神戸の異人館が犬山に建つまで
明治村神戸山手西洋人住居主屋は、愛知県犬山市の博物館明治村に建つ明治中期の木造住宅で、2003年(平成15年)に登録有形文化財となった。神戸の山手、旧生田区山本通に建てられた、いわゆる異人館の一棟である。
文化庁の記録は建設年代を明治20年代、西暦では1887年から1896年の間としている。明治村の説明は1887年(明治20年)頃とする。創建時は外国人の住まいだったが、1896年(明治29年)に日本人の増田周助の所有となり、その後ふたたび外国人の手に渡って、フランス人の貿易商フェルナン・ブルムが暮らした。
この住居は1966年(昭和41年)に解体され、1969年(昭和44年)に博物館明治村の3丁目32番地へ移された。神戸を離れて半世紀以上、犬山の丘の上に建っている。
構造は木造2階建、瓦葺で、建築面積は73平方メートル。屋根は寄棟造の桟瓦葺である。同じ敷地には別に登録された付属屋が建ち、2階の渡廊下で主屋とつながっている。この記事が扱うのは主屋のほうで、付属屋は建築面積36平方メートルの別の1棟として登録されている。
ヴェランダ・コロニアルという型
明治村神戸山手西洋人住居主屋の登録は、登録有形文化財の登録基準のうち「造形の規範となっているもの」に拠る。文化庁の解説はこの建物をヴェランダ・コロニアル住宅の好例と評価している。
ヴェランダ・コロニアルは、西洋の住宅がインドや東南アジアの気候に合わせて外周に深い縁側を回した形式で、開港地の外国人住宅を通じて日本にも入った。屋根は日本の瓦、軸組も日本の大工の手による一方、平面と立面は西洋のもの。両者が混ざり合う様子がそのまま形に出ている。
この主屋では、正面と片側面に折り返すかたちのヴェランダを1階と2階の両方に設けている。内部は上下階とも中廊下式で、階段のある廊下の両側に1室ずつを配する。部屋数は多くない。神戸の異人館としては小ぶりな部類である。
柱の並べ方に仕掛けがある
ヴェランダを支える角柱には、縦に細い溝が彫られている。注目したいのはその並べ方で、等間隔ではない。2本を寄せ、次は3本を寄せ、間隔もその都度変える。この吹寄せという置き方によって柱の列にリズムが生まれ、実際より横に長く見える。敷地が狭いという条件を、意匠のほうで裏返している。
ヴェランダから室内へ通じる出入口が多いのも同じ発想である。広いとはいえない部屋を、外の縁と一続きに使うための工夫とみられる。出入口は両開きの戸で、上に櫛形の欄間が付き、外側には鎧戸が備わる。日射しの強い時間帯に鎧戸を半分閉じれば、光は羽根で切られて床に縞をつくる。
渡廊下でつながる付属屋には、2階に床の間と平書院を備えた座敷がある。書院欄間の細い菱格子や円窓など、数寄屋の意匠を取り入れた部屋である。付属屋の2階へは主屋からの渡廊下でしか行けない。1階に住んだ使用人の動線と分けるためと考えられている。
明治村神戸山手西洋人住居主屋を外から見るときは、正面だけでなく側面へ回り込みたい。ヴェランダが折り返す角で、柱の間隔の変化がいちばんよく分かる。
見学の手引き
明治村神戸山手西洋人住居主屋は博物館明治村の3丁目32番地に建つ。ここで注意したいのは、建物の内部が通常は公開されていないことである。外観はいつでも見られるが、内部はボランティアガイドによる「神戸ガイド」が実施される時間に限って案内される。定時制で、事前予約は不要だが、時期によって休止する。訪問前に公式サイトの案内で実施状況を確かめておきたい。
建物だけの拝観料はなく、入村料に含まれる。入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生が700円で、未就学児は無料である。
開村時間は季節で動く。3月と、4月から7月、9月・10月は午前9時30分から午後5時。8月は午前10時から午後5時。11月は午前9時30分から午後4時。12月から2月は午前10時から午後4時。入村は閉村の30分前までである。休村日は月ごとにまとまるので、開村カレンダーの確認をすすめたい。
撮影はできる。ただし建物内での三脚の使用と、山林に立ち入っての撮影は禁じられている。村内の乗物の運転士にフラッシュを向ける行為も避けたい。
行き方は、名鉄犬山駅東口から岐阜バス明治村線で約20分。車なら中央自動車道の小牧東インターチェンジから約3キロメートルで、駐車場は普通車1,000円である。
Q&A
- 明治村神戸山手西洋人住居主屋の中に入って見学できますか?
- 内部は通常非公開です。ボランティアガイドによる「神戸ガイド」が行われる時間に限り、建物内部を案内してもらえます。予約は不要ですが定時制で、時期によって休止するため、訪問前に公式サイトで実施状況を確認してください。外観はいつでも見学できます。
- 明治村神戸山手西洋人住居主屋はどこにあり、どうやって行きますか?
- 愛知県犬山市内山1の博物館明治村、その3丁目32番地にあります。名鉄犬山駅東口から岐阜バス明治村線で約20分。車では中央自動車道の小牧東インターチェンジから約3キロメートルで、駐車場は普通車1,000円です。
- 明治村神戸山手西洋人住居主屋はもともとどこにあった建物ですか?
- 神戸市の山手、旧生田区山本通にあった異人館です。1966年(昭和41年)に解体され、1969年(昭和44年)に博物館明治村へ移されました。創建時は外国人の住まいで、1896年(明治29年)に増田周助の所有となり、のちにフランス人貿易商が住みました。
- 明治村神戸山手西洋人住居主屋の見どころはどこですか?
- 1階と2階に折り返して回るヴェランダと、そこに並ぶ竪溝付きの角柱です。柱は等間隔ではなく2本、3本と寄せて置かれ、建物が実際より大きく見えます。両開きの出入口には櫛形の欄間と鎧戸が付きます。
- 明治村神戸山手西洋人住居主屋の見学に料金はいくらかかりますか?
- 建物単独の料金はなく、博物館明治村の入村料に含まれます。大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生が700円、未就学児は無料です。料金は改定されることがあるため、公式サイトで確認してください。
基本情報
| 名称 | 明治村神戸山手西洋人住居主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県犬山市内山1 博物館明治村内 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2003年(平成15年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積73平方メートル |
| 所有者 | 公益財団法人明治村 |
| 公開状況 | 外観は開村時間中に公開。内部は通常非公開でガイド実施時のみ案内。入村料が必要 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「明治村神戸山手西洋人住居主屋」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003674
- 文化庁 国指定文化財等データベース「明治村神戸山手西洋人住居付属屋」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003675
- 文化遺産オンライン「明治村神戸山手西洋人住居主屋」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/116554
- 博物館明治村「神戸山手西洋人住居」
- https://www.meijimura.com/sight/%e7%a5%9e%e6%88%b8%e5%b1%b1%e6%89%8b%e8%a5%bf%e6%b4%8b%e4%ba%ba%e4%bd%8f%e5%b1%85/
- 博物館明治村「各種料金」
- https://www.meijimura.com/guide/price/
- 博物館明治村「開村スケジュール」
- https://www.meijimura.com/guide/open/
- 博物館明治村「アクセス」
- https://www.meijimura.com/guide/access/
最終更新日: 2026.09.03