川之石の港に面して建つ木造の集会所

内之浦公会堂は、愛媛県八幡浜市保内町川之石にある昭和12年(1937年)建築の木造2階建の集会施設で、平成13年(2001年)に登録有形文化財となった。

建築面積は108平方メートル。文化庁の記録によれば、棟梁は那須喜八郎である。所有者は「内之浦地区」、つまり市でも会社でもなく、この海沿いに暮らす人びと自身が建て、いまも持ち続けている。公会堂という名前のとおりの建物だ。

川之石は南に開いた天然の良港で、内之浦公会堂はその水際を走る道に沿って立つ。漁船の係留地までは歩いてすぐ。道路に面した西側の中央には玄関ポーチが張り出しており、これが通りに向けたこの建物の顔になっている。

登録の理由と、この建物が守られた経緯

登録年月日は平成13年(2001年)4月24日、告示は同年5月15日。登録番号は38-0016で、第28回の登録にあたる。適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」だった。

この基準は文字どおりに読むのがいい。文化庁はこの建物を、稀少だから、あるいは構造が冒険的だからという理由で登録したのではない。川之石の町並みからこれが消えれば景色の読み方が変わってしまう、という判断である。昭和初期の木造建築が洋風の装いで港町の家並みに混じっている状態そのものが、登録有形文化財という制度が拾い上げようとしてきた対象にあたる。

同種の集落公会堂は昭和戦前期に全国で数多く建てられ、その大半は昭和40年代から50年代にかけて鉄筋コンクリートの公民館に置き換わった。内之浦公会堂が残ったのは、建てた地区が使い続けたからである。

見どころは壁の肌と屋根の見せ方

まず外壁を見てほしい。仕上げはセメントモルタルの洗い出しで、モルタルが固まりきる前に表面を洗って骨材を露出させる技法である。八幡浜市の観光ガイドもこの点を挙げている。斜めから光が当たる時間帯に壁沿いに目を走らせると、粒の粗さが浮き上がってくる。

次に軒のラインを見上げる。構造は木造だが、パラペットの納めによって通りからは陸屋根に見えるようになっている。昭和12年当時、平らな屋根は「近代」「西洋」の記号だった。それを木造で、しかも地方の港町で再現しようとしたところに、この地区が公会堂に持たせたかった性格が出ている。

玄関ポーチは西面のほぼ中央にあり、周囲の漁家にはない左右対称の構えを生んでいる。

内部に入ると、2階は一室の大広間で、床は敷きである。ここが劇場ではなく地区の集会所であることを示す部分で、総会も法要も婚礼の披露も新年の寄り合いも、この畳の上で行われてきた。西洋風の外皮が日本の座敷を包んでいる、という構成になっている。

もうひとつ、内部には戦争の痕跡が残る。八幡浜市によれば、天井と柱に太平洋戦争中のグラマン機による銃撃の跡があり、薬莢も保存されているという。日常的に使われている部屋にこの種の物証が残っている建物は、愛媛県内でも多くない。

内之浦公会堂の見学方法

内之浦公会堂は現役の地域施設であって、博物館ではない。拝観時間も入館料も設定されておらず、受付もない。外観は道路から自由に眺められ、道路上からの撮影も問題ない。

内部は事情が違う。地区の集会や行事に使われている建物なので、見学できるかどうかはその日の使用状況と、使っている人たちの都合次第になる。中を見たい場合は、当日いきなり扉を試すのではなく、八幡浜市を通じてあらかじめ相談するのが確実である。内部の撮影も同様に事前の許可を得たい。

場所はJR予讃線八幡浜駅から北西へ約3.5キロメートル、車なら10分ほど。八幡浜駅前からは保内方面の路線バスが出ており、川之石地区で降りて港の方へ下る。車で来る場合は、八幡浜市が川之石の町並み散策用に本町へ用意している駐車場に置いて、そこから歩くとよい。道は平坦で数分の距離しかなく、途中には赤レンガ倉庫や美名瀬橋など、この海沿いの表情をつくっている近代の建造物が並んでいる。

Q&A

Q内之浦公会堂は見学できますか。拝観料はかかりますか。
A外観は道路からいつでも無料で見学できます。建物は内之浦地区の所有で、地区の集会施設として使われているため、内部については公開時間も入館料も定められていません。中を見たい場合は八幡浜市を通じて事前に相談してください。
Q内之浦公会堂はいつ、誰によって建てられたのですか。
A昭和12年(1937年)の建築です。文化庁の記録では棟梁は那須喜八郎とされています。構造は木造2階建で、建築面積は108平方メートルです。
Q内之浦公会堂で特に注目すべき点はどこですか。
Aセメントモルタルの洗い出し仕上げの外壁、木造でありながら陸屋根に見せる軒の納め、西面中央の玄関ポーチです。内部では2階の畳敷き大広間のほか、八幡浜市によれば天井と柱に太平洋戦争中の銃撃跡が残っています。
Q内之浦公会堂へは八幡浜駅からどう行けばよいですか。
AJR八幡浜駅から北西へ約3.5キロメートル、車で10分ほどです。駅前から保内方面行きの路線バスがあり、川之石地区で下車して港側へ歩きます。車の場合は町並み散策用の本町駐車場を利用できます。
Q内之浦公会堂はどのような文化財ですか。
A登録有形文化財(建造物)です。平成13年(2001年)4月24日に登録され、同年5月15日に告示されました。登録番号は38-0016、適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。

基本情報

名称内之浦公会堂(うちのうらこうかいどう)
所在地愛媛県八幡浜市保内町川之石5番耕地41
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成13年(2001年)4月24日登録、同年5月15日告示
員数1棟
寸法木造2階建、建築面積108平方メートル
所有者内之浦地区
公開状況地区の集会施設として使用中。外観は道路から見学可。内部の公開時間および入館料の定めはない

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「内之浦公会堂」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002185
文化遺産オンライン(文化庁)「内之浦公会堂」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/148795
八幡浜市「八幡浜市観光ガイドマップ」
https://www.city.yawatahama.ehime.jp/doc/2022102600061/file_contents/kankouguide_ura.pdf

最終更新日: 2026.09.04