屋敷の北西隅を画す煉瓦塀

久恒家住宅北塀は、大分県中津市大字上宮永にある大正13年(1924年)建設の煉瓦塀で、平成13年(2001年)に登録有形文化財となった。

裏門の北端から北へ延び、そこで東に折れて米蔵の東端まで達する。屋敷の北西隅を直角に囲む形になる。塀が単独で登録有形文化財になる例はさほど多くないが、久恒家住宅では北塀と南塀の2件が登録されている。

延長については資料の記載が一致しない。文化庁データベースの構造欄は延長53メートルとするが、同じページの解説文は総延長約37メートルと記す。中津市教育委員会が公表する文化財一覧も総延長約37メートルを採り、解説文と一致する。本記事の基本データには登録原簿の記載にあたる構造欄の53メートルを載せ、両方の数値を併記しておく。

登録が評価した点

久恒家住宅北塀の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は、屋敷構に欠かせない存在と記す。

屋敷構とは、屋敷とそれを囲む塀や門をひとまとまりとして捉える見方である。建物だけを取り出しても屋敷にはならず、囲いがあってはじめて内と外が分かれる。久恒家住宅では建物9棟に対して門3件と塀2件が登録されており、囲いの側にも同じ重みが置かれた。

久恒家住宅北塀は、外から見えるという点で特に効いている。屋敷の北西隅は周囲の田畑に向いた角で、遠くからでも煉瓦の長い面が視界に入る。

見どころ

久恒家住宅北塀で最も見どころになるのは基礎である。御影石の切石を積み、その仕上げに瘤出しを用いている。瘤出しとは、石の表面の中央部を粗く突出させたまま残し、縁だけを平らに整える仕上げで、石に陰影と量感が出る。西洋の石造建築でよく使われた手法である。

その上に横長の地覆石を廻す。地覆石は塀の足元を一周する水平材で、煉瓦の壁体と地面を切り分ける役割を持つ。粗い瘤出しの基礎、平滑な地覆石、そして煉瓦という順に質感が変わっていく。

煉瓦の積み方はイギリス積。上部は笠石で覆う。笠石は雨水を煉瓦の目地に入れないための仕上げで、これがあるかどうかで塀の寿命が変わる。

南塀との違いも見ておきたい。南塀の基礎は御影石の切石積とだけ記され、瘤出しには触れられていない。北塀のほうが石の仕上げに手をかけている可能性がある。長さは南塀が上回るが、石工事の密度では北塀に分がある。

見学方法

久恒家住宅北塀は、15件のうちで最も見学しやすい一件である。公道に面して長く続くため、全体の姿を外から追うことができる。裏門の北側から歩き始め、角を東に曲がって米蔵の東端まで塀に沿って進めば、基礎から笠石までを連続して観察できる。

基礎の瘤出し仕上げは、低い位置にあるため近づけば細部まで見える。石の突出の度合いや縁の取り方は、光が斜めから当たる朝夕のほうがよく分かる。

塀の向こうは個人の敷地である。塀に登る、上から中をのぞくといった行為は当然できない。塀そのものを見る分には、公道に立つだけで十分に足りる。

撮影は公道からに限る。屋敷への行き方と見学の条件は、久恒家住宅のページにまとめてある。

よくある質問

Q久恒家住宅北塀はどこからどこまで続いていますか。
A裏門の北端から北へ延び、東に折れて米蔵の東端まで続きます。屋敷の北西隅を直角に囲む形です。
Q久恒家住宅北塀の長さはどのくらいですか。
A文化庁データベースの構造欄は延長53メートルとしますが、同じページの解説文と中津市教育委員会の文化財一覧はいずれも総延長約37メートルと記しています。
Q久恒家住宅北塀の基礎はどうなっていますか。
A御影石の切石積で、表面を瘤出し仕上げとしています。その上に横長の地覆石を廻し、煉瓦はイギリス積、上部を笠石で覆っています。
Q久恒家住宅北塀と南塀はどう違いますか。
A基礎の仕上げが異なります。北塀は瘤出し仕上げと記録されていますが、南塀は切石積とのみ記されています。長さは南塀のほうが長くなります。
Q久恒家住宅北塀は見学できますか。
A公道に面して長く続くため、15件のうちで最も見やすい一件です。基礎の石の仕上げまで近くから観察できます。

基本データ

名称久恒家住宅北塀
所在地大分県中津市大字上宮永3-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成13年(2001年)8月28日登録
員数1棟
寸法煉瓦造、延長53メートル
所有者個人
公開状況非公開。公道からの外観見学のみ

参考文献

国指定文化財等データベース 久恒家住宅北塀(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002340
中津市の文化財について(中津市)
https://www.city-nakatsu.jp/doc/2024101700025/
国指定・選定等文化財一覧(大分県)
https://www.pref.oita.jp/kyoiku/tmp/bunka/post-101/1.pdf
国・県・市指定文化財一覧 令和6年(2024年)8月1日現在(中津市教育委員会 歴史博物館)
https://www.city-nakatsu.jp/doc/2024101700025/file_contents/shiteibunkazai.pdf

最終更新日: 2026.09.14