接客と教育のために組まれた3棟の住まい

中野家住宅主屋は、佐賀県藤津郡太良町伊福にある明治42年(1909年)建築の住宅で、大正期(1912〜1926年)に増築され、平成29年(2017年)5月2日に国の登録有形文化財に登録された。木造2階一部平屋建、瓦葺で、建築面積は462平方メートルある。

中野家住宅主屋は1つの建物ではなく、主屋棟・座敷棟・納戸棟の3棟を、1間幅の廊下で結んだ構成をとる。棟ごとに役割を分け、それを廊下でつなぐ住まい方である。

中野家住宅の登録6件のうち、建物は中野家住宅主屋だけで、ほかは門柱・石垣と給水の設備である。

登録の理由

中野家住宅主屋の登録基準は「造形の規範となっているもの」。同じ屋敷のほかの5件が景観への寄与で登録されたのに対し、主屋だけは造形そのものが評価の対象になっている。

文化庁の解説が挙げる要点は3つある。1つ目は主屋棟の式台玄関で、虹梁や蟇股を用いて意匠を凝らしている。2つ目は座敷棟で、椅子に座ることに合わせてトコ(床の間)を腰の高さに設けた座敷と、伝統的な座敷の両方を配している。3つ目は全体の平面で、接客や教育活動に使うための工夫が見られ、住宅の近代的な展開を示している。

腰高のトコは、畳に座って見上げる高さではなく、椅子に腰掛けた目の高さに合わせたものである。和室の形式の中に椅子の暮らしを取り込もうとした、明治末から大正の住宅らしい工夫といえる。

中野万亀が使った家

佐賀大学の案内によると、この家では中野万亀(なかのまき、1872〜1949年)が、女性のための夜学会や「中野家庭寮」を開き、農繁期には託児所も設けた。万亀は佐賀県立師範学校女性部を卒業し、県内で初めての女性の正教員の一人となった人物である。

文化庁が主屋の平面に見る「教育活動のための工夫」は、こうした使われ方と重なる。式台玄関で客を迎え、座敷棟で人を集める。中野家住宅主屋は、家族の住まいであると同時に、地域の学びの場でもあった。

見学方法

中野家住宅主屋は中野家が受け継ぐ個人の住宅で、一般には公開されていない。敷地に立ち入ることはできず、式台玄関や座敷の内部を見る機会は、所有者の協力による特別な催しに限られる。令和7年(2025年)2月には佐賀大学などの主催で見学会が開かれた。

近くを通る場合は公道から眺めるにとどめ、住まいの妨げにならないよう配慮したい。撮影についての定めは公表されていない。屋敷全体の成り立ちは中野家住宅のページにまとめてある。

Q&A

Q中野家住宅主屋はいつ建てられましたか?
A明治42年(1909年)の建築で、大正期(1912〜1926年)に増築されています。平成29年(2017年)5月2日に国の登録有形文化財に登録されました。
Q中野家住宅主屋はどのような構成ですか?
A主屋棟・座敷棟・納戸棟の3棟を1間幅の廊下で結んでいます。木造2階一部平屋建、瓦葺で、建築面積は462平方メートルです。
Q中野家住宅主屋の見どころは何ですか?
A虹梁や蟇股で飾った式台玄関と、椅子に座る人に合わせてトコを腰の高さに設けた座敷です。座敷棟には伝統的な座敷もあり、両者が並んでいます。
Q中野家住宅主屋は見学できますか?
A個人の住宅のため一般公開されていません。内部を見られるのは、所有者の協力による見学会などの機会に限られます。
Q中野家住宅主屋と中野万亀にはどんな関係がありますか?
A教育者の中野万亀がこの家で女性のための夜学会や中野家庭寮を開きました。文化庁も主屋の平面に教育活動のための工夫があると評価しています。

基本情報

名称中野家住宅主屋(なかのけじゅうたくしゅおく)
所在地佐賀県藤津郡太良町大字伊福字椎木坂甲1978
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号41-0099
指定年平成29年(2017年)5月2日登録
員数1棟
寸法木造2階一部平屋建、瓦葺、建築面積462平方メートル。主屋棟・座敷棟・納戸棟を1間幅の廊下で結ぶ
所有者文化庁データベースに記載なし(中野家が継承する個人の住宅)
公開状況個人の住宅で非公開。敷地内への立ち入り不可

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):中野家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011596
文化遺産オンライン:中野家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/222607
佐賀大学:現地見学・講演会「中野家住宅と中野万亀」の開催
https://www.saga-u.ac.jp/koho/event/2025012736015
佐賀大学:「中野家住宅と中野万亀」案内(PDF)
https://www.saga-u.ac.jp/koho/wp-content/uploads/2025/01/nakanoke.pdf

最終更新日: 2026.09.25