中村公園豊頌軒とは

中村公園豊頌軒(なかむらこうえんほうしょうけん)は、愛知県名古屋市中村区の中村公園内にある明治前期(1868年から1882年)建築の茶室で、平成29年(2017年)に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。ひょうたん池の北側、木立に囲まれた一角に東を向いて建つ。

木造平屋建、屋根は瓦葺で庇の一部を銅板で葺く。建築面積は42平方メートルと小さい。もとは稲沢市祖父江町にあった茶席で、昭和32年(1957年)に現在地へ移された。名古屋市の資料は旧称を松林庵と伝える。

屋根は切妻造桟瓦葺。目を引くのは銅板葺の庇で、軒先から深く前へ張り出している。雨の日に躙口の前が濡れないだけの奥行きがあり、茶事の動線を考えて出されたものだと分かる。

表千家碌々斎好みの茶席

中村公園豊頌軒のもとになったのは、表千家十一代家元碌々斎(ろくろくさい)好みと伝わる茶席である。「好み」とは、その家元の意向に沿って設計された、という意味の茶の湯の言い方で、寸法や材の選び方に流儀の考え方が反映される。

登録有形文化財の登録基準は3種類あるが、中村公園豊頌軒が該当したのは「造形の規範となっているもの」である。歴史的景観への寄与でも再現の困難さでもなく、意匠そのものが手本になる水準にあると判断された。文化庁の解説も、簡明で洗練された意匠と評している。登録番号は23-0481。

国の登録に先立ち、名古屋市は平成23年(2011年)に中村公園豊頌軒を認定地域建造物資産の第21号として認定している。市の景観施策から入り、のちに国の登録有形文化財へ進んだ形である。

四畳半台目の本席と、まわりの部屋

中村公園豊頌軒の中心は四畳半台目の本席である。台目とは通常の畳の四分の三ほどの長さに切った畳で、点前座をそのぶん切り詰める。四畳半に台目を添えるこの取り合わせは、広間の落ち着きと小間の緊張の中間にあたる。本勝手の上座床、つまり亭主から見て右側に客が座り、床は上座に構える形をとる。

本席を軸に、西に水屋、北に玄関、北東に二畳台目の寄付(よりつき)が配される。寄付は客が席入りの前に身支度を整え、腰を落ち着ける部屋である。42平方メートルという小さな床面積の中に、茶事に必要な部屋がひととおり収まっている。無駄がないというより、必要なものしか置かなかった結果の小ささである。

昭和63年(1988年)には、中村公園豊頌軒の近くに桐蔭(とういん)茶席が建てられた。以来この二棟が組み合わせて使われており、茶会の際は桐蔭茶席とあわせて動く。中村公園豊頌軒だけが単独で使われることはない。

利用方法とアクセス

中村公園豊頌軒に見学の制度はない。中村公園の管理者は、茶室の見学は行っていないと明記している。建物の中に入れるのは、桐蔭茶席の使用を申請して茶会を開く場合に限られる。そのときに中村公園豊頌軒もあわせて使えるという扱いである。

申請は中村公園事務所の窓口で申込書に記入する方式で、電話での受付や仮予約は受け付けていない。一般の受付開始は使用日の3か月前の1日から、先着順。窓口の受付時間は午前9時から正午と、午後1時から午後4時30分まで。事務所は年末年始(12月29日から1月3日)を除いて開いている。使用料は改定されることがあるため、申し込み前に中村公園事務所へ確認したい。

茶会に参加しない場合でも、木立の外から中村公園豊頌軒の屋根や庇を眺めることはできる。ただし公園内で業として、または商業目的で撮影する場合は、名古屋市都市公園条例に基づく行為許可が必要で、撮影者1人につき1,500円、動画撮影は1件1日につき17,000円の使用料がかかる。私的な記念撮影はこの対象ではないが、迷ったら公園事務所に尋ねるのが早い。

アクセスは地下鉄東山線の中村公園駅3番出口から北へ徒歩約10分。市バスなら豊国神社停留所で降りればすぐである。園内には予約者専用の駐車場があるが、有料公園施設の利用者が優先で、事前の予約が要る。

Q&A

Q中村公園豊頌軒は見学できますか。内部は公開されていますか。
A見学の受け入れは行われていません。中村公園豊頌軒の内部に入れるのは、隣接する桐蔭茶席の使用を申請して茶会を開く場合に限られます。外から建物の外観を眺めることはできます。
Q中村公園豊頌軒でお茶会を開くにはどうすればよいですか。
A中村公園事務所の窓口で申込書に記入して申請します。電話受付や仮予約はありません。一般受付は使用日の3か月前の1日から先着順で、窓口の受付時間は午前9時から正午と午後1時から午後4時30分までです。有料施設のため使用料がかかります。
Q中村公園豊頌軒はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A明治前期(1868年から1882年)の建築で、昭和32年(1957年)に稲沢市祖父江町から中村公園内へ移築されました。国の登録有形文化財(建造物)に登録されたのは平成29年(2017年)で、登録番号は23-0481です。
Q中村公園豊頌軒はどのような間取りの茶室ですか。
A本席は四畳半台目、本勝手の上座床です。本席を中心に、西側に水屋、北側に玄関、北東に二畳台目の寄付を配します。木造平屋建で建築面積は42平方メートル、屋根は切妻造の桟瓦葺、庇の一部を銅板で葺いています。
Q中村公園豊頌軒への行き方と最寄り駅を教えてください。
A地下鉄東山線の中村公園駅3番出口から北へ徒歩約10分です。市バスの場合は豊国神社停留所で下車してすぐ。所在地は愛知県名古屋市中村区中村町字高畑の中村公園内で、園内の駐車場は予約者専用です。

基本情報

名称中村公園豊頌軒
所在地愛知県名古屋市中村区中村町字高畑
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成29年(2017年)登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺一部銅板葺、建築面積42平方メートル
所有者名古屋市
公開状況見学不可。桐蔭茶席の使用申請による茶会でのみ利用可

参考文献

国指定文化財等データベース 中村公園豊頌軒(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011711
中村公園豊頌軒(名古屋市 認定地域建造物資産)
https://www.city.nagoya.jp/kankou/rekishi/1017268/1017271/1017327.html
中村公園 施設紹介(中村公園事務所)
https://www.nakamura-park.com/facility/index.html
中村公園 交通アクセス(中村公園事務所)
https://www.nakamura-park.com/access/index.html

最終更新日: 2026.09.02