街道に東面する、洋風に装った店舗事務所

梅美人酒造事務所は、愛媛県八幡浜市1557-2に建つ昭和6年(1931年)の木造2階建で、平成16年(2004年)に国の登録有形文化財に登録された。桁行8間、梁間5間の規模を持ち、建築面積は142平方メートル。南北に長い棟を街道へ東面させて構えている。

正面と側面はタイルで覆われ、腰まわりには花崗石を割り肌のまま積み上げたルスチカ積が回る。柱型のあいだには上げ下げ窓が並び、屋根の縁を隠すパラペットが背面側の端部まで伸びる。街道の側からは、屋根の見えない洋風の建物として目に入る。

ところが屋根そのものは寄棟造桟瓦葺である。敷地の奥へ回り込むと、洋風の外皮の内側に和瓦の勾配屋根が納まっていることが見えてくる。梅美人酒造事務所は、その二重性を1棟のうちに収めた建物である。

「造形の規範」として登録された理由

梅美人酒造事務所の登録基準は「造形の規範となっているもの」である。同じ敷地に建つ醸造場、釜場及び煙突、住宅主屋の3件がいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で登録されたのに対し、事務所だけが造形そのものを理由に選ばれている。4棟のなかで基準が異なるのはこの建物だけで、登録の理由書がそのまま性格の違いを言い当てている。

文化庁の解説は、この建物を造り酒屋の店舗事務所が洋風化していく過程を示す事例と位置づける。酒を仕込む蔵、家族が住む主屋とは違い、事務所は客と取引先に向き合う建物だった。タイルと花崗石は、その役割のために選ばれた材料である。

登録年月日は平成16年(2004年)3月2日、登録告示は同年3月29日、登録番号は38-0053。員数は1棟である。

見どころ

最初に目を落としたいのは腰の石積みである。表面を平滑に均さず、割ったままの肌を残して積む手法で、上に載るタイル面のなめらかさと質感が正面から対比される。石と焼き物という二種類の硬さが、同じ壁の上下で切り替わる。

窓は上下に引き上げて開く上げ下げ窓。近代の輸入建築に由来する形式で、柱型がつくる縦のリズムのあいだに等間隔で収まっている。

そしてパラペット。屋根の立ち上がりを隠すこの帯を、正面だけで止めずに背面側の端部まで回している点に注意したい。どこまで装うかが設計の段階で決められていたことが分かる。

建物の年代については資料に食い違いがある。愛媛県の公式観光サイトは事務所を昭和8年(1933年)の完成と紹介しているが、文化庁の国指定文化財等データベースは年代を昭和6年(1931年)と記録している。本記事は一次資料である後者に従った。

敷地内では、梅美人酒造事務所の西方に釜場及び煙突、その北側に醸造場、西南方に住宅主屋が建つ。事務所は街道に最も近く、4棟の配置の起点にあたる。

見学方法

梅美人酒造事務所は現在も酒造会社の事務所として使われており、敷地全体が民有地である。愛媛県の公式観光サイトによれば、見学は無料だが前日までの予約が必要で、営業は午前8時から午後5時、日曜が休みとされる。土産付き・期間限定の有料見学(3,000円、完全予約制)も案内されている。

八幡浜市ふるさと観光公社は、社長が案内役を務める「酒蔵体験」を扱っている。1名2,640円で所要1時間程度、受け入れは5月から11月まで(新酒の仕込み期にあたる12月から4月は除く)、定員は2名から10名、申し込みは体験希望日の2週間前までが原則である。料金と条件は資料によって差があるため、電話0894-22-0312で直接確かめるのが確実である。

撮影の可否については、市・県・所有者のいずれの公表資料にも記載がない。稼働中の酒造場であり、事務所は業務の場でもある。カメラを向ける前にひと言たずねたい。

アクセスは、JR八幡浜駅から車で約7分(約2.1キロ)、八幡浜港からは約5分(約1.3キロ)。伊予鉄南予バス「市立病院前」、または宇和島自動車「裁判所前」から徒歩2分。無料の駐車場が26台分ある。

Q&A

Q梅美人酒造事務所はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A文化庁の国指定文化財等データベースは年代を昭和6年(1931年)と記録しています。登録有形文化財への登録は平成16年(2004年)3月2日付、登録番号は38-0053です。
Q梅美人酒造事務所は見学できますか。予約は必要ですか?
A見学できます。愛媛県の公式観光サイトは、前日までの予約が必要で、営業は午前8時から午後5時、日曜が休みと案内しています。稼働中の会社の事務所ですので、必ず事前に連絡してください。
Q梅美人酒造事務所の見学料はいくらですか?
A通常の見学は無料と案内されています。土産付きの有料見学は3,000円、八幡浜市ふるさと観光公社が扱う案内付きの「酒蔵体験」は1名2,640円です。料金は資料により差があるため、電話0894-22-0312で確認してください。
Q梅美人酒造事務所へはどう行けばよいですか。最寄りのバス停はどこですか?
AJR八幡浜駅から車で約7分(約2.1キロ)、八幡浜港からは約5分(約1.3キロ)です。バスなら伊予鉄南予バス「市立病院前」、または宇和島自動車「裁判所前」から徒歩2分。無料駐車場が26台分あります。
Q梅美人酒造事務所の写真は撮影できますか?
A撮影の可否は公表されていません。営業中の事務所であり、敷地は民有地です。訪問時に所有者へ確認してください。

基本データ

名称梅美人酒造事務所
所在地愛媛県八幡浜市1557-2
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成16年(2004年)3月2日登録
員数1棟
寸法建築面積142平方メートル、桁行8間、梁間5間
所有者梅美人酒造株式会社
公開状況稼働中の民有建物。事前予約により見学可。無料と有料の見学がある

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「梅美人酒造事務所」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004052
文化遺産オンライン「梅美人酒造事務所」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/169362
八幡浜市「文化財について」(国登録有形文化財一覧)
https://www.city.yawatahama.ehime.jp/doc/2022103100010/
八幡浜市観光物産情報サイト(八幡浜市ふるさと観光公社)「梅美人酒造さんに教わる、酒蔵体験」
https://yawatahama-kankou.com/umebijin-sakagura/
愛媛県公式観光サイト いよ観ネット「梅美人酒造」
https://www.iyokannet.jp/spot/1922

最終更新日: 2026.09.04