京都の医家が自邸の庭に建てた四畳半
明治村茶室亦楽庵は、愛知県犬山市の博物館明治村にある明治10年(1877年)頃の茶室で、平成15年(2003年)に登録有形文化財に登録された。木造平屋建、瓦葺の一部を銅板葺とし、建築面積はわずか28平方メートル。柱間の寸法は桁行2間半、梁間3間で、1間は約1.8メートルにあたる。
建てたのは福井恒斎という人物で、京都の医家であり漢学者でもあったと博物館明治村は記している。場所は京都市北区小松原北町の自邸の庭。医業のかたわら漢籍を読む人が、住まいの一角に四畳半を構えた。それが明治10年頃のこととされる。
昭和45年(1970年)に解体され、翌昭和46年(1971年)に明治村3丁目28番地へ移された。文化庁の国指定文化財等データベースも「明治10頃/昭和46移築」と記録している。明治村茶室亦楽庵は、京都の市街地にあった個人の庭から、犬山の丘に移されて公開されるようになった小さな建物である。
登録有形文化財としての位置づけ
登録年月日は平成15年12月1日、告示は同月25日で、登録番号は23-0084。登録基準は「造形の規範となっているもの」が適用されている。国宝や重要文化財のような指定ではなく、届出を基本とする登録の制度による保護である。
文化庁の解説は、この建物を「千宗旦の茶室『又隠』を模したといわれる四畳半茶室」と説明し、そこに瓦敷きの土間、水屋、廊下が付くと記す。屋根は切妻造の桟瓦葺で、表側の妻に小さな切妻屋根を掛け、軒先と螻羽、庇を銅板で葺く。28平方メートルという小さな床面積のなかに、これだけの要素が組み合わされている。
茶室は本来、施主の好みが直接に形になる建築である。明治10年頃という時期に、京都の一町医が何を手本とし、どこを自分の判断で変えたのか。明治村茶室亦楽庵が登録されたのは、その判断の跡が実物として残っているからである。
閉じずに開く、という選択
利休以後の茶室は、小さく、閉じる方向へ進んだ。四方の壁でしっかり囲い、窓は明かりを採るだけの役割にとどめる。狭い空間のなかに大きな自然を立ち上げようとする考え方である。博物館明治村の解説は、その流れを踏まえたうえで、亦楽庵が逆の試みをしていると指摘する。
四畳半(本勝手)の一方に引き違いの障子戸を建て、その先に瓦を敷いた土間を置く。障子を引けば、畳と土間と庭がひと続きになる。囲うのではなく、開いて庭とつなぐ。この一手が、亦楽庵をほかの明治期の茶室と分けている。
見るときは、まず妻側に立ちたい。表側の妻に掛けられた小さな切妻屋根と、その下の開口の関係が、この建物の考え方をいちばんよく示す。銅板で葺かれた軒先と庇は、年月を経て落ち着いた色に変わっており、桟瓦の面との質感の違いが近くで見るとわかる。水屋の位置と、廊下から土間へ抜ける動線も確かめておきたい。
見学方法とアクセス
明治村茶室亦楽庵は博物館明治村の3丁目28番地にあり、見学には入村料が必要である。入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生700円で、未就学児は無料。開村時間は季節で変わり、3月から7月と9月・10月は午前9時30分から午後5時、8月は午前10時から午後5時、11月は午前9時30分から午後4時(土曜・休日は午後5時)、12月から2月は午前10時から午後4時となる。入村は閉村時間の30分前までである。
写真撮影は可能だが、建物内での三脚使用と山林に立ち入っての撮影は禁止されている。内部の立ち入り可否は建物ごとに異なり、明治村は事故防止や修理のため立ち入りを制限する箇所があると案内している。当日の公開範囲は現地の掲示で確かめたい。小さな建物なので、外から建具の開き方と土間の位置を確かめるだけでも構造はよく読み取れる。
アクセスは、名鉄犬山駅東口から明治村行きの路線バスで約20分。名鉄バスセンターと栄からの直通バスもある。車の場合は中央自動車道小牧東インターチェンジから約3キロメートルで、駐車場は普通車1,000円。3丁目は正門から歩くとやや距離があるため、村営バスを併用すると回りやすい。
Q&A
- 明治村茶室亦楽庵は見学できますか。料金と時間は。
- 博物館明治村の入村料で見学できます。入村料は大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生700円、未就学児は無料です。開村時間は季節によって変わり、3月から7月と9月・10月は午前9時30分から午後5時、12月から2月は午前10時から午後4時が目安です。
- 明治村茶室亦楽庵は何と読みますか。誰が建てたのですか。
- 「えきらくあん」と読みます。博物館明治村によれば、京都の医家であり漢学者でもあった福井恒斎が、明治10年(1877年)頃に自邸の庭へ建てたものと伝えられています。旧所在地は京都市北区小松原北町です。
- 明治村茶室亦楽庵はどんな造りの茶室ですか。
- 四畳半の茶室に瓦敷きの土間、水屋、廊下が付く木造平屋建で、建築面積は28平方メートルです。屋根は切妻造の桟瓦葺、表側の妻に小さな切妻屋根を掛け、軒先と螻羽、庇を銅板葺とします。文化庁の解説は、千宗旦の茶室「又隠」を模したといわれると記しています。
- 明治村茶室亦楽庵は国宝や重要文化財ですか。
- いずれでもありません。平成15年(2003年)12月1日に登録有形文化財(建造物)として登録されました。登録番号は23-0084、登録基準は「造形の規範となっているもの」です。国宝・重要文化財の「指定」とは別の制度による保護にあたります。
- 明治村茶室亦楽庵へのアクセスと、村内での場所は。
- 名鉄犬山駅東口から明治村行きの路線バスで約20分、「明治村」バス停で下車します。名鉄バスセンターと栄からの直通バスもあります。車の場合は中央自動車道小牧東インターチェンジから約3キロメートル、駐車場は普通車1,000円です。建物は村内3丁目28番地にあります。
基本データ
| 名称 | 明治村茶室亦楽庵 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県犬山市内山1 博物館明治村内(3丁目28番地) |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成15年(2003年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺一部銅板葺、建築面積28平方メートル |
| 所有者 | 公益財団法人明治村 |
| 公開状況 | 公開(入村料が必要。内部の立ち入り可否は現地の案内による) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 明治村茶室亦楽庵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003671
- 博物館明治村 茶室「亦楽庵」
- https://www.meijimura.com/sight/茶室「亦楽庵」/
- 博物館明治村 開村時間・休村日
- https://www.meijimura.com/guide/open/
- 博物館明治村 チケット・料金
- https://www.meijimura.com/guide/price/
- 博物館明治村 アクセス
- https://www.meijimura.com/guide/access/
最終更新日: 2026.09.03