1960年に建った大学の顔

名古屋大学豊田講堂は、名古屋市千種区仁座町にある昭和35年(1960年)竣工の講堂で、平成23年(2011年)に国の登録有形文化財となった。名古屋大学東山キャンパスの軸線の東端に、丘陵を背にして建つ。

建設費はトヨタ自動車工業株式会社(当時)の寄付による。名古屋大学大学史資料室の資料によれば、名古屋帝国大学の創設当時から、講堂と図書館は地元の寄付を仰ぐという方針があった。戦後の名古屋大学は東山・鶴舞・名城など10を超える地区に部局が散らばった状態で、豊田講堂ができる前、大学唯一の講堂は鶴舞キャンパス医学部構内の附属図書館のなかにあった。

1950年代のはじめから、医学部と附属病院を除く部局を東山地区へ集める計画が進む。工学部、経済学部、法学部と移転が続き、法学部の移転が終わった時期に豊田講堂は完成した。竣工は1960年4月、完成記念式典は同年5月9日である。

読みは「とよたこうどう」ではない。文化庁のふりがなは「なごやだいがくとよだこうどう」とする。大学の記録には、発明家である豊田佐吉を記念する意味でこの名を付けたと残されている。

登録の理由と、この建築の位置

名古屋大学豊田講堂は平成23年(2011年)7月25日に登録され、同日告示された。登録番号は23-0333で、登録の基準は「造形の規範となっているもの」である。登録有形文化財の建造物としては新しい部類に入る。

文化庁の解説文は、この建物を日本のモダニズム建築が到達した一つの地点として位置づけている。設計は槇文彦、施工は竹中工務店。竣工の2年後にあたる昭和37年(1962年)度の日本建築学会賞を受けた。名古屋市はこれに先立つ平成5年(1993年)に、都市景観重要建築物の第4回指定物件として登録している。

構造は鉄筋コンクリート造3階地下1階建、建築面積は2981平方メートル。前面には人工地盤でつくられた広場が広がり、その広場とアプローチも登録の対象に含まれている。仕上げはコンクリート打放しを基本とし、正面に向かって右手にピロティ、左手に大規模なホールを配する。

平成2年(1990年)と平成19年(2007年)に改修が入った。改修も竣工時と同じ設計者と施工者の組み合わせで行われている。

広場から見上げる

この建物は正面から見るのがよい。東山キャンパスの緑地帯は東西に長く伸び、その東端で軸線を受け止めるように名古屋大学豊田講堂が構える。名古屋市の解説は、四谷通からもよく目につくと記す。

打放しコンクリートの面は、型枠の継ぎ目と締結金物の跡をそのまま残している。塗装で覆われていないため、天気と時間によって灰色の濃さが変わる。晴れた日の午後は面ごとに影の差が強く出る。

正面に立つ塔には時計が据えられている。直流式の塔時計で、文字盤の直径は2メートル。竣工当時は照明がなく、昼間しか針を読めなかった。平成6年(1994年)度に赤色の発光ダイオードによる照明が入り、2001年11月には青色発光ダイオードへ改められた。この青色発光ダイオードは、名古屋大学の赤﨑勇名誉教授が工学部在職中の1989年に発明・開発したものである。ロビーの西側入口の手前には、その経緯を記した記念プレートが置かれている。

1棟の建物のなかに、1960年の打放しコンクリートと、1989年に生まれた半導体技術とが同居している。夜に訪れると、時計台の青がまず目に入る。

見学の方法

東山キャンパスは誰でも自由に散策できる。個人での見学に事前の申し込みは要らず、料金もかからない。ただし名古屋大学豊田講堂は大学が定める公開施設の一覧には入っていないため、ホールの内部を見られるのは講演会や演奏会などの催事が開かれているときに限られる。外観と前面広場はいつでも見学できる。

大学は見学にあたっての注意を示している。授業などの活動を妨げないよう静かに歩くこと、公開施設以外の建物内へは立ち入らないこと、キャンパス内は全面禁煙であることなどである。大学入試の実施日は見学を控えるよう求めている。

最寄り駅は名古屋市営地下鉄名城線の名古屋大学駅で、大学公式サイトは「下車すぐ」と案内する。豊田講堂へは2番出口から徒歩3分ほど。見学者用の駐車場はないため、公共交通機関で向かうことになる。

撮影は屋外であれば妨げられない。取材や商業目的の撮影は、名古屋大学が申し込みの窓口を設けている。8月上旬のオープンキャンパスと10月下旬のホームカミングデイに合わせると、建物が使われている場面に立ち会える。催事の予定は大学のイベント情報で確認できる。

Q&A

Q名古屋大学豊田講堂は見学できますか。内部に入れますか。料金は。
A外観と前面広場はいつでも無料で見学でき、事前申し込みも要りません。ホールの内部は大学の公開施設に含まれていないため、講演会や演奏会などの催事が開かれているときに限られます。
Q名古屋大学豊田講堂への行き方と最寄り駅からの所要時間を教えてください。
A名古屋市営地下鉄名城線の名古屋大学駅で下車します。大学公式サイトは東山キャンパスを「下車すぐ」と案内しており、豊田講堂へは2番出口から徒歩3分ほどです。見学者用の駐車場はありません。
Q名古屋大学豊田講堂は誰が設計し、いつ建てられましたか。
A設計は槇文彦、施工は竹中工務店で、昭和35年(1960年)4月に竣工しました。建設費はトヨタ自動車工業株式会社(当時)の寄付によります。昭和37年(1962年)度の日本建築学会賞を受けています。
Q豊田講堂の読み方は「とよた」ですか「とよだ」ですか。
A「とよだ」です。文化庁のふりがなも「なごやだいがくとよだこうどう」としています。発明家の豊田佐吉を記念して名付けられたと大学の記録に残っています。
Q名古屋大学豊田講堂の時計台が青く光るのはなぜですか。
A文字盤の直径2メートルの塔時計には、2001年11月から青色発光ダイオードが組み込まれています。この技術は名古屋大学の赤﨑勇名誉教授が工学部在職中の1989年に発明・開発したものです。

基本データ

名称名古屋大学豊田講堂
所在地愛知県名古屋市千種区仁座町1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成23年(2011年)登録
員数1棟
寸法鉄筋コンクリート造3階地下1階建、建築面積2981平方メートル、デッキ広場及びアプローチ付
所有者国立大学法人名古屋大学
公開状況外観と前面広場は常時見学可、無料。ホール内部は催事開催時のみ

参考文献

国指定文化財等データベース 名古屋大学豊田講堂(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00008696
文化遺産オンライン 名古屋大学豊田講堂(文化庁)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/161507
名古屋大学豊田講堂 都市景観重要建築物(名古屋市)
https://www.city.nagoya.jp/kankou/kankouinfo/1013766/1013962/1034452/1014002.html
名古屋大学の歴史に関する記念碑・記念物(名古屋大学大学史資料室)
https://www.nagoya-u.ac.jp/extra/home-coming-day/hcd_16/upload/toyota.pdf
公開施設/大学見学(名古屋大学)
https://www.nagoya-u.ac.jp/social/comm-cen-inst/index.html
交通アクセス(名古屋大学)
https://www.nagoya-u.ac.jp/contact/directions.html

最終更新日: 2026.09.02