15件のうち1件だけの基準
久恒家住宅奥座敷は、大分県中津市大字上宮永にある大正13年(1924年)建設の木造平屋建で、平成13年(2001年)に登録有形文化財となった。
屋敷の西寄り、客間棟の西側に建つ。平屋建でありながら、東西に通した棟に入母屋造の屋根を高く架ける。西面にはもう一段低い入母屋造の屋根を設け、北側には入母屋造の角屋が延びる。建築面積190平方メートルは、居住棟の211平方メートルに次ぐ。
久恒家住宅奥座敷が他の14件と分かれるのは、登録基準である。この棟だけが「造形の規範となっているもの」で登録された。残りは「国土の歴史的景観に寄与しているもの」が10件、「再現することが容易でないもの」が4件である。
「造形の規範」が意味するもの
登録有形文化財の基準は三つあり、そのうち「造形の規範となっているもの」は、意匠や技術の水準そのものが評価の対象になる。景観への寄与でも、再現の困難さでもなく、造形の質が問われる。久恒家住宅奥座敷はその一件である。
文化庁の解説は、近代の書院造として洗練された質の高さが随所にうかがえる、と書く。客間棟とともに京都の宮大工が手がけたと伝えられ、その伝承が仕上がりの説明として繰り返されてきた。
屋敷の中で最も格式を求められた空間がこの棟である。客間棟が接客の表なら、奥座敷はさらに奥まった座であり、そこに資材と技術が集中的に投じられた。
見どころ
久恒家住宅奥座敷の外観で読めるのは、屋根の段構えである。東西棟の入母屋造を高く上げ、西面で一段落とし、北へ角屋を出す。三つの入母屋が高さを変えて連なるため、西から見ると屋根だけで奥行きが生まれる。
角屋とは、主屋から直角に突き出した部分を指す。角屋を出せば庭に面する開口が増え、座敷から見える景色が変わる。奥座敷が北へ角屋を延ばしているのは、庭との関係を考えた結果と見てよい。
平屋でありながら棟を高く架けているのも特徴で、室内の天井高につながる。客間棟と同じ設計思想が、より大きな面積で展開されている。
なお文化庁データベースの久恒家住宅奥座敷の解説文は、この棟の位置を「奥座敷の西側に建つ」と記しており、自分自身を基準にした記述になっている。中津市の資料では客間棟との関係で説明されており、客間棟の西と読むのが自然である。
見学方法
久恒家住宅奥座敷は非公開で、内部を見る手立ては案内されていない。敷地の西寄りに位置するため、西面の裏門付近の公道からは、塀と樹木の上に屋根の一部が見える。
見学の際に注目したいのは屋根の高さの差である。塀越しであっても、高く架けた棟と一段低い西面の屋根が重なる様子は読み取れる。北西に回れば西蔵との位置関係も分かる。
撮影は公道からに限る。個人の住まいであることを踏まえ、長時間の滞留は避けたい。屋敷への行き方と見学の条件は久恒家住宅のページにまとめてある。
よくある質問
- 久恒家住宅奥座敷はなぜ他の建物と登録基準が違うのですか。
- 久恒家住宅の15件のうち、この棟だけが「造形の規範となっているもの」で登録されています。意匠と技術の水準そのものが評価されたことを意味します。
- 久恒家住宅奥座敷は見学できますか。
- 内部は非公開で、敷地にも立ち入れません。西面の公道から塀越しに屋根を見る程度にとどまります。
- 久恒家住宅奥座敷の広さはどのくらいですか。
- 建築面積190平方メートルです。久恒家住宅のなかでは居住棟の211平方メートルに次ぐ大きさになります。
- 久恒家住宅奥座敷は誰が建てたと伝わっていますか。
- 客間棟とともに京都の宮大工が手がけたと伝えられています。文献で確定した事実ではなく、伝承として記録されています。
- 久恒家住宅奥座敷の屋根はどうなっていますか。
- 東西棟の入母屋造を高く架け、西面に一段低い入母屋造の屋根を設け、北側に入母屋造の角屋が延びます。三つの屋根が高さを変えて連なります。
基本データ
| 名称 | 久恒家住宅奥座敷 |
|---|---|
| 所在地 | 大分県中津市大字上宮永3-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成13年(2001年)8月28日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦一部銅板葺、建築面積190平方メートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 非公開。公道からの外観見学のみ |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 久恒家住宅奥座敷(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002329
- 中津市の文化財について(中津市)
- https://www.city-nakatsu.jp/doc/2024101700025/
- 国指定・選定等文化財一覧(大分県)
- https://www.pref.oita.jp/kyoiku/tmp/bunka/post-101/1.pdf
最終更新日: 2026.09.14