奈良町にぎわいの家主屋とは

奈良町にぎわいの家主屋は、奈良県奈良市中新屋町にある大正6年(1917年)上棟の表屋造の町家で、平成29年(2017年)5月2日に国の登録有形文化財(建造物)となった(文化庁)。読みは「ならまちにぎわいのいえしゅおく」。

文化庁の記録では、木造2階建、瓦葺で、建築面積は203平方メートル、高塀が付く。昭和後期と平成27年(2015年)に改修を受けている。登録番号は29-0249である。

表屋と主体部を玄関でつなぐ

奈良町にぎわいの家主屋は、中新屋町の街路の南端に東を向いて建つ(文化庁)。道に面した店の棟(表屋)と、少し奥の住まいの棟(主体部)を別に建て、その間を玄関でつなぐ表屋造で、屋根は切妻造の瓦葺、表屋の北の側面だけを入母屋造とする。

通りに面した奈良町にぎわいの家主屋の表屋。格子と看板の掛かる正面
通りに面した奈良町にぎわいの家主屋の表屋。格子と看板の掛かる正面Kochizufan / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

表屋の2階は、奈良の町家ならふつう板張りの物置になるところを畳敷きの和室とし、上り下りしやすい幅の広い階段を付ける。壁の隅には隣の部屋から給仕するための小さな戸があり、2階で客と商談をするためのつくりと考えられている(パンフレット)。

背面には入母屋造の別棟を突き出し、1階に15畳の座敷、2階にも座敷を構えて北へ眺めを開く(文化庁)。間口の広い町家では座敷棟を主屋の脇に置くのが普通で、敷地の奥に2階建ての座敷を重ねる形は他に例を見ないという(パンフレット)。

登録有形文化財としての価値

文化庁は、背面に別棟を突き出して各階に座敷を構え、北に眺めを取る独特の構成が、近代における表屋造の展開をよく示すとして、「造形の規範となっているもの」に登録した。

施設のパンフレットは、座敷から張り出した仏間や、玄関と茶室から15畳の座敷へ通じる廊下など、手前の部屋を通らずに奥へ行ける間取りを挙げ、大正期の自由な発想が表れているとする。茶室や仏間の納まりからは、建てながら考えを足していった様子も読み取れるという。

棟札に残る施主と棟梁

奈良町にぎわいの家主屋では、玄関部の棟木の下端に打ち付けた棟札と、表屋・主体部の南北棟・東西棟の3か所の棟木に書かれた墨書が見つかっている。こうした記録は1か所にだけ残るのが普通で、4か所にあるのは珍しい(パンフレット)。

棟札によれば、起工は大正5年(1916年)11月、上棟は大正6年(1917年)6月で、建築主は大隅安三郎、大匠棟梁は山賀熊吉である。山賀熊吉(1868〜1949年)は宮大工でもあり、法隆寺の修理などに携わったとされる。棟札は奈良市史料保存館が所蔵している。

見どころ

奈良町にぎわいの家主屋は、まず道から黒漆喰の壁と格子の表屋を眺め、北の庭側に回って、表屋の入母屋の妻と奥の座敷棟の屋根が重なる外観を見ておきたい。北の外壁には、軒を支える持ち送りの金物も付く(パンフレット)。

内部では、15畳の座敷の天袋に貼られた江戸時代の大和絵(源氏物語に取材)の小襖、黒漆に螺鈿を施した床框、宝相華文を描いた仏間の格天井と花頭窓、4畳半の茶室の半月窓が見どころに挙がっている。床の間は平成27年(2015年)の改修で、木竹工芸家の川﨑鳳嶽(1937〜2016年)の監修によりしつらえられた。

見学について

奈良町にぎわいの家主屋の1階は、通り庭の土間から座敷、仏間、茶室まで、開館時間中に入館無料で見学できる。表屋の2階(厨子二階)も館内の見学先に含まれる。一方、主体部の2階の座敷は公開していない(パンフレット、公式サイト)。

撮影の可否について公式の案内は確認できなかった。開館日・開館時間と行き方は、奈良町にぎわいの家の案内にまとめてある。

Q&A

Q奈良町にぎわいの家主屋はいつ建てられましたか?
A棟札によると、大正5年(1916年)11月に起工し、大正6年(1917年)6月に上棟しました。
Q奈良町にぎわいの家主屋の「表屋造」とはどんな形ですか?
A道に面した店の棟(表屋)と奥の住まいの棟(主体部)を別に建て、その間を玄関でつなぐ町家の形式です(文化庁、パンフレット)。
Q奈良町にぎわいの家主屋を建てた大工は誰ですか?
A棟札に大匠棟梁として山賀熊吉(1868〜1949年)の名が記されています。
Q奈良町にぎわいの家主屋の2階は見学できますか?
A表屋の2階は見学先に含まれますが、奥の主体部の2階の座敷は非公開です(パンフレット)。
Q奈良町にぎわいの家主屋が登録有形文化財になったのはいつですか?
A平成29年(2017年)5月2日です(文化庁)。

基本情報

名称奈良町にぎわいの家主屋(ならまちにぎわいのいえしゅおく)
所在地奈良県奈良市中新屋町5-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成29年(2017年)5月2日登録
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積203㎡、高塀付
所有者奈良市
公開状況公開(主体部の上階の座敷は非公開)

参考文献

奈良町にぎわいの家主屋(国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011540
奈良町にぎわいの家 解説パンフレット(奈良町にぎわいの家管理共同体、奈良市教育委員会協力、令和3年(2021年))
https://naramachi-nigiwainoie.jp/wp-content/uploads/2022/02/211026nigiwai_B5_8P_kannon_fin_C.pdf
奈良町にぎわいの家 公式サイト
https://naramachi-nigiwainoie.jp/

最終更新日: 2026.10.31