松樹館文庫蔵とは

松樹館文庫蔵は、滋賀県東近江市五個荘竜田町にある文政12年(1829年)建立の土蔵造で、令和3年(2021年)2月4日に登録有形文化財となった。土蔵造2階建、瓦葺、建築面積53平方メートル。松樹館主屋の南東側に建つ。

敷地に残る五棟の蔵のなかで最も大きく、年紀のはっきりしている点でも際立つ。桁行四間半、梁間二間半、南北棟の切妻造で、屋根は桟瓦葺の置屋根とする。

置屋根という二重構造

置屋根は、土蔵の本体の上に別の小屋組を載せ、その上に瓦を葺く方式である。土蔵は壁も屋根下地も厚い土で塗り固めるため、雨に濡れれば傷む。そこで本来の屋根の上にもう一枚の屋根を「置く」。松樹館文庫蔵の屋根が浅い庇のように見えるのは、この二重構造による。

外壁は漆喰塗で、上部に鉢巻を廻す。鉢巻は壁の上端に一段太く塗り出した帯で、雨水を壁面から離す役目をもつ。戸口には漆喰塗の両開土戸を建てる。厚い土の扉を左右に開く形式で、閉めれば火も水も通しにくい。

文庫蔵は書物や文書を納める蔵である。米や道具と違い、紙は湿気と火に弱い。文化庁の登録解説が松樹館文庫蔵の内部を「丁寧に製材した簡素な造り」と記すのは、装飾を省いた代わりに材の精度を上げているという意味に読める。文政12年という建立年は、松樹館の五棟の蔵のなかで二番目に古い。

見どころ

屋根と壁の取り合いを見上げてほしい。置屋根は本体の土壁との間にわずかな隙間をもつ。真横から見ると、瓦の下に影の線が一本走る。

鉢巻の高さも確かめたい。松樹館文庫蔵の鉢巻は壁面から明確に張り出しており、雨だれの跡が壁に届いていない。二百年近く漆喰が保たれてきた理由の一つがここにある。

正面に回って土戸を見る。両開きの扉は閉じたときに合わせ目が段になるよう成形されている。この段が煙と水の通り道を断つ。松樹館文庫蔵の扉は、装飾ではなく機能で作られている。

見学方法

松樹館文庫蔵は主屋の南東に建つため、庭を回る動線の途中で外観を間近に見ることができる。内部を開けるかどうかは公開時の運用によるので、マーチャントミュージアム教林坊別院の公開日に現地で確かめてほしい。公開は春と秋の土日祝日に限られる。

撮影は可能である。外観は南蔵と並ぶ角度から撮ると、桁行四間半という長さが隣と比べて分かる。屋敷への行き方と入館料は松樹館のページを参照してほしい。

Q&A

Q松樹館文庫蔵はいつ建てられましたか?
A文政12年(1829年)です。松樹館の五棟の蔵のなかでは、寛政12年(1800年)の北蔵に次いで古い建物です。
Q松樹館文庫蔵の置屋根とは何ですか?
A土蔵の本体の上に別の小屋組を載せ、その上に瓦を葺く二重の屋根です。厚い土壁と土の屋根下地を雨から守るための方式です。
Q松樹館文庫蔵はどのくらいの大きさですか?
A建築面積53平方メートル、桁行四間半、梁間二間半です。敷地内の五棟の蔵のなかで最大です。
Q松樹館文庫蔵の鉢巻はどのような役割をもちますか?
A外壁上部に一段太く塗り出した帯で、雨水を壁面から離すために設けられます。漆喰壁の劣化を防ぐ工夫です。
Q松樹館文庫蔵の内部は公開されていますか?
A公開日の運用によります。外観は庭を回る動線から間近に見られますので、内部の可否は当日現地でご確認ください。

基本データ

名称松樹館文庫蔵
所在地滋賀県東近江市五個荘竜田町字元屋敷396-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和3年(2021年)2月4日登録
員数1棟
寸法建築面積53平方メートル
所有者個人(文化庁データベースでは非公開)
公開状況春と秋の期間限定公開(マーチャントミュージアム教林坊別院)

参考文献

国指定文化財等データベース 松樹館文庫蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013574
教林坊別院 近江豪商(マーチャント)ミュージアム(教林坊公式サイト)
https://kyourinbo.jimdofree.com/ホーム/教林坊別院-マーチャントミュージアム/

最終更新日: 2026.09.13