鈴屋遺蹟保存会旧事務所とは
鈴屋遺蹟保存会旧事務所(すずのやいせきほぞんかいきゅうじむしょ)は、三重県松阪市殿町の松坂城跡に明治42年(1909年)に建てられた木造平屋建の事務所建築で、平成19年(2007年)7月31日に登録有形文化財となった。
本居宣長の旧宅を城跡の隠居丸跡へ移したとき、旧宅を守る鈴屋遺蹟保存会の拠点として建てられた。昭和63年(1988年)からは茶席「桜松閣(おうしょうかく)」の名で使われており、松阪市観光協会などの案内ではこちらの名で呼ばれることが多い。
和風に決まった事務所
鈴屋遺蹟保存会旧事務所は、登録番号24-0063として「造形の規範となっているもの」の基準で登録された。文化庁の解説は、近代の和風による事務所建築として価値が高いと評価している。
本居宣長記念館の沿革によると、事務所には当初、煉瓦造平屋で洋風の意匠とする案もあった。採られたのは、入母屋造の屋根を平入りに架け、正面に唐破風の玄関を付ける和風の案である。設計の実務は神宮司庁営繕事務嘱託の奥野栄蔵が担い、名古屋高等工業学校教授の土屋純一が指導・監督した。
記念館の沿革には、保存会に寄付した人々の芳名の一部が、いまも旧事務所に掲示されているとも書かれている。寄付は三井家、小津清左衛門、大谷嘉兵衛ら松阪ゆかりの資産家をはじめ、全国から寄せられたという。
唐破風の玄関と部屋の並び
鈴屋遺蹟保存会旧事務所は桁行7間、梁間4間の規模で、建築面積は117平方メートル。屋根は入母屋造の桟瓦葺で、南東に正面を向けている。
目を引くのは正面中央の玄関である。屋根は銅板葺の唐破風で、松阪市は、旧事務所の唐破風玄関に鎌倉時代初めの大仏様の細部を下敷きにした力強い意匠が使われていると説明する。桟瓦の大屋根の前に、銅板の曲線がひとつだけ張り出す構成になっている。
玄関の奥は玄関ホールで、南西の端に洋間の閲覧室、北西に10畳の座敷を配する。外観を和風にまとめながら、閲覧室だけは洋間にしている。宣長の資料を調べに来る人を迎える部屋として用意されたものと読める。
使われ方の移り変わり
鈴屋遺蹟保存会旧事務所は、昭和45年(1970年)に本居宣長記念館が開館すると事務所としての役目を終えた。松阪市によると、その後しばらくは郷土史料の展示室や松阪市史の編纂室に充てられ、昭和63年(1988年)に茶席「桜松閣」として開かれた。
記念館の沿革には、昭和63年(1988年)ごろ保存会事務所の修理に向けて中を片付けた際、記念館建設のときに市民から寄せられた寄付金の袋が段ボール箱で何箱も出てきたという回想も載っている。
見学方法
鈴屋遺蹟保存会旧事務所は、本居宣長記念館と旧宅の見学区域にあり、前の庭園には通常、記念館との共通券で入る。松阪市観光協会は令和4年(2022年)の催しの案内で、桜松閣は外からの見学のみで内部には入れないとしていた。現在の内部公開と撮影の可否は、記念館の受付で確かめたい。
建物は南東を向くので、唐破風の玄関は庭園の南東側から正面に見るとよい。午前中は正面に日が当たり、銅板の破風の曲線と大屋根の入母屋の妻が重なって見える。
Q&A
- 鈴屋遺蹟保存会旧事務所はいつ、何のために建てられましたか?
- 明治42年(1909年)、本居宣長の旧宅を松坂城跡へ移したときに、旧宅を守る鈴屋遺蹟保存会の事務所として建てられました。
- 鈴屋遺蹟保存会旧事務所と桜松閣は同じ建物ですか?
- 同じ建物です。昭和63年(1988年)から茶席「桜松閣(おうしょうかく)」として使われています。
- 鈴屋遺蹟保存会旧事務所の見どころはどこですか?
- 正面中央の銅板葺の唐破風の玄関です。鎌倉時代初めの大仏様の細部を下敷きにした意匠が使われています。
- 鈴屋遺蹟保存会旧事務所が登録有形文化財になったのはいつですか?
- 平成19年(2007年)7月31日です。登録番号は24-0063、基準は「造形の規範となっているもの」です。
- 鈴屋遺蹟保存会旧事務所の中に入れますか?
- 令和4年(2022年)の松阪市観光協会の案内では外からの見学のみとされていました。現在の扱いは本居宣長記念館の受付で確かめてください。
基本データ
| 名称 | 鈴屋遺蹟保存会旧事務所(すずのやいせきほぞんかいきゅうじむしょ) |
|---|---|
| 所在地 | 三重県松阪市殿町1537 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号24-0063 |
| 指定年 | 平成19年(2007年)7月31日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積117平方メートル(桁行7間、梁間4間) |
| 所有者 | 財団法人鈴屋遺蹟保存会(現・公益財団法人) |
| 公開状況 | 外観は本居宣長記念館の共通券で見学できる庭園から。内部の公開は未確認 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 鈴屋遺蹟保存会旧事務所(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005977
- 文化遺産オンライン 鈴屋遺蹟保存会旧事務所(文化庁)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/171282
- 鈴屋遺蹟保存会旧事務所、鈴屋遺蹟保存会倉庫、鈴屋遺蹟保存会正門、鈴屋遺蹟保存会塀(松阪市)
- https://www.city.matsusaka.mie.jp/site/culture-info/suzunoyaisekihozonkai-kyujimusyo.html
- 鈴屋遺蹟保存会の歩み(本居宣長記念館)
- https://www.norinagakinenkan.com/pages/45/
- 桜松閣(国有形登録文化財)デジタルライトアップ(松阪市観光協会)
- https://www.matsusaka-kanko.com/blog/2022/12/03/%E6%A1%9C%E6%9D%BE%E9%96%A3%EF%BC%88%E5%9B%BD%E6%9C%89%E5%BD%A2%E7%99%BB%E9%8C%B2%E6%96%87%E5%8C%96%E8%B2%A1%EF%BC%89%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%A2%E3%83%83-2/
- 本居宣長コース「国学の道」(松阪市)
- https://www.city.matsusaka.mie.jp/site/kanko/kokugakunomiti.html
最終更新日: 2026.10.02