T字に組まれた2棟が、酒造りの順序をそのまま示す
梅美人酒造醸造場は、愛媛県八幡浜市1557-2に建つ大正5年(1916年)の木造2階建で、平成16年(2004年)に国の登録有形文化財に登録された。建築面積は767平方メートル。同じ敷地の4件の登録有形文化財のうち、面積では他を大きく引き離す。
1棟として登録されているが、実態は2つの蔵の組み合わせである。敷地の西辺沿いに南北棟の仕込蔵が立ち、釜場の北面に沿って東西棟の貯蔵蔵が伸びる。2棟が直交してT字形の棟構成をつくる。
この形は意匠として選ばれたものではない。仕込蔵の2階北方には麹室が設けられ、貯蔵蔵の1階北西隅は槽場に充てられている。米を蒸す釜場に接し、麹をつくり、醪を仕込み、しぼる。梅美人酒造醸造場の平面は、酒ができるまでの順序を建物の配置に置き換えたものである。
創業以来の施設が、核として残る
文化庁の解説は、仕込蔵と貯蔵蔵をともに創業以来の施設とし、醸造場の核となる建造物と位置づけている。梅美人酒造は大正5年(1916年)に上田梅一が創業した。醸造場に与えられた年代は創業年と一致しており、住宅主屋と並んで敷地内で最も古い。
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。街道に面して洋風の装いを与えられた事務所が「造形の規範」で登録されたのに対し、梅美人酒造醸造場は敷地の奥にあって、蔵の連なりが八幡浜の町並みの一部をなしていることを理由に選ばれた。
登録年月日は平成16年(2004年)3月2日、登録番号は38-0057、員数は1棟である。
見どころ
麹室の位置に注目したい。2階の北方に置かれている。麹づくりは温度と湿度の管理が要で、地面から離れた階のほうが条件を整えやすい。八幡浜市ふるさと観光公社は、蔵の断熱材に籾殻が用いられていると案内している。籾殻は精米の副産物であり、酒造りの過程で出るものが建物の性能を支えている。
槽場は貯蔵蔵の1階、北西の隅にある。醪を搾って酒と酒粕に分ける場所で、槽と呼ばれる装置が据えられる。作業の性格上、水を扱い、重いものを動かす。1階の隅という位置には理由がある。
仕込蔵の内部では、天井の高さと柱の間隔を確かめたい。タンクを据え、人が立ち回るための寸法が決まっている。梅美人酒造醸造場には昭和初期の貯蔵タンクや圧搾機が残されていると、八幡浜市ふるさと観光公社は伝えている。
外からは、南北に長い仕込蔵と東西に伸びる貯蔵蔵の取り合いを見たい。棟の向きが90度変わる箇所で、屋根がどのように処理されているかが分かる。
見学方法
梅美人酒造醸造場は現在も酒造りに使われている。見学は所有者の許可のもとで行われる。愛媛県の公式観光サイトによれば、見学は無料だが前日までの予約が必要で、営業は午前8時から午後5時、日曜が休みとされる。土産付きの有料見学は3,000円で、完全予約制かつ期間限定である。
八幡浜市ふるさと観光公社の「酒蔵体験」では、社長が蔵を案内し、試飲まで含まれる。1名2,640円、所要1時間程度。受け入れは5月から11月までで、新酒の仕込みが行われる12月から4月は実施されない。蔵の内部を落ち着いて見たい場合は、この期間を外して訪ねることになる。定員は2名から10名、申し込みは2週間前までが原則で、料金は資料により差があるため電話0894-22-0312で確認したい。未成年は参加できるが試飲はできない。
撮影の可否を示した公表資料はない。稼働中の製造設備があるため、蔵の内部では必ず事前に許可を得たい。
アクセスは、八幡浜港から車で約5分(約1.3キロ)、JR八幡浜駅から約7分(約2.1キロ)。伊予鉄南予バス「市立病院前」、宇和島自動車「裁判所前」から徒歩2分。無料駐車場が26台分ある。
Q&A
- 梅美人酒造醸造場はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
- 文化庁の国指定文化財等データベースは年代を大正5年(1916年)と記録しています。これは梅美人酒造の創業年にあたります。登録は平成16年(2004年)3月2日付、登録番号は38-0057です。
- 梅美人酒造醸造場はどのような構成になっていますか?
- 敷地西辺沿いの南北棟の仕込蔵と、釜場の北面に沿う東西棟の貯蔵蔵が直交し、T字形の棟構成をつくっています。1棟として登録されていますが、実質は2つの蔵の組み合わせです。
- 梅美人酒造醸造場の麹室と槽場はどこにありますか?
- 麹室は仕込蔵の2階北方に、槽場は貯蔵蔵の1階北西隅にあります。麹づくりに適した温湿度と、搾りの作業に必要な条件が、それぞれ配置に反映されています。
- 梅美人酒造醸造場の内部は見学できますか。予約と料金は?
- 前日までの予約により見学できます。通常の見学は無料、土産付きの有料見学は3,000円、案内と試飲を含む「酒蔵体験」は1名2,640円です。営業は午前8時から午後5時、日曜が休みです。
- 梅美人酒造醸造場を訪ねるのに適した時期はありますか?
- 案内付きの「酒蔵体験」は5月から11月までの受け入れです。12月から4月は新酒の仕込み期にあたり実施されないため、蔵をゆっくり見たい場合は5月から11月に訪ねるとよいでしょう。
基本データ
| 名称 | 梅美人酒造醸造場 |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県八幡浜市1557-2 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成16年(2004年)3月2日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積767平方メートル、木造2階建 |
| 所有者 | 梅美人酒造株式会社 |
| 公開状況 | 稼働中の酒造施設。事前予約により見学可。案内付きの体験は5月から11月まで |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「梅美人酒造醸造場」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004056
- 八幡浜市「文化財について」(国登録有形文化財一覧)
- https://www.city.yawatahama.ehime.jp/doc/2022103100010/
- 八幡浜市観光物産情報サイト(八幡浜市ふるさと観光公社)「梅美人酒造さんに教わる、酒蔵体験」
- https://yawatahama-kankou.com/umebijin-sakagura/
- 愛媛県公式観光サイト いよ観ネット「梅美人酒造」
- https://www.iyokannet.jp/spot/1922
最終更新日: 2026.09.04