善行寺鐘楼とはどのような建物か

善行寺鐘楼は、愛知県名古屋市中川区愛知町の真宗大谷派安井山善行寺にある鐘つき堂で、明治29年(1896年)頃の建立とされ、平成30年(2018年)5月10日に登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は23-511である。

本堂の南西方に位置する。木造で屋根は瓦葺、面積は7.6平方メートル。境内で登録された6棟のうち、手水舎に次いで小さい。それでいて、細部の密度は6棟のなかで最も高い。

平面は方一間、つまり柱の間隔が一間四方の正方形で、壁を張らない吹放ち形式。南北を棟の方向とする入母屋造の屋根を架け、寺の解説では屋根を本瓦葺としている。昭和53年(1978年)に改修されている。

造形の規範として登録された理由

文化庁の国指定文化財等データベースが記録する善行寺鐘楼の登録基準は「造形の規範となっているもの」である。境内の6棟のうちこの基準によるのは本堂とこの鐘楼だけで、他の4棟は景観への寄与によって登録された。面積7.6平方メートルの建物が、277平方メートルの本堂と同じ枠で評価されている。

理由は様式にある。寺の解説は、善行寺鐘楼を均整のとれた禅宗様の鐘楼とし、細部の意匠も良質だとする。禅宗様は鎌倉時代に禅宗寺院とともに伝わった建築様式で、細い部材を密に組む点に特徴がある。浄土真宗の寺院である善行寺が、鐘楼にこの様式を選んでいることになる。

様式の名前は宗派の名前と一致しない。禅宗様は禅宗の専有物ではなく、近世以降は宗派を問わず、格式や装飾性を求める建物に用いられた。明治29年(1896年)頃という建立年代を考えれば、善行寺鐘楼は様式が宗派の枠を越えて共有された時代の産物と言える。

見上げて確かめたい細部

この鐘楼は高い乱石積の基壇に載る。加工しない自然石を積み上げた基壇で、荒い石肌の上に整った木部が乗る対比が、まず目に入る。

柱は粽付の円柱である。粽は柱の上下端をわずかに細く絞る仕上げで、まっすぐ立つ柱より軽く見える。その柱を貫で固め、頂部に台輪という水平材を回して、その上に組物を載せる。

組物は木鼻付の出組で、しかも詰組になっている。詰組は柱の上だけでなく柱と柱の間にも組物を並べる配置で、軒下がぎっしり埋まる。禅宗様の特徴として挙げられるのがこの詰組であり、善行寺鐘楼で最も分かりやすい見どころでもある。

天井は小組の格天井、垂木は二軒の扇垂木である。扇垂木は隅に向かって垂木を放射状に配する手法で、真下から見上げると、垂木が扇の骨のように広がる。壁がない吹放ちなので、この構成が四方どこからでも見える。小さな建物に、見上げるべきものが集中している。

見学方法とアクセス

善行寺鐘楼は境内に建ち、外観は近くから見ることができる。公式サイトによれば、墓地と納骨堂への参拝は午前8時から午後5時までであれば予約なしで可能である。吹放ちの建物なので、外から見るだけで架構のほとんどが把握できる。

拝観料の定めは公式サイトに示されていない。撞くことができるかどうかについても案内はないため、鐘に触れる前に寺務所へ確認したい。電話は052-351-5000、対応時間は平日の午前10時から午後5時までである。撮影の可否についても明示された規定はない。

最寄り駅は近鉄名古屋線の黄金(こがね)駅で、徒歩約9分。名古屋駅からはタクシーで約9分である。車では名古屋高速5号万場線の黄金インターチェンジから約4分、駐車場は10台分ある。周辺の道路が一方通行になっていると寺は注意を促している。

7月の大相撲名古屋場所の時期には、境内が荒汐部屋の宿舎になり、稽古用の土俵が置かれる。善行寺鐘楼の細部をゆっくり観察したい場合は、この時期を避けるほうが落ち着いて見られる。

Q&A

Q善行寺鐘楼はいつ建てられましたか。
A文化庁の国指定文化財等データベースは年代を明治29年(1896年)頃としています。昭和53年(1978年)に改修されました。境内の6棟のうち、明治期の建物はこの鐘楼だけです。
Q善行寺鐘楼はどんな様式ですか。
A禅宗様です。寺の解説は均整のとれた禅宗様の鐘楼としています。粽付の円柱、木鼻付出組の詰組、小組格天井、二軒の扇垂木といった要素が、この様式の典型的な特徴にあたります。
Q善行寺鐘楼の見どころはどこですか。
A軒下の詰組と、真下から見上げる扇垂木です。柱間にも組物が並ぶ詰組は禅宗様の指標で、壁を張らない吹放ち形式のため四方から見えます。高い乱石積の基壇と整った木部の対比も目を引きます。
Q善行寺鐘楼の鐘を撞くことはできますか。
A撞鐘の可否について公式サイトに案内はありません。現役の寺院の設備ですので、鐘に触れる前に寺務所へ確認してください。電話は052-351-5000、平日の午前10時から午後5時に対応しています。
Q善行寺鐘楼へのアクセス方法を教えてください。
A近鉄名古屋線の黄金駅から徒歩約9分です。名古屋駅からはタクシーで約9分。車では名古屋高速5号万場線の黄金インターチェンジから約4分で、駐車場は10台分あります。鐘楼は本堂の南西方に建っています。

基本データ

名称善行寺鐘楼(ぜんぎょうじしょうろう)
所在地愛知県名古屋市中川区愛知町4132
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録基準「造形の規範となっているもの」
指定年平成30年(2018年)5月10日登録 登録番号23-511
員数1棟
寸法木造、瓦葺、面積7.6平方メートル
所有者宗教法人善行寺
公開状況境内は午前8時から午後5時まで参拝可能。吹放ちのため外観から架構を確認できる

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「善行寺鐘楼」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012372
文化庁「登録有形文化財登録基準」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei_kijun.html
名古屋市「国登録文化財」
https://www.city.nagoya.jp/kankou/rekishi/1017268/1034462/1017208.html
真宗大谷派 安井山 善行寺「善行寺について」
https://zengyoji.or.jp/about/
真宗大谷派 安井山 善行寺 公式サイト(アクセス・よくあるご質問)
https://zengyoji.or.jp/

最終更新日: 2026.08.31