賀茂金秀を生む敷地最古の建物
東広島市黒瀬町乃美尾、西条の酒造地からやや南に離れた農村地帯に金光酒造の蔵はある。その敷地北西に建つ仕込蔵は、構内で最も古い建物である。米・水・麹を合わせて醸すタンクを収める中心施設で、古い部分は明治前期、金光酒造が創業した明治十三年(一八八〇)前後にさかのぼり、明治後期に一部を増築して規模を広げた。
構造は土蔵造二階建。太い軸組に土を塗り込め、外壁を白漆喰で仕上げる耐火的な工法で、屋根は桟瓦葺とする。棟は北を上にしたT字形に配し、東西棟に対して南北棟の東側へ下屋を差し掛ける。一階を仕込みの場とし、二階を物置に充てる。
景観を軸に据えた登録制度
仕込蔵は令和二年(二〇二〇)四月、登録有形文化財となった。平成八年(一九九六)に始まったこの制度は、個々の傑作を選び出す重要文化財とは考え方が異なり、地域の景観形成に寄与する建造物を広く登録の対象とする。金光酒造の建物群は、稼働する酒造場の歴史的なまとまりを保っている点が評価され、一括して登録された。
平面は見せるためでなく使うために組まれている。東西棟は寄棟造、南北棟は切妻造とし、外壁は構内に共通する白漆喰で覆う。登録が記録するのは単独の壮麗な意匠ではなく、一世紀を超えて役目を果たし続ける実用の建物そのものである。
敷地で味わえる手造りの技
この蔵は、金光酒造が平成十五年(二〇〇三)に迎えた転機の舞台でもある。五代目の金光秀起が、先代までに導入していた自動プラントを退け、少人数の社員蔵人による手造りへ回帰して、新銘柄「賀茂金秀」を立ち上げた。名は地区名の「賀茂」に自らの名の二字を組み合わせたものである。発酵から貯蔵まで徹底した低温管理により、瓶詰め後もかすかな自然の炭酸ガスが残り、全国新酒鑑評会でたびたび金賞を受けている。
稼働中の仕込蔵に立ち入ることはできないが、敷地内の直売所では「賀茂金秀」や古くからの「桜吹雪」、果実のリキュールを販売する。庭先から白漆喰の壁を見上げ、その内側で醸された酒を味わう体験は、展示施設では得がたい直截さを持つ。
Q&A
- 仕込蔵とは何ですか。
- 醸造の中心となるタンクを据え、米・水・麹を合わせて酒を仕込む建物です。金光酒造では一階を仕込みの場、二階を物置としています。
- 建物はどのくらい古いのですか。
- 古い部分は創業期にあたる明治前期にさかのぼり、明治後期に増築されています。敷地内に現存する最も古い建物です。
- 内部を見学できますか。
- 稼働中の醸造空間のため、内部の見学は行っていません。敷地内の直売所で酒やリキュールを購入できます。
- 土蔵造とはどのような構造ですか。
- 軸組に土を塗り込め、厚い漆喰で仕上げる日本の伝統的な工法です。耐火性が高く、室内の環境が安定するため、醸造や貯蔵に適しています。
- いつ、なぜ登録されたのですか。
- 令和二年四月に登録有形文化財となりました。稼働する酒造場の歴史的なまとまりを保っている点が、他の金光酒造の建物とともに評価されました。
基本情報
| 名称 | 金光酒造仕込蔵(かねみつしゅぞうしこみぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 広島県東広島市黒瀬町乃美尾字東門前1364-2 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 34-0268 |
| 登録年月日 | 令和2年(2020)4月3日(第95回登録) |
| 員数・規模 | 1棟/土蔵造2階建、瓦葺、建築面積約409㎡ |
| 時代 | 明治前期(明治後期に増築) |
| アクセス | 東広島呉自動車道 馬木ICから車で約10分、西門前バス停から徒歩約3分。敷地内に直売所あり。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース — 登録有形文化財(建造物)該当記録
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013326
- 金光酒造株式会社 — 公式サイト
- https://www.kamokin.com/
- 東広島おでかけ観光サイト ヒガシル — 金光酒造
- https://higashihiroshima-kanko.jp/spot/kanemitsu/
最終更新日: 2026.07.05