も奥、文庫蔵と細長い石蔵に挟まれた位置にある。壁は土蔵造の白い漆喰塗り、屋根は切妻造の桟瓦葺。文化庁の記録では建築面積52平方メートルで、同じ屋敷で登録された6棟のうち最も小さい。
位置と大きさは対になっている。城下町の商家の地割は通りに面する間口が狭く奥へ長い。いちばん奥へ置かれたのは、人に見せる必要も、出し入れの便もいらない棟だった。坂長本店中蔵は、通りから見えないことを前提に建てられている。
年代が定まらないという記録
坂長本店中蔵について、文化庁は珍しくはっきりと書いている。建築年代は明確でない、と。隣接する2棟にあるような年号入りの墨書が見つかっておらず、年を確定する文書も示されていない。記録に残るのは、屋敷の建築群のなかで最も古いという伝えと、江戸中期という区分、そして1661年から1750年という範囲だけである。
その伝えが正しければ、この蔵は酒の商いより前のものになる。佐藤家はまず両替商であり、酒問屋に転じたのは9代目である。文化庁の解説は、この建物を両替商の時代を伝える棟として読んでいる。登録は「造形の規範となっているもの」を基準とし、番号は第08-0033号。
年代が定まらないことは弱みではない。登録の制度は文書に残る年だけでなく、形と技法を見る。奥に立つこの白い箱は、前に並ぶ年代のわかる蔵を読むための基準点にあたる。
屋根裏を見上げる
坂長本店中蔵の内部は二度作り替えられており、その順序自体が来歴である。平成12年(2000年)の登録に際して書かれた文化庁の解説は、内部を改装して酒造関係の設備を整えていると記す。運営者が現在公開している建物案内では用途がさらに変わり、施設の手洗いとして使われている。案内は見上げることを勧めており、天井と屋根裏には建てられたときの姿が残る。
その見上げる一点のために中へ入る価値がある。蔵の小屋組は重い。壁が荷を負い、火に耐える必要があったからで、頭上の木組みはこの建物で用途の変転から最も遠い部分にあたる。
外に出たら、坂長本店中蔵と石蔵のあいだの隙間を歩いてほしい。片側は漆喰、片側は大谷石の切石、屋根は同じ瓦。数歩の幅の通路に、およそ200年分の建て方の変化が畳み込まれている。
たどり着き方
坂長本店中蔵へは、「古河のお休み処 坂長」の通り側の入口から入り、店蔵と主屋の脇を抜けて屋敷の奥まで歩く。施設の開館は午前9時から午後5時、年末年始は休館、入場は無料。電話は0280-22-2781。
現在は手洗いとして使われているため、この屋敷のなかでは予約状況に左右されず、開館時間中は確実に内部へ入れる数少ない棟でもある。
JR宇都宮線の古河駅から徒歩9分。車では東北自動車道の久喜インターチェンジまたは館林インターチェンジから約30分、圏央道の境古河インターチェンジから約35分。駐車場は坂長駐車場、中央町広場、古河文学館の3か所。
撮影について明文の規定はない。現在の用途を考えると、この棟で撮るのは屋根裏と外観に限るのが妥当で、迷う場合は受付で確認してほしい。
Q&A
- 坂長本店中蔵はいつ建てられたのですか?
- 正確な年は確定していません。文化庁は江戸中期、1661年から1750年の範囲としたうえで、屋敷内で最も古い建物という伝えを記録しています。
- 坂長本店中蔵は今どう使われていますか?
- 運営者の建物案内では施設の手洗いとされ、天井と屋根裏に当時の姿が残ると紹介されています。登録時の解説では、内部に酒造関係の設備が整えられていました。
- 坂長本店中蔵は屋敷のどこにありますか?
- 敷地の最も奥、文庫蔵と石蔵のあいだです。通り側の入口から入り、主屋の脇を抜けて奥へ進んでください。
- 坂長本店中蔵はなぜ登録されたのですか?
- 「造形の規範となっているもの」を基準に第08-0033号として登録されました。解説は、当家が両替商を営んでいた時期に結びつけています。
- 坂長本店中蔵の開館時間と行き方は?
- 施設は午前9時から午後5時の開館で、年末年始は休館、入場は無料です。JR宇都宮線の古河駅から徒歩9分です。
基本情報
| 名称 | 坂長本店中蔵 |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県古河市中央町3-1-39(国指定文化財等データベースの表記は中央町3-5742・5743他) |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成12年(2000年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造2階建、瓦葺、建築面積52平方メートル |
| 所有者 | 個人(茨城県教育委員会の記載による) |
| 公開状況 | 「古河のお休み処 坂長」の一部として公開。午前9時から午後5時、年末年始休館、入場無料 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「坂長本店中蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001851
- 茨城県教育委員会 いばらきの文化財「坂長本店店蔵(旧古河城文庫蔵)ほか5棟」
- https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6530/
- 古河のお休み処 坂長 公式サイト「総合案内」
- https://sakacho.com/info
- 古河のお休み処 坂長 公式サイト「アクセス」
- https://sakacho.com/access
最終更新日: 2026.09.07