覆屋ごと目に入る蔵
斎彌酒造店東蔵は、秋田県由利本荘市石脇にある昭和初期(1926年以降)の土蔵造平屋建の建物で、平成10年(1998年)に登録有形文化財となった。
建築面積は142平方メートル、屋根は瓦葺。住宅の北に庭をはさんで建ち、中蔵と並ぶ。この2棟はひとつの覆屋のなかにまとめて納まっている。
覆屋は、土蔵の壁の周囲に板壁の囲いを立てた形をとる。装飾はなく、造りそのものは簡素である。ただし2棟をまとめて包むために規模は大きく、文化庁の記録は、この覆屋が屋敷構えのなかでひときわ目立つ存在だと述べている。飾らない構築物が、大きさだけで屋敷の景観を決めているという状態である。
なぜ蔵を建物で包むのか
斎彌酒造店東蔵が登録有形文化財となったのは平成10年(1998年)9月2日、登録番号は05-0024である。第11回の登録に含まれた9棟の最後の番号にあたる。登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」だった。
土蔵の壁は、土と藁と漆喰でつくられている。乾いていれば強いが、濡れつづければ崩れる。由利本荘は日本海からの風雪を正面から受ける土地で、水平に吹きつける湿った雪は、庇の下にも回り込んで壁を濡らす。
そこで壁の外側にもう一枚の壁を立てる。斎彌酒造店東蔵を包む板壁の囲いは、土壁と外気のあいだに空気の層をつくり、雪と雨を直接当てない。板は傷んでも張り替えられるが、土壁の修復は手間がかかる。傷んでよい面を外側に用意しておく、という考え方である。
同じ発想が敷地内で繰り返されている。西南隅の3棟、東南隅の文庫蔵、そしてここの2棟。斎彌酒造店東蔵はそのうち、もっとも簡素な形の覆屋をもつ例にあたる。
年代の違う2棟が並ぶ
隣の中蔵は明治35年(1902年)頃、創業時の建物である。斎彌酒造店東蔵は昭和初期の建築で、二つのあいだにはおよそ四半世紀の開きがある。それでも並んで建ち、ひとつの覆屋の下に収まっているため、外からは同じ時期のものに見える。
屋敷というものが一度に造られるわけではないことが、ここに出ている。商いが伸びれば蔵を足し、足した蔵をまとめて覆う。11棟が明治35年頃と昭和初期の二つの時期に分かれているのも同じ事情による。
庭をはさんだ南には住宅が建つ。座敷から北を見れば、庭ごしに大きな板壁が視界を占める。斎彌酒造店東蔵とその覆屋は、住まいの側から見た景色の背景でもあった。
見学方法とアクセス
斎彌酒造店東蔵は稼働中の酒造施設で、内部は公開されていない。株式会社斎彌酒造店の酒蔵見学も休止しているため、見学の機会はない。住宅の北という敷地の内側にあるため、道路から目に入るのは覆屋の一部だけである。立ち入りと敷地内での撮影には会社の許可がいる。
同社が通りの向かいで営む「発酵小路 田屋」は、午前10時から午後5時までの営業、木曜と日曜が休み。併設のギャラリーでは、申し込みのうえで酒蔵の映像を見られる。斎彌酒造店東蔵のように敷地の内側にある建物を知る手立てとして、現状ではこれが有効である。
最寄り駅はJR羽越本線の羽後本荘駅。子吉川を渡って北へ約1.5キロ、徒歩20分ほどかかる。市の循環バスなら桶屋町停留所で降りる。問い合わせは電話0184-22-0536へ。
よくある質問
- 斎彌酒造店東蔵の覆屋はどんなつくりですか。
- 土蔵の壁の周囲に板壁の囲いを立てた形です。装飾のない簡素な造りですが、中蔵と合わせて2棟を包むため規模が大きく、屋敷構えのなかで目立つ存在になっています。
- なぜ斎彌酒造店東蔵は覆屋で包まれているのですか。
- 土と漆喰の壁は濡れつづけると傷むためです。日本海から吹きつける湿った雪を直接当てないよう、外側に板壁を立てて空気の層をつくっています。板なら傷んでも張り替えられます。
- 斎彌酒造店東蔵はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
- 昭和初期(1926年以降)の建築です。登録は平成10年(1998年)9月2日、登録番号05-0024で、第11回の登録に含まれた9棟の最後の番号にあたります。
- 斎彌酒造店東蔵と中蔵は同じ時期の建物ですか。
- 違います。中蔵は明治35年(1902年)頃の創業時の建物で、東蔵は昭和初期。およそ四半世紀の開きがありますが、ひとつの覆屋に納まるため外からは見分けがつきません。
- 斎彌酒造店東蔵は見学できますか。
- できません。現役の酒造施設で酒蔵見学も休止中です。住宅の北の敷地内にあり、道路から見えるのは覆屋の一部にとどまります。
基本データ
| 名称 | 斎彌酒造店東蔵 |
|---|---|
| 所在地 | 秋田県由利本荘市石脇字石脇53 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 1998年(平成10年) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造平屋建、建築面積142平方メートル |
| 所有者 | 株式会社斎彌酒造店 |
| 公開状況 | 非公開、道路からは覆屋の一部のみ |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「斎彌酒造店東蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000618
- 由利本荘市「齋彌酒造店(さいやしゅぞうてん)」
- https://www.city.yurihonjo.lg.jp/1001503/1002098/1002113/1002126/1003557.html
- 由利本荘市教育委員会「(資料)齋彌酒造店」
- https://www.city.yurihonjo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/557/1003557_002.pdf
- 由利本荘市「由利本荘市 国登録有形文化財」
- https://www.city.yurihonjo.lg.jp/1001503/1002098/1002113/1002126/1003565.html
- 発酵小路 田屋(株式会社齋彌酒造店運営)
- https://hakkokoji-taya.jp/
最終更新日: 2026.09.08