松樹館廊下座敷とは
松樹館廊下座敷は、滋賀県東近江市五個荘竜田町にある大正前期建立の座敷棟で、令和3年(2021年)2月4日に登録有形文化財となった。木造平屋建、瓦葺、建築面積15平方メートル。松樹館の13棟のうち最も小さい建物である。
名の示すとおり、この棟は廊下でもあり座敷でもある。松樹館主屋の南側に建ち、東で新建に接続し、南で南蔵に通じる。八畳の座敷が、二つの棟をつなぐ通路を兼ねている。
通路に座敷の格を与える
通路は本来、通り抜けるための場所である。松樹館廊下座敷はそこに座敷の作法を持ち込んだ。南西の隅には釣床を設ける。釣床は床柱と床框を省き、小壁から釣り下げた形の簡略な床の間で、狭い場所に床を構えるための工夫である。その横に鼓形の下地窓を開ける。
下地窓は壁の下地の竹小舞をそのまま見せる窓で、茶室で好まれた手法である。鼓形という輪郭は、丸窓や角窓よりも作るのが難しい。中庭に面する西面には切目縁の濡縁を廻し、ガラス障子を建て、小壁に欄間を設ける。文化庁の登録解説はこの棟を「庭との関係を重視した数寄屋風の造り」と評する。
15平方メートルという面積に、釣床、下地窓、濡縁、欄間が収まっている。松樹館廊下座敷は、通り道に手を掛けることで屋敷全体の質を保った建物と読める。近江商人の本宅では、格式ばった座敷とこうした小間が同じ敷地に共存する。
見どころ
鼓形の下地窓を正面から見たい。左右がくびれ、上下が広がる輪郭は、竹小舞の格子が斜めに交わる密度と合わさって、光の抜け方が独特になる。時刻によって床に落ちる影の形が変わる。
濡縁に注目すると、板の木口を揃えて縁の外側に見せる切目縁の納まりが分かる。榑縁のように板を長手方向に並べるのとは見え方が違う。
そして通り抜けてみる。北の新建から入り、松樹館廊下座敷の八畳を通り、南の南蔵へ出る。座敷に座って庭を見る使い方と、蔵へ荷を運ぶ通路としての使い方が、同じ床の上で重なっている。
見学方法
松樹館廊下座敷はマーチャントミュージアム教林坊別院の公開期間中、主屋から新建を経て通る動線の上にある。単独の見学はできない。公開は春と秋の土日祝日に限られ、教林坊の公式サイトが日程を告知している。
撮影は可能である。中庭側のガラス障子を開けた状態なら濡縁と庭が一枚に収まる。屋敷への行き方と入館料は松樹館のページを参照してほしい。
Q&A
- 松樹館廊下座敷はどのような建物ですか?
- 八畳の座敷でありながら、北の新建と南の南蔵をつなぐ通路を兼ねる建物です。建築面積15平方メートルで、松樹館の13棟では最小です。
- 松樹館廊下座敷はいつ建てられましたか?
- 大正前期です。文化庁のデータベースには年代として大正前期とのみ記載されています。
- 松樹館廊下座敷の釣床とは何ですか?
- 床柱と床框を省き、小壁から釣り下げるように構えた簡略な床の間です。狭い座敷に床を設けるための手法で、この棟では南西隅に置かれています。
- 松樹館廊下座敷の下地窓はどこにありますか?
- 釣床の横に開けられています。鼓形の輪郭をもち、壁の下地の竹小舞をそのまま見せる形式です。
- 松樹館廊下座敷は数寄屋建築ですか?
- 文化庁の登録解説は「庭との関係を重視した数寄屋風の造り」と記しています。茶室の手法を取り入れた造りという評価です。
基本データ
| 名称 | 松樹館廊下座敷 |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県東近江市五個荘竜田町字元屋敷396-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 令和3年(2021年)2月4日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積15平方メートル |
| 所有者 | 個人(文化庁データベースでは非公開) |
| 公開状況 | 春と秋の期間限定公開(マーチャントミュージアム教林坊別院) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 松樹館廊下座敷(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013573
- 教林坊別院 近江豪商(マーチャント)ミュージアム(教林坊公式サイト)
- https://kyourinbo.jimdofree.com/ホーム/教林坊別院-マーチャントミュージアム/
最終更新日: 2026.09.13