県道沿いに建つ昭和10年の洋風建築

亀屋商事(旧飯島家住宅)本館は、茨城県古河市雷電町1-78にある昭和10年(1935年)竣工の木造洋風建築で、平成16年(2004年)に登録有形文化財に登録された。県道東野田古河線に面して建ち、遠くからでもそれと分かるのは西南の隅に立ち上がる望楼である。

平面は桁行6間半、梁間5間半。建築面積は200平方メートルで、文化庁の登録原簿は構造を木造2階建、銅板葺一部亜鉛葺とし、塔屋付と付記する。古河市の資料は同じ建物を木造2階一部3階建と記しており、望楼を1層として数えるかどうかで表記が分かれている。

建てたのは飯島雷輔。飯島製糸の2代目で、のちに古河町長を務めた人物であることを茨城県教育委員会の文化財ページが伝えている。設計者ではなく棟梁の名が記録に残るのがこの建物の特徴で、文化庁のデータベースは谷部貞雄の名を挙げる。

資金の出どころは生糸だった。日光街道の宿場だった古河は明治から大正にかけて製糸業で潤い、飯島家はその流れのなかで力をつけた家のひとつである。昭和10年、その富は工場ではなく通りに面した建物のかたちで示された。タイルと大理石と、そして塔である。

登録有形文化財となった理由

登録は2004年6月9日、告示は同年6月24日で、登録番号は第08-0124号。適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。建物そのものの様式的完成度より、その土地の見え方をかたちづくってきたかどうかを問う基準で、亀屋商事(旧飯島家住宅)本館の場合はほぼ望楼がその役目を負っている。この一帯でいちばん高い建築物であり、戦前からそうだった。

同じ日に、同じ敷地とその向かいから3件が登録されている。本館の背後には小さな土蔵と、旧食堂及び旧浴室にあてられた平屋の棟が残り、県道をはさんだ向かい側には4件のなかで最も古い旧飯島製糸の煉瓦倉庫が建つ。4件をまとめて見ると、道の片側に工場を持ち、もう片側に住んだ地方商家の敷地の使い方がそのまま読み取れる。

制度としてはこれは登録であって指定ではない。1996年に始まった登録有形文化財の制度は、おおむね築50年以上の建造物を対象とし、大きく手を加える前に届け出ることを所有者に求める。修理のたびに許可を要する仕組みではないため、現役の会社事務所がこの資格を持ったまま使われ続けることができる。

道路から見るときの手がかり

まず角を見る。西南隅の望楼は、文化庁の解説が国会議事堂を引き合いに出して説明するもので、似ているのは細部ではなく、段を踏んで角ばって立ち上がる全体の輪郭のほうである。塀に近づきすぎると軒に隠れてしまうので、交差点まで下がって見上げるとよい。

次に壁面。柱は平たい帯としてタイルを張って表され、窓を数える前にまず壁が縦の区画に割られている。その間に開く窓は細長い。日本の初期の洋風建築に多い正方形に近い窓とは比率が違い、大正から昭和初期の感覚に属する。壁の頂部は軒蛇腹をパラペット状に回して屋根を隠し、建物全体が箱に見えるように仕上げてある。

玄関で一度足を止めたい。円柱は大理石で、タイルと塗装で効果を出しているこの立面のなかで、ここだけが本当に高価な材料である。

最後に上を見る。屋根の大部分は銅板、残りは亜鉛板で葺かれている。二つの金属は違う速さで色を変えるので、晴れた日には軒より上の面が一様な色に見えない。

亀屋商事(旧飯島家住宅)本館の見学方法

建物は亀屋商事株式会社が所有し、現在も事務所として使っている。内部の見学はできず、拝観時間も料金も設定されていない。敷地は私有地である。できるのは公道から外観を眺めることで、もともとこの建物はそのように見られることを想定してつくられている。

道路からの撮影は制限されていない。規則というより礼儀の問題で、車の出入りを妨げないこと、敷地に立ち入らないこと、働いている人を写さないことを守れば足りる。古河市も茨城県も、この建物を公開施設としては案内しておらず、内部公開の予定も告知されていない。

行き方は分かりやすい。JR宇都宮線の古河駅東口から北へ約600メートル、徒歩8分ほどで、その道のりの大半で望楼が見えている。古河駅には上野・新宿方面からの直通列車が入るため、都心から乗り換えなしで着く。

建物についての問い合わせ先は古河市文化振興課(電話0280-22-5111)である。ここに書いた情報は2026年9月に確認した。

Q&A

Q亀屋商事(旧飯島家住宅)本館の内部は見学できますか?
Aできません。亀屋商事株式会社が現役の事務所として使っている建物で、内部は非公開、敷地も私有地です。見学は公道からの外観のみになります。
Q古河駅から亀屋商事(旧飯島家住宅)本館へはどう行きますか?
A東口を出て北へ約600メートル、徒歩8分ほどです。県道東野田古河線沿いに建っており、角の望楼が目印になります。
Q亀屋商事本館はいつ、誰が建てた建物ですか?
A昭和10年(1935年)の竣工で、飯島製糸の2代目にあたり古河町長も務めた飯島雷輔が建てました。工事を率いた棟梁として谷部貞雄の名が記録されています。
Q亀屋商事本館の望楼はなぜ国会議事堂に似ているのですか?
A文化庁の解説文が国会議事堂風と表現しています。似ているのは細部の模倣ではなく段を踏んで角ばる輪郭で、この望楼は古河のこの一帯で長く目印になってきました。
Q亀屋商事本館の周りにも登録有形文化財はありますか?
Aあります。背後に土蔵と旧食堂及び旧浴室の棟が建ち、県道の向かいには旧飯島製糸の煉瓦倉庫があります。4件とも2004年の同じ日に登録されました。

基本データ

名称亀屋商事(旧飯島家住宅)本館
所在地茨城県古河市雷電町1-78
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成16年(2004年)登録
員数1棟
寸法建築面積200平方メートル、桁行6間半、梁間5間半
所有者亀屋商事株式会社
公開状況内部非公開、外観は公道から見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「亀屋商事(旧飯島家住宅)本館」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004110
文化遺産オンライン「亀屋商事(旧飯島家住宅)本館」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/188840
茨城県教育委員会 いばらきの文化財「亀屋商事(旧飯島家住宅)本館」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6280/
古河市「【国登録文化財】亀屋商事 本館 - 旧飯島家住宅(建造物)」
https://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/soshiki/bunka/15/siteitourokubunnkazai/kogabunkazaikennzoubutu/2418.html

最終更新日: 2026.09.05