洋館に接続する和館

旧梅津歯科医院住居棟は、山形県上山市十日町にある昭和2年(1927年)建築の木造2階建和館で、令和4年(2022年)2月17日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は06-0198。

建築面積115平方メートル。同じ敷地の5棟のなかで最も大きい。同年に建てられた診療棟洋館の西側に接続して建ち、屋根は入母屋造の鉄板葺で、棟に鬼板を飾る。

洋館と和館を別棟として並べ、接続して使う構成を、建築史では和洋並列型と呼ぶ。一棟のなかで両様式を混ぜるのではなく、職業上の空間と家庭の空間をそれぞれの様式で建て分ける。上山の梅津家の屋敷は、その地方における明快な実例であり、しかも附属の蔵まで揃って残っている。

一階と二階で格が変わる

一階は南面する玄関、台所、そして日常的な用途にあてた続き座敷からなる。続き座敷は襖や障子で仕切られた座敷を連ねたもので、必要に応じて開け放して一室にまとめ、また閉じて別室に戻せる。日本の住宅が長く使ってきた仕組みである。

二階も続き座敷だが、仕上げが変わる。天井は格天井。角材を格子に組んで格間を作る形式で、これが入るだけで部屋の格式が一段上がる。文化庁の解説は、二階を眺望の効く開放的な造りと記す。上山は東に蔵王連峰を望む盆地にあり、山形県が選定した景観ビューポイントにも上山城天守から見る市街地と蔵王連峰が挙げられている。ただし住居棟の二階がどの方向の眺めを取り込む意図であったかは、公表資料には記されていない。

この二階が接客の場だった。とすれば一階は家族の生活の場で、階段が両者の境目になる。同規模の和風住宅では、玄関脇の一階に上等な座敷を置く例が多い。それを二階へ上げたのは、採光と眺望を優先した判断で、客として通される側の体験も当然変わってくる。

座敷蔵との対照という読み方

文化庁の解説は住居棟二階を「座敷蔵と好対照な接客空間」と表現している。これは追いかける価値のある指摘だ。

同じ庭に建つ座敷蔵は5年早い大正11年(1922年)の建築で、こちらにも仏間と床付座敷という上等な部屋が入る。ただし厚い壁の内側にあり、頭上には太い牛梁が渡る。暗く、囲われ、重い。住居棟の二階はほぼ全ての点でその逆にあたる。外に開き、光の側へ持ち上げられている。

両方を持つ家は、客に出せる部屋を二種類持っていたことになる。用向きや季節で選べたはずだ。二棟を突き合わせて読むと、片方だけを見るより家の暮らしがはっきりする。5棟がまとめて登録されたのも、この関係を含めて評価されたからだろう。

なお登録有形文化財は、重要文化財の指定より規制の軽い制度である。平成8年(1996年)に創設され、現状変更は許可ではなく届出でよい。使い続けている建物、住み続けている建物を保存の枠に入れるための設計といえる。住居棟の登録基準は「造形の規範となっているもの」で、診療棟と座敷蔵も同じ。敷地背面の穀物蔵と味噌蔵は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されている。

訪ねるときに

現に個人が所有する住宅であり、内部は公開されていない。入館料や公開時間はなく、上山市が公表する見学可能な文化財建造物の一覧にも入っていない。格天井を見たいという動機で出向いても中には入れない。

見られるのは公道からの外観である。JRかみのやま温泉駅から徒歩5分ほど。山形駅からは奥羽本線の普通列車で20分前後。公道からの撮影は差し支えないが、敷地に立ち入ることや住人の生活を写すことは控えたい。

同種の和風住宅の内部を見たい場合は、北へ歩いてすぐの仲丁通りにある武家屋敷が選択肢になる。三輪家は内部が公開され、隣接する3軒は庭先まで無料で見学できる。市内の登録有形文化財では蟹仙洞が展示館と旧長谷川家住宅からなる博物館として開いている。上山城の再建天守にある郷土資料館とあわせれば、旧城下町で半日は歩ける。

Q&A

Q旧梅津歯科医院住居棟は内部を見学できますか。
Aできません。個人所有の住宅として使われており、入館料や公開時間の設定もありません。上山市の見学可能な文化財建造物の一覧にも含まれていません。外観は公道から見ることができます。
Q旧梅津歯科医院住居棟と診療棟はどういう関係にありますか。
Aどちらも昭和2年(1927年)の建築で、和館の住居棟が洋館の診療棟の西側に接続しています。職業の空間と家庭の空間を様式で建て分ける和洋並列型の構成です。
Q旧梅津歯科医院住居棟の二階はどのような部屋ですか。
A格天井の続き座敷で、眺望の効く開放的な造りとし、接客の場として使われました。文化庁の解説は、同じ庭にある閉じた造りの座敷蔵と好対照であると指摘しています。
Q旧梅津歯科医院住居棟の規模はどれくらいですか。
A木造2階建で建築面積115平方メートル、敷地内の登録5棟のうち最大です。屋根は入母屋造の鉄板葺で、棟に鬼板を飾ります。
Q旧梅津歯科医院住居棟の最寄り駅からの所要時間を教えてください。
AJRかみのやま温泉駅から徒歩約5分です。所在地は上山市十日町941で、山形駅からは奥羽本線の普通列車で20分前後になります。

基本情報

名称旧梅津歯科医院住居棟(きゅううめつしかいいんじゅうきょとう)
所在地山形県上山市十日町941
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号06-0198/登録基準「造形の規範となっているもの」
指定年令和4年(2022年)2月17日
員数1棟
寸法木造2階建、鉄板葺、建築面積115平方メートル
所有者個人
公開状況非公開(外観は公道から見学可)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「旧梅津歯科医院住居棟」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014130
文化遺産オンライン「旧梅津歯科医院住居棟」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/592500
上山市「国登録有形文化財(100から104、109)」
https://www.city.kaminoyama.yamagata.jp/soshiki/25/km202000714.html
上山市「市内見学可能施設(文化財建造物)」
https://www.city.kaminoyama.yamagata.jp/soshiki/25/bunka-shisetsu.html

最終更新日: 2026.07.30