敷地北端を画す桁行三十九メートルの蔵
金光酒造の敷地北端には、桁行およそ三十九メートルに及ぶ長大な二階建の蔵が延びる。仕込蔵の北側に接して建つ貯蔵蔵である。主要部は明治後期に建てられ、大正後期に増築されており、酒造場の生産の拡大とともに姿を伸ばしてきた。
隣接する蔵と同じく土蔵造で、軸組を白漆喰塗の土壁で覆い、切妻造の屋根に桟瓦を葺く。建物は二つの部分が連なる。背の高い東棟と、その脇に一段下げて据えた西棟の落棟からなる。内部は一階を土間、二階を板敷とし、西棟の一階には貯蔵タンクが並ぶ。
登録有形文化財となった理由
貯蔵蔵は令和二年(二〇二〇)四月に登録有形文化財となった。平成八年に発足した登録制度は、地域の歴史的な景観を支える建造物を対象とする。道沿いに長く続くこの蔵の規模は、酒造場全体の見え方を大きく左右しており、外から望む白漆喰の側面と低い瓦屋根の稜線が、敷地北辺に落ち着いた工場の趣を与えている。
二棟の高低差にも目を留めたい。均一な一棟にまとめず、背の高い東棟の脇に低い西棟を落棟として据える。内部の用途に即した実際的な処理であると同時に、長い量塊を通りから把握しやすい形へと分節している。
低温貯蔵と酒の鮮度
金光酒造にとって貯蔵は受け身の工程ではない。搾りから出荷まで酒を厳密な低温下で管理し、「賀茂金秀」の身上であるフレッシュでかすかに発泡する質を保とうとする。この蔵に並ぶタンクはその管理の一部であり、五代目が平成十五年に手造りへ立ち返って捉えようとした、搾りたての質を守っている。
稼働する内部は公開されていないが、長い漆喰壁は敷地から十分に眺められ、近くの直売所でその成果を味わえる。敷地に湧く中硬水、地元と広島県産の酒米、そして丹念な低温貯蔵が、一杯のなかで出会う。
Q&A
- ここには何が貯蔵されているのですか。
- 酒の貯蔵タンクが低温下で保管されています。とくに西棟一階にタンクが並びます。
- なぜこれほど長いのですか。
- 桁行は約39メートルに及びます。明治後期から大正後期にかけて増築を重ね、生産の拡大とともに延びてきたためです。
- 屋根の段違いは何ですか。
- 背の高い東棟と、その脇に一段低く据えた西棟からなります。この低い付属部を落棟(おちむね)と呼びます。
- 内部を見学できますか。
- 稼働中のため内部は非公開です。長い漆喰壁は敷地から眺められ、直売所で酒を購入できます。
- 貯蔵は味にどう関わりますか。
- 金光酒造は搾りから出荷まで酒を低温で管理し、フレッシュで軽い発泡感を保っています。貯蔵蔵は仕上がりの質と直接結びついています。
基本情報
| 名称 | 金光酒造貯蔵蔵(かねみつしゅぞうちょぞうぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 広島県東広島市黒瀬町乃美尾字東門前1364-2 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 34-0269 |
| 登録年月日 | 令和2年(2020)4月3日(第95回登録) |
| 員数・規模 | 1棟/土蔵造2階建、瓦葺、建築面積約315㎡、桁行約39m |
| 時代 | 明治後期(大正後期に増築) |
| アクセス | 東広島呉自動車道 馬木ICから車で約10分、西門前バス停から徒歩約3分。敷地内に直売所あり。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース — 登録有形文化財(建造物)該当記録
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013327
- 金光酒造株式会社 — 公式サイト
- https://www.kamokin.com/
- 東広島おでかけ観光サイト ヒガシル — 金光酒造
- https://higashihiroshima-kanko.jp/spot/kanemitsu/
最終更新日: 2026.07.05