天明7年創業、宮村川右岸の造り酒屋

梅ヶ枝酒造は、長崎県佐世保市城間町にある天明7年(1787年)創業の造り酒屋で、敷地に建つ主屋・住居・旧北蔵・貯蔵蔵・旧仕込蔵・旧むろ・瓶詰所の7棟が平成14年(2002年)2月14日に国の登録有形文化財となった。敷地は宮村川の右岸にあり、平戸へ向かう旧街道の平戸往還から遠くない。

蔵元の案内では、創業は11代将軍徳川家斉の治世にあたり、「梅ヶ枝」の酒銘は当時の大村藩主・大村純鎮から授かったと伝える。いまも日本酒と焼酎の双方を造り、仕込み水には地下300メートルから汲み上げる水を使っていると蔵元は説明している。

7棟の顔ぶれを並べると、酒造りの工程がそのまま建物になっていることに気づく。米を精白した旧北蔵、醪を仕込んだ旧仕込蔵、煉瓦造のムロを内に抱える旧むろ、搾りの槽場(ふなば)を持つ貯蔵蔵、出荷の作業場である瓶詰所。これに、帳場と住まいを兼ねた主屋と、庭に向いた離れ風の住居が加わる。

江戸末期から大正期まで、7棟の年代と構造

梅ヶ枝酒造の7棟は登録番号42-0012から42-0018までの連番で、登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。1棟ごとの意匠よりも、造り酒屋の敷地として一体の景観をつくっている点が評価の中心にある。

建築年がはっきり分かるのは主屋だけで、安政7年(1860年)とされる。住居・瓶詰所・旧むろ・旧仕込蔵の4棟は江戸末期の建物で、そのうち瓶詰所・旧むろ・旧仕込蔵には明治後期の改造が入る。旧北蔵は明治期の建物を昭和35年(1960年)ごろ現在地へ移したもの。貯蔵蔵だけが大正期の建築である。

構造は棟ごとに違う。主屋と住居は木造平屋建、旧仕込蔵は土蔵造の平屋、瓶詰所は土蔵造の2階建、旧むろは煉瓦と木造の併用、貯蔵蔵は煉瓦と土蔵造を組み合わせた2階建。屋根は蔵と作業棟の5棟が切妻造、主屋が片入母屋造、住居が片寄棟造で、文化庁の解説は多くの棟を桟瓦葺と記す。

建築面積を合計すると約1,037平方メートルになる。最大は旧仕込蔵の264平方メートル、最小は住居の70平方メートル。江戸の木造、明治の移築、大正の煉瓦がひとつの敷地に重なり、200年を超える家業の増築と建て替えの跡が、そのまま登録の対象になっている。

梅ヶ枝酒造の敷地をひと回りする順序

梅ヶ枝酒造の敷地では、東西に長い主屋がほぼ中央を占め、残る6棟がその周りを取り巻く。玄関は主屋南面の下屋の東寄りにあり、見学の起点はここになる。

主屋から北東へ向かうと住居があり、南東の庭に縁を開いている。その北に建つのが旧北蔵で、昭和35年ごろまでは貯蔵蔵のさらに北にあった。西へ回ると主屋の西側に貯蔵蔵、その南の敷地西南隅に最大の旧仕込蔵が構える。

旧仕込蔵の東隣が旧むろ、そのまた東が瓶詰所の2階建部分で、瓶詰所の平屋部分は主屋の南の下屋(もとは釜場)に向き合う。敷地の南辺では旧仕込蔵と旧むろの屋根がひと続きに見え、文化庁の解説が造り酒屋特有と形容する路地のような通りが生まれている。ここを抜けて主屋の前へ戻れば、7棟をひと巡りしたことになる。

ただし多くの棟は現役の醸造・出荷施設で、見学者が敷地の奥まで自由に歩けるとは限らない。棟の配置を順に追いたいなら、予約制の蔵見学で案内を受けるのが確実である。

梅ヶ枝酒造の見学条件とアクセス

主屋の土間は試飲と販売の場として使われ、蔵元が示す営業時間は午前9時から午後5時までである。蔵開きの期間中は販売が午前10時から午後3時までに短縮される。

蔵見学は1月1日から3日を除いて年間を通じて受け付けており、時間帯は午前の部が午前10時から12時、午後の部が午後1時から4時。見学の3日前までに電話(0956-59-2311)で予約する。約10分の製造工程の説明は大人10人以上の団体が対象で、10人以上で訪れる場合は説明が不要でも予約が要る。入場は無料だが、2026年1月から日本人以外の海外団体の受け入れは有償になった。お盆や正月、作業の都合で断られる日もある。

例年、秋と2月ごろに蔵開きが催され、開催日にはJRハウステンボス駅から無料のシャトルバスが運行される(佐世保観光コンベンション協会の案内による)。日程は年ごとに変わるので、訪問前に確かめたい。

車の場合は、JRハウステンボス駅から約3キロ、5〜6分で着く。国道205号を大村方面へ進み、長畑交差点(信号あり)を左折して道なりに約500メートル、左手が梅ヶ枝酒造である。玄関前と玄関奥に駐車場があり、大型バスも入れる。運転する人はアルコールの試飲ができない点に注意したい。駅から歩くと3キロほどの道のりになるため、公共交通で来た場合はタクシーを使うのが現実的だ。撮影の可否は案内に明記されていないので、見学の際に確認するとよい。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「梅ヶ枝酒造主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002727
文化庁 国指定文化財等データベース「梅ヶ枝酒造住居」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002728
文化庁 国指定文化財等データベース「梅ヶ枝酒造瓶詰所」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002729
文化庁 国指定文化財等データベース「梅ヶ枝酒造旧むろ」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002730
文化庁 国指定文化財等データベース「梅ヶ枝酒造旧仕込蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002731
文化庁 国指定文化財等データベース「梅ヶ枝酒造貯蔵蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002732
文化庁 国指定文化財等データベース「梅ヶ枝酒造旧北蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002733
梅ヶ枝酒造「酒蔵見学」
https://www.umegae-shuzo.com/kura/index.php
海風の国観光圏(佐世保観光コンベンション協会)「梅ヶ枝酒造」
https://www.sasebo99.com/spot/61155

最終更新日: 2026.09.19

基本情報

名称梅ヶ枝酒造
所在地長崎県佐世保市城間町317
所有者梅ヶ枝酒造株式会社
指定登録有形文化財 7件
座標33.08992, 129.81483