県道の向かいに建つ明治後期の煉瓦倉庫

亀屋商事(旧飯島製糸)煉瓦倉庫は、茨城県古河市東1-15-11にある明治後期の煉瓦造倉庫で、平成16年(2004年)に登録有形文化財に登録された。県道東野田古河線の南側に、車道をはさんで飯島家の住宅と向かい合う形で、南北に棟を通して建つ。

規模は桁行15間、梁間3間、建築面積192平方メートル。要点は長さである。まとまった塊ではなく、細く伸びた形をしており、その比率は中に何を入れていたかから直接きている。屋根は切妻造桟瓦葺、一部に亜鉛板を用いる。

年代は明治後期、1868年から1911年の間とされる。この一帯で登録された4件のなかで最も古く、道の向かいの住宅より一世代ほどさかのぼる。文化庁のデータベースは種別の付け方も分けており、倉庫は産業2次、住宅とその附属屋は産業3次に分類されている。道の片側が製造、もう片側が商いということになる。

煉瓦が記録しているもの

登録番号は第08-0127号、登録日は2004年6月9日。適用基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。理由については古河市の説明が端的で、煉瓦の保存状態がよく建築当時の姿をとどめていること、そして製糸業で栄えた古河の歴史を伝えていることを挙げている。

その製糸業が、亀屋商事(旧飯島製糸)煉瓦倉庫を理解するための文脈のすべてである。日光街道の宿場だった古河は明治から大正にかけて製糸で伸び、飯島家はその一角を担った。倉庫は事業の側に属する建物だった。道の向こうに昭和10年(1935年)に建った洋風住宅、望楼と大理石円柱をもつあの建物は、同じ資本が一世代後に選んだ形である。二つを対にして読むと、地方の産業資本がどこから来て、最終的に何になったのかが見えてくる。

ひとつ注意がいる。文化庁データベースの構造欄はこの建物を煉瓦造平屋建とするが、同じデータベースの解説文は煉瓦造2階建倉庫と書く。両者を橋渡しするのが古河市の記述で、現在は1層であるものの建築当初は2層と推定される、としている。資料を突き合わせれば必ず出会う食い違いであり、説明がつくのは市の記述による。

歩道からどう見るか

見るべきものは壁である。煉瓦はイギリス積で積まれている。長手だけを並べた段と、小口だけを並べた段が交互に重なるため、壁面の模様は一段ごとに切り替わり、同じ表情が続かない。壁の厚さは煉瓦一枚半。この長さの建物が軸組に頼らずに立っていられるのはそのためである。

立面を端まで目で追ったら、両端に注目したい。1階では南北の妻壁が本体より東へ張り出し、その間に下屋庇が架けられて、そこに開く2つの戸口を覆っている。装飾ではなく仕事のための細部で、荷の出し入れは屋外で行われ、庇は敷居を濡らさないためにある。

そのうえで一歩下がり、二棟をまとめて視野に入れてみたい。北側の歩道に立てば、煉瓦倉庫と本館の望楼を一枚の眺めのなかに収められる。別々の登録として扱われている建物どうしでは、なかなかない見え方である。煉瓦には午後遅い時間の光が合う。低い光は長手と小口の段の違いを拾うが、正午の平らな光はそれを消してしまう。

亀屋商事(旧飯島製糸)煉瓦倉庫の見学方法

ここで登録された4件のうち、通りすがりの人にいちばん素直に姿を見せるのがこの建物である。長い東側の立面が県道に沿って続いているため、角度を探さなくても全長を歩道から見渡せる。

できないのは中に入ることである。倉庫は亀屋商事株式会社の所有で、使用中の私有地に建ち、拝観の受付も公開時間も料金もない。古河市も茨城県も見学できる施設としては案内しておらず、内部公開の告知も出ていない。道路からの撮影に制限はないが、県道には車が通り歩道は広くないので、歩道から出ないことと車に注意することが実際的な助言になる。

JR宇都宮線古河駅の東口から北へ約550メートル、徒歩7分ほど。そのまま数歩で本館の前にも立てる。問い合わせは古河市文化振興課(電話0280-22-5111)へ。2026年9月に確認した情報である。

Q&A

Q亀屋商事(旧飯島製糸)煉瓦倉庫は道路から見学できますか?
Aできます。長い東側の立面が県道東野田古河線に面しており、公道の歩道から全長を見渡せます。内部は私有地で公開されていません。
Q亀屋商事(旧飯島製糸)煉瓦倉庫はいつ頃の建物ですか?
A明治後期、1868年から1911年の間の建築とされます。2004年にこの一帯で登録された4件のなかで最も古く、道の向かいの住宅(1935年建築)より前の建物です。
Q亀屋商事煉瓦倉庫は平屋ですか、2階建ですか?
A現在は1層です。古河市は建築当初は2層と推定されると記しており、文化庁の記録に平屋建と2階建の両方の記述がある理由もそこにあります。
Q亀屋商事煉瓦倉庫の煉瓦はどのように積まれていますか?
Aイギリス積です。長手の段と小口の段が交互に重なり、壁の厚さは煉瓦一枚半。古河市は煉瓦の保存状態がよいと評価しています。
Q古河駅から亀屋商事煉瓦倉庫へはどう行きますか?
A東口を出て北へ約550メートル、徒歩7分ほどです。県道の南側に建ち、亀屋商事本館の真向かいにあたります。

基本データ

名称亀屋商事(旧飯島製糸)煉瓦倉庫
所在地茨城県古河市東1-15-11
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成16年(2004年)登録
員数1棟
寸法建築面積192平方メートル、桁行15間、梁間3間
所有者亀屋商事株式会社
公開状況内部非公開、外観は公道から見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「亀屋商事(旧飯島製糸)煉瓦倉庫」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004113
文化遺産オンライン「亀屋商事(旧飯島製糸)煉瓦倉庫」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/184023
古河市「【国登録文化財】亀屋商事煉瓦倉庫 - 旧飯島製糸煉瓦倉庫(建造物)」
https://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/soshiki/bunka/15/siteitourokubunnkazai/kogabunkazaikennzoubutu/2420.html
茨城県教育委員会 いばらきの文化財「亀屋商事(旧飯島家住宅)煉瓦倉庫」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6289/

最終更新日: 2026.09.05