石孫本店内蔵とは
石孫本店内蔵は、秋田県湯沢市岩崎にある明治16年(1883年)建築の土蔵造2階建の文庫蔵で、平成10年(1998年)12月11日に登録有形文化財となった。味噌・醤油醸造元の石孫本店に残る登録蔵5棟のうち最も古く、建築面積は96平方メートル、屋根は鉄板葺である。読みは「いしまごほんてんうちぐら」。
文庫蔵とは、帳簿や証文、家財など家と店の大切なものを納めるための蔵をいう。道路沿いに並ぶ2号蔵から5号蔵が味噌と醤油を仕込む仕事場であるのに対し、石孫本店内蔵はその名のとおり住まいの側に置かれた蔵で、役割がまったく違う。店の公式サイトも「内蔵(文庫蔵)」と呼び、醸造蔵とは分けて紹介している。
建築年は棟札で確かめられる。施主は二代石川孫左ェ門、大工棟梁は斎藤彦右衛門。石孫本店の登録蔵はすべて彦右衛門の手になり、石孫本店内蔵はそのうち最初に建てられた1棟にあたる。
石孫本店内蔵が登録された理由
石孫本店内蔵の登録基準は「再現することが容易でないもの」である。同じ敷地の2号蔵から5号蔵はいずれも「造形の規範となっているもの」で登録されており、5棟のなかでこの蔵だけが別の基準で評価されている。
文化庁の解説が特徴として挙げるのは壁面の仕上げである。湯沢市の解説はさらに踏み込み、腰壁を煉瓦張りとするなど洋風の意匠を取り入れている点を指摘する。店の公式サイトも、腰壁に煉瓦を積んだ洋風の意匠をこの蔵の特徴に挙げている。
土蔵の足もとは、雨の跳ね返りや積もった雪に長くさらされ、壁のなかでも傷みやすい部分である。そこを煉瓦で覆う仕上げは、雪の多い湯沢の蔵として実用にかなう。同時に、明治16年(1883年)という早い時期に土蔵へ洋風の材料を持ち込んだ例でもある。
石孫本店の登録蔵を年代順に並べると、この内蔵から大正5年(1916年)の5号蔵まで33年の幅がある。一人の棟梁が同じ施主のために建て続けた蔵の系列の、石孫本店内蔵は起点に位置する。
石孫本店内蔵の見どころ
見たいのは腰まわりである。石孫本店内蔵では、壁の下部が煉瓦張り、その上が土蔵の塗り壁になっており、素材の違う二つの面が上下で切り替わる。重く閉じた土蔵の外観に、煉瓦の目地の細かな線が加わる。
大きさにも注目したい。96平方メートルという建築面積は、165平方メートルで揃う醸造蔵に比べて一回り小さい。大きな木桶を据える必要がない文庫蔵は、仕事場の蔵とは寸法の考え方が違う。石孫本店内蔵と醸造蔵を見比べると、同じ棟梁が用途に合わせて規模を決めていたことが分かる。
屋根はほかの登録蔵と同じく鉄板葺である。
石孫本店内蔵の見学方法
石孫本店内蔵の内部公開について、公表されている案内は見当たらない。店の蔵見学は味噌と醤油の仕込みの工程に沿って麹室や熟成蔵を案内する内容で、文庫蔵が案内の対象に入るかは示されていない(2026年9月24日確認)。見学を予約する際に、石孫本店内蔵を外からでも見られるか尋ねておくとよい。
石孫本店内蔵は、道路に面して並ぶ2号蔵から5号蔵とは別の位置にある。通りから外観を確かめられるかどうかも、公表資料からは判断できない。
撮影の可否も明示されていない。敷地は現役の醸造所なので、店の人に確かめてからにしたい。店への行き方と蔵見学の予約・料金は、石孫本店のページにまとめてある。
Q&A
- 石孫本店内蔵はいつ建てられましたか。
- 棟札から明治16年(1883年)の建築と分かっています。石孫本店の登録有形文化財5棟のなかで最も古い蔵です。
- 石孫本店内蔵は何に使われた蔵ですか。
- 文化庁の解説は文庫蔵としています。帳簿や家財など家と店の大切なものを納める蔵で、味噌や醤油を仕込む醸造蔵とは役割が異なります。
- 石孫本店内蔵の外観にはどんな特徴がありますか。
- 腰壁を煉瓦張りにするなど、土蔵に洋風の意匠を取り入れている点です。壁の下部の煉瓦と上部の塗り壁が上下で切り替わります。
- 石孫本店内蔵はどの基準で登録有形文化財になったのですか。
- 「再現することが容易でないもの」です。同じ敷地の2号蔵から5号蔵は「造形の規範となっているもの」で登録されており、基準が異なるのはこの蔵だけです。
- 石孫本店内蔵の内部は見学できますか。
- 公表された案内はありません。店の予約制の蔵見学に文庫蔵が含まれるかは示されていないため、予約時に確認してください(2026年9月24日確認)。
基本データ
| 名称 | 石孫本店内蔵(いしまごほんてんうちぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 秋田県湯沢市岩崎字岩崎162 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 05-0035 |
| 指定年 | 1998年12月11日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造2階建、鉄板葺、建築面積96平方メートル |
| 所有者 | 有限会社石孫本店 |
| 公開状況 | 内部公開の案内なし。店舗は営業日に入店可 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 石孫本店内蔵(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000933
- 石孫本店内蔵(文化遺産オンライン)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/180843
- 石孫本店内蔵ほか4棟(湯沢市の文化財)
- https://www.city-yuzawa.jp/site/bunkazai/2215.html
- 蔵の歴史と製法(石孫本店)
- https://ishimago.jp/history/
- 蔵見学(石孫本店)
- https://ishimago.jp/tour/
最終更新日: 2026.09.24