四つ辻の角に立つ土蔵

坂長本店袖蔵(旧古河城乾蔵)は、茨城県古河市中央町にある文久3年(1863年)の2階建土蔵で、平成12年(2000年)9月26日に国の登録有形文化財となった。

坂長の屋敷の前面、道が交わる四つ辻の角地を占める。隣の店蔵とは棟を直交させており、2棟がそれぞれ別の通りへ向きを変えている。壁は土蔵造で白い漆喰仕上げ、屋根は切妻造桟瓦葺。古河市の記録では桁行7.27メートル、梁間4.54メートル、文化庁の記録では建築面積60平方メートル。

名称に来歴が残る。乾は北西の方角を指す語で、城の呼び名では敷地の北西隅に建つ蔵をそう呼んだ。坂長本店袖蔵はその蔵にあたると伝えられ、明治6年(1873年)の廃城令によって古河城が解体・売却された際に、ここへ移されたとされる。

文久三年の墨書が支えるもの

この年代の土蔵は、多くが状況証拠から年代を推し量る。坂長本店袖蔵は違う。内部の牛梁に「文久三年癸亥五月吉日」と墨書があり、部材の年代が文久3年(1863年)に定まる。古河市はこの記述を建築年代を示す資料として扱っている。

2つの年の間が読みどころである。1863年に伐り出され組まれた木は、徳川の体制が続いていた最後の10年に属する。そのころ古河城はまだ城として機能していた。移築はその約10年後、廃城令のあとにあたる。つまりこの角地に残るのは城内の大工仕事であり、それを町方の商家が買い取って組み直したことになる。

この来歴が登録基準の選び方に表れている。坂長本店袖蔵は「再現することが容易でないもの」として第08-0030号に登録された。文化庁の解説は、店蔵とともに古河城を偲ぶ数少ない遺構だと記す。

四つ辻から何が見えるか

門をくぐる前に、交差点まで下がってほしい。この位置から見ると坂長本店袖蔵は切妻の妻面を通りへ向け、白漆喰の三角形が広い壁の上にのる。隣の店蔵は逆に長い側面を見せる。2棟が1つの構成として読めるのはこの角度からで、入口の前で撮った写真には写らない。

漆喰は近くで見る価値がある。漆喰は土壁の下地の上に石灰を何層も塗り重ねたもので、蔵では防火と仕上げを兼ねる。軒との取り合い、角の回り方を見てほしい。壁の厚みは開口部の見込みに正直に出る。

瓦は隣の建物から連続する。建った年代がばらばらでもこの屋敷がひとまとまりに見えるのは、この屋根のためである。坂長本店袖蔵の棟が店蔵の棟と直角に交わるところだけがその連続を断つが、これは意図されたものだ。角地には向き合うべき通りが2本ある。

訪ねるときに

坂長本店袖蔵は「古河のお休み処 坂長」の一部で、施設の開館は午前9時から午後5時、年末年始は休館する。敷地の見学は無料。電話は0280-22-2781。

運営者が公開している建物案内では、店蔵・主屋・文庫蔵・石蔵と違い、この蔵に公開用途が割り当てられていない。したがって内部は通常の見学経路に含まれない。もっとも外観は2方向の道路から余さず見えるので、この建物はもともと外から見るのがよい。

JR宇都宮線の古河駅から徒歩9分。車では東北自動車道の久喜インターチェンジまたは館林インターチェンジから約30分、圏央道の境古河インターチェンジから約35分。駐車場は坂長駐車場、中央町広場、古河文学館の3か所が使える。

撮影について明文の規定はない。道路からの外観撮影は問題ないが、敷地内で撮る前には受付で確認してほしい。

Q&A

Q坂長本店袖蔵の内部は見学できますか?
A運営者の建物案内に公開用途の記載がなく、内部は通常の見学経路に含まれません。外観は角で交わる2本の道路から自由に見られます。
Q坂長本店袖蔵はなぜ「旧古河城乾蔵」と呼ばれるのですか?
A乾は北西の方角を指す語で、古河城の北西隅に建っていた蔵を指します。廃城後にこの地へ移築されたと伝えられています。
Q坂長本店袖蔵の建築年代はどうしてわかるのですか?
A内部の牛梁に「文久三年癸亥五月吉日」の墨書があり、文久3年すなわち1863年にあたります。古河市はこれを建築年代を示す資料としています。
Q坂長本店袖蔵の大きさは?
A古河市の記録で桁行7.27メートル、梁間4.54メートル。文化庁の記録では2階建、建築面積60平方メートルです。
Q坂長本店袖蔵の開館時間と行き方は?
A施設は午前9時から午後5時の開館で、年末年始は休館、入場は無料です。JR宇都宮線の古河駅から徒歩9分です。

基本情報

名称坂長本店袖蔵(旧古河城乾蔵)
所在地茨城県古河市中央町3-1-39(国指定文化財等データベースの表記は中央町3-5742・5743他)
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成12年(2000年)登録
員数1棟
寸法土蔵造2階建、瓦葺、桁行7.27メートル、梁間4.54メートル、建築面積60平方メートル
所有者個人(茨城県教育委員会の記載による)
公開状況「古河のお休み処 坂長」で外観を道路から見学可。施設は午前9時から午後5時、年末年始休館、入場無料

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「坂長本店袖蔵(旧古河城乾蔵)」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001848
文化遺産オンライン「坂長本店袖蔵(旧古河城乾蔵)」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/137618
古河市「【国登録文化財】坂長本店袖蔵 - 旧古河城乾蔵(建造物)」
https://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/soshiki/bunka/15/siteitourokubunnkazai/kogabunkazaikennzoubutu/2398.html
茨城県教育委員会 いばらきの文化財「坂長本店店蔵(旧古河城文庫蔵)ほか5棟」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6530/
古河のお休み処 坂長 公式サイト「アクセス」
https://sakacho.com/access

最終更新日: 2026.09.07