松樹館カワトとは

松樹館カワトは、滋賀県東近江市五個荘竜田町にある大正前期築造の洗い場で、令和3年(2021年)2月4日に登録有形文化財となった。石造、面積8.0平方メートル。敷地北辺の通り沿いに位置する。

建屋はない。屋根も柱もなく、石だけで組まれている。松樹館の13件のうち、これだけが建物の形をしていない登録有形文化財である。

水路に下りる石段

カワトは、五個荘一帯で家々が水路の水を使うために設けた洗い場を指す土地の言葉である。松樹館カワトは、通りに並行して流れる川に面し、花崗岩の切石で四方を囲み、水面へ下りる石段を設ける。川に対して取水口と排水口をもち、水を引き込んで溜め、使い終えた水を戻す。

単に川端に下りるのではなく、区画された水面を屋敷側に確保しているのがカワトの特徴である。流れの速さに左右されず、一定の水位で野菜を洗い、器をすすぐことができる。上水が引かれる前、集落の暮らしは水路との距離で決まっていた。松樹館カワトは、その関係を石で固定した設備である。

文化庁の登録解説は、松樹館カワトを「広大な敷地をもつ近江商人の本宅における構成要素の一つ」と位置づける。五個荘の集落景観は、今も水路とカワトを含めて評価されている。屋敷の格を示す表門と、日々の水を扱うカワトが、同じ北辺に並んでいる。

見どころ

石段の段数と幅を見てほしい。人が桶を持って下りることを前提にした寸法で、一段の蹴上げは低く抑えられている。滑らないよう表面に細かいノミ跡が残る石もある。

取水口と排水口の位置関係も確かめたい。二つが同じ側にあれば水は淀む。松樹館カワトは川の流れに対して入口と出口を分けて設けており、水が滞らないようになっている。

面積8.0平方メートルという数字は小さく見えるが、実際に立つと石囲いの内側は思ったより広い。屋敷の他の13件が屋根を持つのに対し、ここだけは空が開けている。

見学方法

松樹館カワトは敷地北辺の通り沿いにあるため、表門及び塀とともに、公開日でなくても通りから位置を確かめることができる。ただし石囲いの内側や石段は敷地側に属するので、近づいて見るにはマーチャントミュージアム教林坊別院の公開日に入る必要がある。公開は春と秋の土日祝日のみ。

撮影は可能である。水面と石段を一緒に写すには、正面より斜め上から見下ろす角度がよい。屋敷への行き方と入館料は松樹館のページにまとめている。

Q&A

Q松樹館カワトとは何ですか?
A水路の水を使うための洗い場です。カワトは五個荘一帯で用いられる土地の呼び名で、花崗岩の切石で囲み、水面へ下りる石段を設けています。
Q松樹館カワトに建物はありますか?
Aありません。屋根も柱もなく、石造だけで構成されています。松樹館の13件のなかで唯一、建物の形をとらない登録有形文化財です。
Q松樹館カワトはいつ造られましたか?
A大正前期です。表門及び塀の大正7年(1918年)と近い時期にあたります。
Q松樹館カワトはどのように水を使っていたのですか?
A川に対して取水口と排水口を設け、水を引き込んで石囲いの内側に溜め、使い終えた水を川へ戻す仕組みです。水位が安定するので洗い物に向きます。
Q松樹館カワトは通りから見られますか?
A通り沿いにあるため位置は外から確かめられます。石段のそばまで近づくには、公開日に敷地へ入る必要があります。

基本データ

名称松樹館カワト
所在地滋賀県東近江市五個荘竜田町字元屋敷396-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和3年(2021年)2月4日登録
員数1棟
寸法面積8.0平方メートル
所有者個人(文化庁データベースでは非公開)
公開状況春と秋の期間限定公開(マーチャントミュージアム教林坊別院)

参考文献

国指定文化財等データベース 松樹館カワト(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013581
教林坊別院 近江豪商(マーチャント)ミュージアム(教林坊公式サイト)
https://kyourinbo.jimdofree.com/ホーム/教林坊別院-マーチャントミュージアム/

最終更新日: 2026.09.13