金光酒造包装所 ― 広島県東広島市に息づく酒造りの歴史遺産

広島県東広島市黒瀬町の国道375号線沿いに佇む金光酒造包装所は、明治13年(1880年)創業の老舗酒蔵が持つ歴史的建造物群のひとつです。令和2年(2020年)4月に国の登録有形文化財に登録され、日本の酒造り文化を体現する貴重な産業遺産として、後世への継承が図られています。

金光酒造の歩み ― 明治から令和へ続く酒造りの系譜

金光酒造は明治13年(1880年)、広島県東広島市黒瀬町乃美尾で創業しました。東広島市の中でも西条地区から少し離れた、農業が盛んな静かな山間に蔵を構え、140年以上にわたって酒造りの伝統を守り続けています。

創業当時は「賀茂の露」「鬼酔」などの銘柄で酒造りを行い、やがて「桜吹雪」を代表銘柄として確立しました。平成15年(2003年)、五代目当主の金光秀起氏は、自動プラントの使用をやめ、社員蔵人による手造りの酒造りへと大きく舵を切りました。地元「賀茂」の地名と自身の名前から「金」「秀」を取って名付けた新銘柄「賀茂金秀」は、平成21年(2009年)に全国新酒鑑評会で金賞を初受賞。以来、数々の品評会で高い評価を受け続けています。令和5年(2023年)のG7広島サミットでは、ワーキング・ランチにて「賀茂金秀 純米大吟醸35」が各国首脳に振る舞われるという栄誉にも輝きました。

包装所と登録有形文化財群の文化的価値

金光酒造包装所は、令和2年(2020年)4月3日に国の登録有形文化財(建造物)として登録された8棟の建造物のひとつです。登録された建造物は「離れ」「瓶詰所」「包装所」「仕込蔵」「貯蔵蔵」「井戸小屋」「門及び塀」「煙突」の8棟で、酒造りに必要な施設がほぼ完全な形で残されている点が高く評価されています。

包装所は、醸造を終えた日本酒を出荷用に包装・梱包する施設として、酒蔵の生産工程における重要な役割を担ってきました。仕込蔵や瓶詰所とともに、酒造りの一連の流れを今に伝える貴重な建造物です。

なぜ登録有形文化財に登録されたのか

登録有形文化財制度は、平成8年(1996年)の文化財保護法改正により創設されました。都市化や生活様式の変化により急速に失われつつある近代の建造物を、緩やかな保護措置のもとで幅広く後世に継承していくことを目的としています。原則として建設後50年を経過し、国土の歴史的景観に寄与しているものなどが登録の対象となります。

金光酒造の建造物群は、黒瀬地区の歴史的景観に大きく貢献している点が評価されました。明治期の創業以来、各時代に建てられた建造物が一体となって酒造業の文化を体現しており、地域のランドマークとしても親しまれています。とりわけ煉瓦造の煙突は、基部が一辺約1.5メートルの正方形平面でイギリス積みとし、高さ約12メートルに達します。頂部には煉瓦を持出した帯状の装飾が施され、遠方からもよく見える地域のシンボルとなっています。

さらに、令和6年(2024年)12月にはユネスコ無形文化遺産に「伝統的酒造り」が登録され、日本の酒造り文化の世界的価値が改めて認められました。金光酒造の文化財建造物群は、こうした世界遺産級の伝統技術を物理的に支えてきた歴史的空間として、一層の重要性を帯びています。

建築の見どころ

国道375号線から金光酒造を眺めると、焼杉の羽目板貼り、白い漆喰壁、赤煉瓦の屋根という三つの素材が織りなす美しい水平ラインが印象的です。これらの素材が層を成して重なる様子は、酒造りの歴史が積み重なった地層のようにも見え、長年にわたる伝統の重みを静かに物語っています。

仕込蔵の内部には、太い梁や柱が力強く架かり、伝統的な酒造りの空間を今に伝えています。貯蔵蔵の2階には、かつての酒造りの息吹を感じさせる独特の雰囲気が漂います。

なお、登録有形文化財に登録された建造物は、現在も酒造業の施設および個人宅の一部として使用されているため、一般公開や見学は行われておりません。外観は国道沿いからご覧いただけます。

蔵元直売所 ― 伝統と革新が出会う空間

金光酒造の敷地内には、令和3年(2021年)にリニューアルされた蔵元直売所があります。広島のインテリアデザイン事務所FATHOMが手がけたこの空間は、酒蔵の内部をイメージした漆喰仕上げの壁面と、廃棄予定の日本酒瓶を砕いて窓台に封じ込めた独創的なデザインが特徴です。令和5年(2023年)にはグッドデザイン賞を受賞しました。

