主屋の背後に営まれた数寄屋の離れ
金光酒造には、仕事のためだけに建てられたのではない建物もある。敷地中央に東面して建つ主屋の南側、渡廊下を介した先に、住まいと客のもてなしにあてられた離れがある。大正後期の建築で、建築面積約七十五平方メートルの木造平屋建、入母屋造の屋根に桟瓦を葺き、棟を東西に通す。
内部は、床・棚・書院を備えた八畳に西の六畳が続き、両室を縁と廊下がめぐる。西端に風呂・便所・女中部屋を配す。全体に数寄屋の手法を取り入れ、縁桁に磨き丸太を用いるなどの意匠がみられる。
住まいが登録される理由
離れは令和二年(二〇二〇)四月に登録有形文化財となった。構内の歴史的な性格を保つ建物として、他の金光酒造の建造物とともに登録された一棟である。稼働する蔵には表れない、造酒家の暮らしの側面をここに見ることができる。栄えた酒造家には、もてなしの座敷と日々の私的な設備が必要であり、この離れはそれらをいくらかの品位とともに整えるために建てられた。
平成八年から続く登録制度は、この種の屋敷を、仕事の場と住まいの部分をあわせて対象とする。両者が揃ってはじめて、その場所がいかに機能していたかを説き明かせるからである。洗練された住まいと簡素な蔵は一つの筋に属しており、登録はそれらをひとまとまりとして守る。
造酒家の趣味を読む
数寄屋の意匠は仔細に見る価値がある。縁桁の磨き丸太、主室に構えた床・棚・書院の配り、全体の静かな均衡は、大正期に洗練された住まいを注文しうる財力と趣味を備えた施主の存在を示す。今日なお酒蔵に名を刻む一族、五代目の金光秀起に至る金光家の姿を補って見せてくれる。平成十五年に手造りへ立ち返ったのもこの当主である。
離れは屋敷の私的な部分であり内部は非公開だが、その存在を知ることで敷地の見え方は変わる。蔵と煙突、そしてこの静かな離れのあいだに、造酒家の労働と生活の双方がある。敷地の直売所では、同じ一族が醸す「賀茂金秀」や「桜吹雪」を注いでいる。
Q&A
- 離れとは何ですか。
- 主屋から離して建てた建物で、ここでは住まいと客のもてなしに用いられました。金光酒造では渡廊下で主屋とつながっています。
- 数寄屋とはどのような様式ですか。
- 茶室の影響を受けた洗練された住宅の造りで、控えめな意匠と自然の素材を好みます。ここでは縁桁の磨き丸太などにその手法がみられます。
- どのような部屋がありますか。
- 床・棚・書院を備えた八畳、西の六畳、両室をめぐる縁と廊下、そして西端の風呂・便所・女中部屋からなります。
- 内部を見学できますか。
- 離れは屋敷の私的な部分で、内部は非公開です。敷地内の直売所では試飲や購入ができます。
- なぜ住まいを登録するのですか。
- 登録制度は、仕事の場と住まいをあわせた屋敷全体を対象とします。造酒家の暮らしと仕事のあり方を説き明かすうえで、住まいがその全体像を補います。
基本情報
| 名称 | 金光酒造離れ(かねみつしゅぞうはなれ) |
|---|---|
| 所在地 | 広島県東広島市黒瀬町乃美尾字東門前1364-2 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 34-0265 |
| 登録年月日 | 令和2年(2020)4月3日(第95回登録) |
| 員数・規模 | 1棟/木造平屋建、入母屋造、瓦葺、建築面積約75㎡ |
| 時代 | 大正後期 |
| アクセス | 東広島呉自動車道 馬木ICから車で約10分、西門前バス停から徒歩約3分。敷地内に直売所あり(離れ内部は非公開)。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース — 登録有形文化財(建造物)該当記録
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013323
- 金光酒造株式会社 — 公式サイト
- https://www.kamokin.com/
- 東広島おでかけ観光サイト ヒガシル — 金光酒造
- https://higashihiroshima-kanko.jp/spot/kanemitsu/
最終更新日: 2026.07.05