石岡第一発電所施設とは

石岡第一発電所施設は、茨城県高萩市大字横川から北茨城市中郷町石岡にかけて残る明治44年(1911年)竣工の水路式発電所施設で、平成20年(2008年)12月2日に重要文化財に指定された。指定の対象は本館発電機室、本館旧変圧器室、本館変電室、調圧水槽、水槽余水路、第二号水路橋、第一号水路橋、沈砂池、取水堰堤の9件で、内訳は3棟、3基、3所である。

大北川にほぼ平行して、施設は東西に細長く延びている。上流で川の水を取り、山肌を縫う水路で運び、落差をつけて発電機に落とす。石岡第一発電所施設はダムを持たない水路式で、川の流れそのものが動力源になる。

特筆すべきは、これが博物館化された遺構ではないという点である。所有者の東京発電株式会社のもとで、施設は現在も電気をつくり続けている。

日立鉱山の電力を賄うために

建設の動機ははっきりしている。日立鉱山の施設拡充にともなって電力需要が急増し、それを自前で賄う必要が生じたためである。茨城県教育委員会の記録によれば、久原鉱業所日立鉱山の工作課長であった小平浪平と、同課技士の宮長平作を中心に計画が進められ、明治42年(1909年)10月に着工、明治44年(1911年)10月に竣工した。その後、大正期の増設工事を経て現在の姿に整えられている。

鉱山会社が自社の技術者だけで発電所を一式つくる。今日の感覚では大胆に映るが、当時の日本では電力を買ってくる市場がまだ育っていなかった。石岡第一発電所施設は、必要に迫られた鉱山が土木も建築も電気も抱え込んで解いた解答である。

わが国最初の鉄筋コンクリート発電所として

石岡第一発電所施設が重要文化財に指定された理由は、材料と工法にある。文化庁の国指定文化財等データベースは、施設全般にわたって鉄筋コンクリート技術を用いたわが国で最初の発電所施設であるとし、とりわけ本館については、わが国に現存する最古級の鉄筋コンクリート造建築物として貴重であると評価している。

意味を分けて考えたい。鉄筋コンクリートを一部に使った例なら、この時期にほかにもある。石岡第一発電所施設が抜きん出ているのは、建物も橋も水槽も堰堤も、性格の異なる構造物をすべて同じ材料で組み立てた点である。明治44年(1911年)という年代で、しかも山中の現場でそれをやり切った。指定基準は9件のうち8件が「歴史的価値の高いもの」、沈砂池のみが「技術的に優秀なもの」とされている。

なお、指定当初はこれに水槽が加わっていた。平成23年(2011年)の東北地方太平洋沖地震で水槽が滅失し、所有者の記録によれば同年10月に重要文化財の指定が解除されている。現在の9件という数は、その結果である。

石岡第一発電所施設の見どころを水の順に

9件を上流から下流へ、水の流れる順に追うと構成が頭に入りやすい。

出発点は取水堰堤である。重力式コンクリート造で堤長30.0メートル、堤高6.2メートル。制水門と排砂門を備え、石積の護岸と第一号開渠が附属する。ここだけは大正期、西暦では1912年から1925年の間の築造で、増設工事の跡がはっきり残る部分にあたる。

取り込まれた水は沈砂池に入る。延長53.5メートルの鉄筋コンクリート造で、上下流に制水門を持つ。水に混じった砂を沈めて水車を守る装置で、地味だが機械の寿命を左右する。9件のうちこれだけが「技術的に優秀なもの」の基準で指定されている点は覚えておきたい。

その先で水路は谷を渡る。第一号水路橋は橋長12.2メートル、第二号水路橋は橋長20.0メートル、どちらも鉄筋コンクリート造の単アーチ橋である。水を通すための橋が、明治44年(1911年)の時点でこの材料と形式で架けられている。橋としての規模は小さいが、日本の鉄筋コンクリートアーチの初期例として見応えがある。

山腹を進んだ水は調圧水槽に達する。円筒形の鉄筋コンクリート造で、直径8.2メートル、高さ11.0メートル。急に負荷が変わったとき水圧の衝撃を吸収する役目を負う。隣接する水槽余水路は石造と鉄筋コンクリート造の併用で、延長は212.7メートルに及ぶ。余った水を安全に逃がすための長い水路で、排砂路や減勢池も含まれる。

そして本館に至る。発電機室は明治44年(1911年)の建設で、鉄筋コンクリート造、建築面積264.99平方メートル、鉄板葺。所有者の東京発電株式会社は、上部が欠円アーチ形になった大窓を連続させ、採光に配慮したつくりだと説明している。山あいの小さな発電所にしては構えが大きい。