金光酒造はネット販売を行っていないため、蔵元直売所では代表銘柄「賀茂金秀」「桜吹雪」をはじめ、ほぼ全種類のお酒を購入することができます。レモンやイチゴのリキュール、季節限定品、一般の酒販店では手に入らない蔵元限定のお酒も並びます。すべての日本酒が冷蔵保存されており、品質管理への徹底したこだわりが感じられます。

営業時間は10:00〜17:15、日曜・祝日は定休日です。店内には蔵元の金光さんが好きなネコの置物が随所に飾られており、訪れる方の心を和ませています。

周辺情報とアクセス

東広島市は日本有数の酒どころとして知られ、西条地区には約1キロメートルにわたって7つの酒蔵が連なる「西条酒蔵通り」があります。毎年10月には日本最大級の酒のイベント「酒まつり」が開催され、全国から多くの日本酒ファンが訪れます。

黒瀬町周辺は穏やかな田園風景が広がり、近隣にはカフェや地元の飲食店もあります。広島市中心部や世界遺産・原爆ドームへは車で約1時間、瀬戸内海に面した安芸津地区では新鮮な牡蠣料理を楽しむことができます。

アクセスは、山陽自動車道「高屋」JCTから東広島呉道路に入り「馬木」ICで下車、国道375号線を呉方面へ約10分。公共交通機関をご利用の場合は、JR西条駅から黒瀬方面行きのバスに乗車し「西門前」バス停で下車。JR東広島駅(新幹線)からはタクシーで約15分です。

Q&A

Q包装所などの登録有形文化財を見学することはできますか?
A登録有形文化財に登録された建造物は、現在も会社の建物および個人宅の一部として使用されているため、一般の方への公開や見学は行われておりません。ただし、国道沿いから外観を眺めることができ、敷地内の蔵元直売所は営業時間内にどなたでもお立ち寄りいただけます。
Q金光酒造へのアクセス方法を教えてください。
Aお車の場合は、山陽自動車道「高屋」JCTから東広島呉道路に入り「馬木」ICで下車、国道375号線を呉方面へ約10分です。公共交通機関では、JR西条駅から黒瀬方面行きバスで「西門前」下車。JR東広島駅(新幹線)からタクシーで約15分です。
Q金光酒造のお酒はオンラインで購入できますか?
A金光酒造はネット販売を行っていないため、直接購入するには蔵元直売所が最適です。公式サイトに掲載されている全国のお取扱い酒販店でも一部の銘柄をお求めいただけます。蔵元直売所でしか手に入らない限定品もありますので、ぜひ足をお運びください。
Q訪問に適した季節はありますか?
A一年を通じて訪問を楽しめますが、春は周辺の桜、秋は紅葉が美しい季節です。酒造りのシーズンは秋から冬にかけてで、蔵の周辺に酒造りの香りが漂うこともあります。10月には東広島市で「酒まつり」が開催され、地域全体が日本酒で賑わいます。

基本情報

名称 金光酒造包装所(かねみつしゅぞうほうそうじょ)
文化財種別 登録有形文化財(建造物)
登録年月日 令和2年(2020年)4月3日
所在地 〒739-2622 広島県東広島市黒瀬町乃美尾字東門前1364-2
所有者 株式会社金光酒造
創業 明治13年(1880年)
代表銘柄 賀茂金秀(かもきんしゅう)、桜吹雪(さくらふぶき)
直売所営業時間 10:00〜17:15(日曜・祝日定休)
電話番号 0823-82-2006
公式サイト https://www.kamokin.com/

参考文献

登録有形文化財 — 株式会社金光酒造 Gallery
https://www.kamokin.com/gallery/gallery_b.html
金光酒造 | 東広島市観光協会
https://hh-kanko.ne.jp/sightseeing/130/
金光酒造|東広島おでかけ観光サイト「ヒガシル」
https://higashihiroshima-kanko.jp/spot/kanemitsu/
広島県・黒瀬町《金光酒造》| Discover Japan
https://discoverjapan-web.com/article/80169
金光酒造煙突 — 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/456329
金光酒造 蔵元直売所 | FATHOM
https://fathom-design.jp/works/1630/
Company — 株式会社金光酒造
https://www.kamokin.com/about_us/company.html
ユネスコ無形文化遺産「伝統的酒造り」について|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/koujikin/index.htm

最終更新日: 2026.03.24