和田家住宅延年楼とはどのような建物か
和田家住宅延年楼は、茨城県水戸市自由が丘にある木造平屋建の茶亭で、天保6年(1835年)の建築、平成27年(2015年)11月17日に登録有形文化財として登録された。水戸市は、市内に現存する最も古い茶亭であるとしている。
単独の建物として建てられたものではない。馬口労町、いまの末広町の豪商であった大高家の第6代織衛門守善が、石州流の茶を学び、自邸の敷地内に設けたのがこの建物である。和田家住宅延年楼は、寺院や藩の施設ではなく、江戸時代末期の町人が自分の家に構えた茶の座敷にあたる。
名前は外から与えられた。宍戸藩第7代藩主の松平頼筠が「延年楼」と名付け、以後その名で呼ばれている。
間取りと、登録の理由
登録の基準は「造形の規範となっているもの」である。判断を支えているのは2点で、年代がはっきりしていること、そして江戸末期の茶室の造形と趣向が現地で読み取れる形で残っていることである。
和田家住宅延年楼は木造平屋建、瓦葺で一部を銅板葺とし、建築面積は68平方メートル。主屋根は桟瓦葺の切妻造で、正面に張り出す土庇は銅板で葺かれている。
部屋は東から順に並ぶ。玄関、押入の付いた5畳の待合、そして座敷飾を設けた書院である。書院の北に水屋を置き、その先に3畳と一畳台目の茶室を2席配する。台目は畳を4分の3ほどに詰めた寸法で、亭主が客の近くに座れるようにするための工夫である。
町人の茶亭に茶室を2席設けるのは多くない。水戸市教育委員会が和田家住宅延年楼を大形の建物と説明しているのはそのためで、待合と書院を備えたこの構成は、庭に置かれた一棟の草庵というより小さな接客の座敷群に近い。
二度の移築を経て残ったもの
建てられた場所に建ち続けたわけではない。昭和35年(1960年)と昭和53年(1978年)の二度にわたって解体され、建て直されている。そうして、もとの町人地から離れた水戸市東部の自由が丘に移った。
二度も動かされて中身が入れ替わらずに済む建物は少ない。和田家住宅延年楼はそれを免れた。文化庁は、二度移築されながら部材は概ね残していると記録しており、移築の経緯そのものも推測ではなく知られている。庭石にも旧材が使われている。
天保6年という確かな年代と、その後に何が起きたかの記録がそろっていること。この組み合わせが、茶室建築を調べる人にとって和田家住宅延年楼を扱いやすい資料にしている。現存する茶室の多くは、様式からしか年代を推し量れない。
見学について
和田家住宅延年楼は個人の所有で、一般には公開されていない。水戸市は管理者を個人蔵とのみ記しており、市も文化庁も、開館時間・入館料・定期的な公開の仕組みを公表していない。受付も入場券もなく、内部に入る手段はない。
建物は自由が丘の住宅地にある個人の敷地内に建っている。そのためこの記事では所在地を町名までにとどめている。敷地に立ち入ったり、塀越しに撮影したりすることは控えてほしい。登録という制度が所有者に求めるのは、現状変更や取り壊しの際の届出であって、来訪者を受け入れる義務ではない。
姿を見る方法はある。国指定文化財等データベースには水戸市教育委員会が提供した写真が掲載されており、水戸市のページでも同じ写真を見ることができる。物件についての問い合わせ先は水戸市教育委員会事務局教育部歴史文化財課文化財係、電話029-306-8132である。
水戸で茶室建築を見て回るなら、まずこの窓口に、その時点で公開されている建物を尋ねるのが現実的である。登録有形文化財の民間所有建物の公開は、地元で随時決まることが多く、早くから告知されるとはかぎらない。
Q&A
- 和田家住宅延年楼は見学できますか
- できません。個人の所有で一般公開されていません。水戸市も文化庁も開館時間や入館料を公表しておらず、見学者用の入口もありません。敷地への立ち入りはご遠慮ください。
- 和田家住宅延年楼はいつ、誰が建てたのですか
- 天保6年(1835年)に、馬口労町の豪商であった大高家第6代織衛門守善が建てました。石州流の茶を学んだ人物で、自邸の敷地内に設けたものです。
- 和田家住宅延年楼が登録有形文化財になった理由は何ですか
- 平成27年(2015年)11月17日に「造形の規範となっているもの」という基準で登録されました。年代が明確であり、江戸末期の茶室の造形と趣向をよく伝えている点が評価されています。
- 和田家住宅延年楼に茶室はいくつありますか
- 2席です。水屋の先に3畳と一畳台目の茶室が配されています。手前には押入付5畳の待合と、座敷飾を設けた書院が並びます。
- 和田家住宅延年楼はもとから自由が丘にあったのですか
- いいえ。馬口労町の商家の敷地に建てられ、昭和35年(1960年)と昭和53年(1978年)の二度移築されました。部材は概ね残り、庭石にも旧材が使われています。
基本情報
| 名称 | 和田家住宅延年楼 |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県水戸市自由が丘(個人所有のため番地は記載しない) |
| 指定区分 | 登録有形文化財 |
| 指定年 | 平成27年(2015年)11月17日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺一部銅板葺、建築面積68平方メートル |
| 所有者 | 個人(国指定文化財等データベースには記載なし) |
| 公開状況 | 非公開。開館時間・入館料の公表なし。問い合わせは水戸市教育委員会歴史文化財課文化財係 電話029-306-8132 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 和田家住宅延年楼
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010738
- 水戸市教育委員会 和田家住宅延年楼
- https://www.city.mito.lg.jp/site/education/6072.html
- 水戸市教育委員会 水戸市指定文化財一覧
- https://www.city.mito.lg.jp/site/education/4161.html
最終更新日: 2026.09.09