発電機室の東面には旧変圧器室が接続する。同じく明治44年(1911年)、建築面積139.25平方メートル。さらにその東に続く変電室は大正5年(1916年)の建設で、建築面積149.06平方メートルの2階建、高圧線の引入口が付く。3棟が一列に連なり、建てられた年の違いがそのまま壁面の表情の違いになっている。

石岡第一発電所施設の見学方法とアクセス

最初にはっきりさせておきたい。石岡第一発電所施設は稼働中の発電所であり、東京発電株式会社の管理する施設である。内部の一般公開は行われておらず、敷地は立入禁止である。見学は公道など敷地外から外観を望む範囲に限られる。

それでも見られるものはある。本館は谷筋に建っており、川沿いの道から屋根と壁面の一部を目にすることができる。水路橋は山側にあり、位置によっては道路からアーチを見上げられる。ただし高圧設備を扱う現場であるから、柵や表示のある場所には絶対に立ち入らないこと。危険であるうえ、所有者の理解のもとに成り立っている外観見学そのものを損なうことになる。

撮影も同じ条件で、敷地外からであれば差し支えない。設備の細部や保安に関わる部分を執拗に記録するような撮り方は避けたい。

アクセスは、JR常磐線の高萩駅が最寄りである。ただし発電所は市街から大北川をさかのぼった山中にあり、路線バスの便はない。車を使い、高萩駅からおよそ25分をみておきたい。道幅の狭い区間があり、冬季は路面の凍結もある。周辺に見学者用の駐車場は用意されていないため、通行の妨げにならない場所を選ぶ必要がある。

Q&A

Q石岡第一発電所施設は見学できますか。内部に入れますか。
A内部は非公開で、敷地は立入禁止です。石岡第一発電所施設は東京発電株式会社が管理する稼働中の発電所であるためで、見学は敷地外から外観を眺める範囲に限られます。柵や表示のある場所には立ち入らないでください。
Q石岡第一発電所施設はいまも発電しているのですか。
Aはい。明治44年(1911年)の竣工以来、水路式の水力発電所として稼働を続けています。重要文化財でありながら現役の産業施設であることが、石岡第一発電所施設のもっとも大きな特徴です。
Q石岡第一発電所施設の指定対象は何件ですか。
A9件です。本館発電機室、本館旧変圧器室、本館変電室、調圧水槽、水槽余水路、第二号水路橋、第一号水路橋、沈砂池、取水堰堤で、内訳は3棟、3基、3所となります。指定当初は水槽を含んでいましたが、平成23年(2011年)の東北地方太平洋沖地震で滅失し、同年10月に指定が解除されました。
Q石岡第一発電所施設はなぜ重要文化財なのですか。
A本館から橋、水槽、堰堤まで、性格の異なる構造物の全般にわたって鉄筋コンクリート技術を用いた、わが国で最初の発電所施設だからです。本館は現存する最古級の鉄筋コンクリート造建築物としても評価され、平成20年(2008年)12月2日に指定されました。
Q石岡第一発電所施設への行き方を教えてください。
AJR常磐線の高萩駅が最寄りです。路線バスの便がないため車の利用が前提となり、高萩駅からおよそ25分です。大北川に沿って山側へ入る道は幅が狭い区間があり、冬季は凍結にも注意が必要です。見学者用の駐車場はありません。

基本データ

名称石岡第一発電所施設
所在地茨城県高萩市大字横川、同北茨城市中郷町石岡
指定区分重要文化財
指定年平成20年(2008年)12月2日
員数9件(3棟、3基、3所)
寸法本館発電機室は建築面積264.99平方メートル、調圧水槽は直径8.2メートル・高さ11.0メートル、取水堰堤は堤長30.0メートル・堤高6.2メートル
所有者東京発電株式会社
公開状況稼働中の発電所のため内部非公開・敷地立入禁止。敷地外から外観のみ見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 石岡第一発電所施設 本館発電機室
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00004308
文化遺産オンライン 石岡第一発電所施設 本館旧変圧器室
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/188406
茨城県教育委員会 いばらきの文化財 石岡第一発電所施設
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/kuni-31/
東京発電株式会社 有形文化財
https://tokyohatsuden.co.jp/csr/cultural_property/

最終更新日: 2026.09.06

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  1. 石岡第一発電所施設 本館発電機室 0.00 km
  2. 石岡第一発電所施設 本館旧変圧器室 0.02 km
  3. 石岡第一発電所施設 本館変電室 0.03 km
  4. 石岡第一発電所施設 調圧水槽 0.49 km
  5. 石岡第一発電所施設 水槽余水路 0.74 km
  6. 石岡第一発電所施設 第二号水路橋 0.99 km
  7. 石岡第一発電所施設 第一号水路橋 1.41 km
  8. 石岡第一発電所施設 沈砂池 2.70 km
  9. 石岡第一発電所施設 取水堰堤 2.79 km