屋敷の北西隅を占める巨大な蔵
久恒家住宅米蔵は、大分県中津市大字上宮永にある大正13年(1924年)建設の煉瓦造平屋建で、平成13年(2001年)に登録有形文化財となった。建築面積は175平方メートルある。
屋敷の北西隅に建つ。東西に棟を通した細長い建物で、屋根は切妻造に桟瓦葺。南面には吹放しの庇が設けられている。吹放しとは壁を立てずに柱だけで庇を受ける形で、荷を扱う場所として使われたと考えられる。
蔵としての規模は屋敷の中で突出している。東蔵が32平方メートル、西蔵が37平方メートルであるのに対し、久恒家住宅米蔵は175平方メートル。3棟の蔵の面積を合わせても、その7割以上をこの1棟が占める。
登録が評価した点
久恒家住宅米蔵の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。煉瓦造でありながら、東蔵や西蔵のような「再現することが容易でないもの」ではなく、景観の側で評価された。
文化庁の解説は、豪壮な屋敷に相応しい巨大な蔵であり、地域の景観のシンボルとなっていると記す。屋敷の北西隅という位置は、周囲の田畑から見たときに最も目立つ角にあたる。建物の大きさが、そのまま遠景の中での存在感になっている。
米蔵という名が示すとおり、収めたのは米である。炭鉱経営で知られる久恒家だが、これだけの米蔵を必要とする農地との関わりもあった。屋敷の経済の幅がこの一棟に表れている。
見どころ
久恒家住宅米蔵の見どころは小屋組にある。キングポストトラスが使われている。屋根の荷重を三角形の組に集約する洋式の構法で、中央に立つ束が棟を吊る形になる。日本の伝統的な和小屋が束を立てて桁を重ねるのに対し、トラスは部材を引っ張りと圧縮に分けて働かせる。梁間を大きく飛ばせるため、柱のない広い床がつくれる。
175平方メートルの床を柱で分断せずに使えるのは、この構法のおかげである。大正期の地方の蔵に洋式トラスが入っている点は、施工者が近代の技術を扱えたことを示す。
開口部にも特徴がある。東・北・西の各面に高窓が並び、いずれも鉄格子が入る。高い位置に窓を取れば、外から中が見えず、荷を積んでも塞がれない。鉄格子は防犯である。収蔵物を守るための工夫が、開口の位置と造りの両方に及んでいる。
外壁はモルタル塗で、煉瓦は見えない。東蔵・西蔵と同じ方針である。
見学方法
久恒家住宅米蔵は屋敷の北西隅にあるため、15件のうちでは比較的見やすい部類に入る。北側または西側の公道から、北塀の向こうに切妻の屋根と壁面の上部が見える。
ただし内部は非公開である。キングポストトラスの小屋組や広い床を見る手立ては案内されていない。敷地に立ち入ることもできない。
高窓と鉄格子は、塀の高さによっては外から確認できる場合がある。北面と西面に並ぶ開口を探すとよい。
撮影は公道からに限る。屋敷への行き方と見学の条件は、久恒家住宅のページにまとめてある。
よくある質問
- 久恒家住宅米蔵はどのくらいの大きさですか。
- 建築面積175平方メートルです。東蔵の32平方メートル、西蔵の37平方メートルと比べて突出して大きく、屋敷の蔵3棟のなかで最大です。
- 久恒家住宅米蔵の小屋組はどうなっていますか。
- キングポストトラスが使われています。洋式の構法で、梁間を大きく飛ばせるため柱のない広い床がつくれます。
- 久恒家住宅米蔵の窓はどうなっていますか。
- 東・北・西の各面に高窓が並び、いずれも鉄格子が入っています。高い位置に開口を取ることで採光と防犯を両立させています。
- 久恒家住宅米蔵はどこにありますか。
- 屋敷の北西隅です。東西に棟を通した細長い建物で、南面には吹放しの庇が付きます。
- 久恒家住宅米蔵は見学できますか。
- 外観は北側または西側の公道から、北塀越しに屋根と壁の上部が見えます。内部は非公開で立ち入れません。
基本データ
| 名称 | 久恒家住宅米蔵 |
|---|---|
| 所在地 | 大分県中津市大字上宮永3-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成13年(2001年)8月28日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 煉瓦造平屋建、瓦葺、建築面積175平方メートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 非公開。公道からの外観見学のみ |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 久恒家住宅米蔵(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002334
- 中津市の文化財について(中津市)
- https://www.city-nakatsu.jp/doc/2024101700025/
- 国指定・選定等文化財一覧(大分県)
- https://www.pref.oita.jp/kyoiku/tmp/bunka/post-101/1.pdf
最終更新日: 2026.09.14