松樹館新建とは

松樹館新建は、滋賀県東近江市五個荘竜田町にある明治6年(1873年)建立の座敷棟で、令和3年(2021年)2月4日に登録有形文化財となった。木造2階一部平屋建、瓦葺、建築面積83平方メートル。松樹館主屋の東側に接続し、大正前期に改修を受けている。

「新建」はしんだちと読む。松樹館の13棟のうち、この棟だけが「造形の規範となっているもの」を登録基準として登録された。ほかの12棟が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」であるのに対し、松樹館新建は意匠そのものが評価されている。

宮家を迎えるための座敷

松樹館新建の中心はジョウダンノマである。主屋の床より一段高くつくり、襖戸を建て、意匠を凝らした欄間を設け、床の間と双折戸付の仏壇を備える。床を上げるのは、そこに座る人と他の人の格を分けるための仕掛けで、近世以来の書院の作法にのっとっている。

文化庁の登録解説は、松樹館新建の二階建てが段階的な増築の結果であること、そして大正13年(1924年)の久邇宮家の御成りの儀に向けて整えられたとされることを記す。明治6年に建った棟が、50年後に宮家を迎える座敷として作り替えられた。格式ある内部空間という評価は、その経緯を踏まえたものである。

近江商人の本宅に上段の間が要る理由は、商いの規模だけでは説明がつかない。郷里に構えた本宅は、家格を示す場所でもあった。松樹館新建は、その要請が近代に入ってなお働いていたことを示す遺構である。

見どころ

欄間を見上げたい。登録解説がわざわざ「意匠を凝らした」と書くのはこの棟の欄間だけである。襖の上、鴨居と天井の間という限られた高さに彫りや透かしを収める仕事で、座って見上げたときに最も効く位置に据えられている。

床の高さの変化も追いたい。主屋から松樹館新建へ移ると床が一段上がる。段差そのものは数寸だが、視線の高さが変わるので、同じ庭を見ても見え方が違う。

外からは二階の存在が目を引く。松樹館は平屋の主屋と平屋の付属屋が続く屋敷で、二階建は松樹館新建と五棟の蔵しかない。座敷棟で二階を持つのはこの一棟だけである。

見学方法

松樹館新建の内部は、マーチャントミュージアム教林坊別院の公開期間中に見ることができる。上段の間と御座所は公開の目玉として案内されており、東近江市観光協会は国産最古とされる水洗便器が屋敷内に残ることも紹介している。公開は春と秋の土日祝日に限られる。

撮影は可能である。主屋との接続部を含めて撮ると、平屋から二階建へ切り替わる屋根の重なりが分かる。屋敷全体への行き方と入館料は松樹館のページを参照してほしい。

Q&A

Q松樹館新建は何と読みますか?
A「しょうじゅかんしんだち」です。文化庁のふりがな欄にもそう記載されています。
Q松樹館新建はいつ建てられましたか?
A明治6年(1873年)です。その後、大正前期に改修されています。
Q松樹館新建だけ登録の基準が違うのはなぜですか?
Aこの棟は「造形の規範となっているもの」として登録有形文化財になりました。上段の間と欄間を中心とする内部意匠が評価されたためです。
Q松樹館新建に宮家が宿泊したというのは本当ですか?
A文化庁の登録解説は、大正13年(1924年)の久邇宮家の御成りの儀に向けて内部を整えたとされる、と記しています。
Q松樹館新建の上段の間は見学できますか?
A公開期間中は見学できます。公開は春と秋の土日祝日に限られるため、事前に日程を確かめてください。

基本データ

名称松樹館新建
所在地滋賀県東近江市五個荘竜田町字元屋敷396-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和3年(2021年)2月4日登録
員数1棟
寸法建築面積83平方メートル
所有者個人(文化庁データベースでは非公開)
公開状況春と秋の期間限定公開(マーチャントミュージアム教林坊別院)

参考文献

国指定文化財等データベース 松樹館新建(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013570
マーチャントミュージアム(教林坊別院)がオープンしました!(東近江市観光協会)
https://www.higashiomi.net/media/news/a498
教林坊別院 近江豪商(マーチャント)ミュージアム(教林坊公式サイト)
https://kyourinbo.jimdofree.com/ホーム/教林坊別院-マーチャントミュージアム/

最終更新日: 2026.09.13