大祖堂の前に構えをつくっていた廊下、總持寺祖院禅悦廊
總持寺祖院禅悦廊は、石川県輪島市門前町門前の總持寺祖院にある大正期(1912〜1925年)の廊下で、平成20年(2008年)3月7日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「ぜんえつろう」である。令和6年(2024年)1月1日の能登半島地震で全壊し、現在は解体された部材が格納されている。
文化庁の解説によると、總持寺祖院禅悦廊は山門と香積台を結ぶ南北33メートルの木造平屋建の廊下である。建築面積は69平方メートルで、屋根は両側へ流れる両下造の桟瓦葺とする。床は土間、天井は垂木や野地板をそのまま見せる化粧屋根裏とする。
總持寺祖院の伽藍は、明治31年(1898年)の火災のあと、大正から昭和初期にかけて再建された。大祖堂と仏殿が大正2年(1913年)、伽藍を囲む回廊の多くが大正2年頃から大正13年(1924年)頃にかけて建ったことが文化庁のデータベースから分かる。大正期とされる總持寺祖院禅悦廊も、この再建の流れの中で山門と庫裏をつなぐ通路として整えられた建物である。
總持寺祖院禅悦廊が登録有形文化財となった理由
總持寺祖院禅悦廊の登録番号は17-0176で、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁はその役割を、大祖堂の正面に威風のある構えをつくる点に見ている。總持寺祖院禅悦廊は大祖堂の正面にあたる部分で屋根を一段高く切り上げ、ただの通路で終わらない格の高さを伽藍の正面に添えていた。
大祖堂は法堂と祖師堂を兼ねる總持寺特有の堂で、文化庁は広壮な内部空間と細部の意匠を評価している。總持寺祖院禅悦廊はその正面を南北に通る低く長い廊下で、堂の正面にあたる部分だけ屋根を上げて区切りをつけていた。大きな堂と、その前景をつくる廊下を組み合わせた伽藍の構成が、登録の評価に結びついている。
總持寺祖院禅悦廊の意匠:表と裏で異なる窓
總持寺祖院禅悦廊は、壁の仕上げを東西で変えていた。伽藍の正面側にあたる西面には、上部を曲線にした花頭窓風の窓を開けて格子をはめ、下は腰板張りの壁、窓の上の小壁は漆喰で白く仕上げる。反対の東面では窓の花頭の形を省き、簡素にしている。
人の目に触れる側にだけ手間をかけるこの使い分けは、香積台の正面の花頭風の窓とも通じる。土間の床と化粧屋根裏の天井をもつ33メートルの廊下は、大祖堂や仏殿に比べれば軽い構えだったが、窓の意匠は伽藍の正面側に向けて整えられていた。
能登半島地震による總持寺祖院禅悦廊の倒壊と再建の予定
寺が令和6年(2024年)1月29日に公表した被害状況では、總持寺祖院禅悦廊は「全壊」とされ、あわせて禅悦廊中門の倒壊も報告された。寺の震災復興本部の記録によると、倒壊した禅悦廊と白山井戸は、令和6年7月16日から12月20日にかけて登録有形文化財建造物の緊急格納工事として解体された。部材には一つずつ番号や位置を記した木札を付け、仮設の格納庫に納めている。
格納された部材は、修理の段階でそのまま使えるもの、直して使えるもの、取り替えが必要なものに分けられる。復興本部が発足した時点の計画では、總持寺祖院禅悦廊の修理は令和14年(2032年)4月から令和15年(2033年)3月にかけて行う予定である。登録有形文化財の3件をあわせた概算事業費は約4億円とされている。
總持寺祖院禅悦廊の見学
總持寺祖院禅悦廊は解体格納されているため、現在は建物を見ることができない。もとの位置は山門と香積台のあいだで、大祖堂の正面にあたる。再建されるまでは、その場所に廊下が通っていたことを思い浮かべながら大祖堂の前に立つことになる。
境内には地震のあと立ち入りを禁じた区域が残っている。格納庫の内部を公開するという案内は見当たらない。境内への行き方と拝観時間・拝観料は總持寺祖院のページにまとめてある。
Q&A
- 總持寺祖院禅悦廊はどのような建物ですか?
- 總持寺祖院の山門と香積台を南北に結ぶ、長さ33メートルの木造平屋建の廊下です。床は土間で、大祖堂の正面にあたる部分だけ屋根を一段高くしていました。
- 總持寺祖院禅悦廊はいつ登録有形文化財になりましたか?
- 平成20年(2008年)3月7日に登録されました。登録番号は17-0176で、建てられたのは大正期とされています。
- 總持寺祖院禅悦廊は今も見られますか?
- 見られません。令和6年(2024年)1月1日の地震で全壊し、同年7月から12月にかけて解体され、部材は格納庫に保管されています。
- 總持寺祖院禅悦廊はいつ再建されますか?
- 寺の震災復興本部が発足した時点の計画では、令和14年(2032年)4月から令和15年(2033年)3月にかけて修理する予定です。工事の進み具合で変わることがあります。
- 總持寺祖院禅悦廊の窓にはどのような特徴がありましたか?
- 伽藍の正面側の西面に、上部が曲線の花頭風の窓を並べ、格子をはめていました。東面では花頭の形を省いて簡素にしていました。
基本情報
| 名称 | 總持寺祖院禅悦廊 |
|---|---|
| 所在地 | 石川県輪島市門前町門前壱2-1他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成20年(2008年)3月7日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、長さ33メートル、建築面積69平方メートル |
| 所有者 | 宗教法人大本山總持寺祖院 |
| 公開状況 | 2024年の地震で全壊し解体格納中のため見学不可(修理は2032〜2033年の予定) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):總持寺祖院禅悦廊
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006831
- 国指定文化財等データベース(文化庁):總持寺祖院 大祖堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00005607
- 大本山總持寺祖院:能登半島地震における被害の状況について
- https://noto-soin.jp/news/71/
- 大本山總持寺祖院:【震災復興本部だより】復興に向けての歩み①
- https://noto-soin.jp/news/90/
- 大本山總持寺祖院:【震災復興本部だより】復興に向けての歩み②
- https://noto-soin.jp/news/91/
最終更新日: 2026.10.04