屋敷地の東南隅を締める2階建の蔵
斎彌酒造店文庫蔵は、秋田県由利本荘市石脇にある明治35年(1902年)頃の土蔵造2階建の建物で、平成10年(1998年)に登録有形文化財となった。
敷地内に登録された11棟のうち、2階建はこの文庫蔵と主屋である住宅・店舗だけである。建築面積は58平方メートルと大きくはないが、平屋の蔵が並ぶなかで高さが際立つ。屋根は瓦葺。
文庫蔵とは、帳簿や証文、家財といった紙の記録と貴重品を納めるための蔵をいう。米や酒を入れる蔵とは求められる性能が違い、火と湿気から中身を守ることが最優先になる。厚い土壁で囲い、開口を絞るという土蔵の作りは、まさにその目的に沿ったものだ。
建つのは主屋の東方、屋敷地の東南隅にあたる。街道に面した角地であり、斎彌酒造店文庫蔵は通りを歩く人の目に最初に入る建物のひとつになっている。
気候に応じた妻の意匠
斎彌酒造店文庫蔵が登録有形文化財となったのは平成10年(1998年)9月2日、登録番号は05-0032である。門とともに12回目の登録に含まれた。
登録の基準は「再現することが容易でないもの」。敷地内でこの基準が挙げられているのは、主屋の住宅・店舗と斎彌酒造店文庫蔵の2棟だけで、他の9棟は景観への寄与を理由に登録されている。
特徴とされているのは、街道に面した妻側の意匠である。壁の下部を下見板張とし、窓には覆いをつける。由利本荘は日本海から吹きつける風雪の強い土地で、土壁は雨に濡れ続けると傷む。板で下半分を覆い、開口部に庇状の覆いを添えるのは、装飾である以前に土壁を守るための処置だった。見た目の整えと実用が同じ手つきで果たされている。
この蔵はさらに覆屋のなかに納まっている。覆屋そのものが上部を漆喰で塗り、下部を下見板張りとして土蔵らしく仕立てられており、市の資料はこれを珍しいつくりとして記録している。中身を守る蔵を、もう一枚の蔵らしい皮が包んでいる形になる。
両端で支える屋敷の輪郭
通りに立って屋敷の全体を見渡すと、斎彌酒造店文庫蔵の役割がわかる。東南隅にこの2階建が立ち、西南隅には壜蔵などを納めた覆屋が構える。そのあいだに主屋と門が並ぶ。両端に高さのある構造物を置き、中央を低く抑えた構成が、道路側の輪郭を引き締めている。
見るのは妻側からがよい。三角形の妻壁と、その下に走る下見板の水平線、そして窓の覆いがつくる小さな影。装飾は多くないが、線の配り方は考え抜かれている。
雪の季節には、屋根と板壁の境目に積もった雪が白い帯になる。土蔵の壁が濡れないよう配慮された造りは、その季節にこそ意味が見えてくる。
見学方法とアクセス
斎彌酒造店文庫蔵は稼働中の酒造会社の敷地内にあり、内部は公開されていない。株式会社斎彌酒造店の酒蔵見学も休止しているため、見学は道路からの外観にかぎられる。街道に面した角に建つので、妻側の姿は通りからよく見える。敷地内に入っての撮影には会社の許可がいる。
通りの向かいでは同社が「発酵小路 田屋」を営んでいる。午前10時から午後5時までの営業で、木曜と日曜が定休。併設のギャラリーでは申し込み制で酒蔵の映像を公開している。斎彌酒造店文庫蔵の妻壁を眺めてから立ち寄る順で回るとよい。
JR羽越本線の羽後本荘駅から子吉川を渡り、北へ約1.5キロ。徒歩20分ほどである。市の循環バスは桶屋町停留所が最寄り。見学の扱いは変わりうるので、電話0184-22-0536で確かめておきたい。
よくある質問
- 斎彌酒造店文庫蔵にはもともと何が納められていたのですか。
- 文庫蔵は帳簿や証文などの記録と貴重品を納める蔵です。米や酒を入れる蔵とは目的が異なり、火と湿気から中身を守ることが最も重視されます。
- 斎彌酒造店文庫蔵の建築の特徴は何ですか。
- 街道に面した妻側の意匠です。壁の下部を下見板張りとし、窓に覆いをつけて風雪から土壁を守っています。さらに蔵全体が覆屋に納まり、その覆屋も漆喰と下見板で土蔵風に仕立てられています。
- 斎彌酒造店文庫蔵はいつ登録されましたか。
- 平成10年(1998年)9月2日に登録有形文化財となりました。登録番号は05-0032で、門とともに12回目の登録に含まれています。建築は明治35年(1902年)頃です。
- 斎彌酒造店文庫蔵は敷地のどこにありますか。
- 主屋である住宅・店舗の東方、屋敷地の東南隅です。西南隅にある壜蔵などの覆屋と対をなし、道路側から見た屋敷の輪郭を両端で締めています。
- 斎彌酒造店文庫蔵の内部は見学できますか。
- できません。現役の酒造会社の敷地内にあり、酒蔵見学も休止中です。道路からの外観のみの見学となります。
基本データ
| 名称 | 斎彌酒造店文庫蔵 |
|---|---|
| 所在地 | 秋田県由利本荘市石脇字石脇53 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 1998年(平成10年) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造2階建、建築面積58平方メートル |
| 所有者 | 株式会社斎彌酒造店 |
| 公開状況 | 外観のみ道路から見学可、内部非公開 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「斎彌酒造店文庫蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000721
- 由利本荘市「齋彌酒造店(さいやしゅぞうてん)」
- https://www.city.yurihonjo.lg.jp/1001503/1002098/1002113/1002126/1003557.html
- 由利本荘市教育委員会「(資料)齋彌酒造店」
- https://www.city.yurihonjo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/557/1003557_002.pdf
- 由利本荘市「由利本荘市 国登録有形文化財」
- https://www.city.yurihonjo.lg.jp/1001503/1002098/1002113/1002126/1003565.html
- 発酵小路 田屋(株式会社齋彌酒造店運営)
- https://hakkokoji-taya.jp/
最終更新日: 2026.09.08