鉄管を支えるためだけの石垣

石岡第二発電所鉄管路擁壁は、茨城県北茨城市中郷町石岡にある総延長49メートルの石造擁壁で、大正2年(1913年)の築造、平成18年(2006年)8月3日に登録有形文化財となった。

水槽から本館へ下る1条の水圧鉄管に沿って築かれている。ひとつの登録に二種類の仕事が含まれる。水槽下の鉄管取付部分を受ける石積擁壁と、余水路や道路に接する箇所など補強の要る位置に鉄管と平行して積まれた擁壁である。

水圧鉄管はおとなしい構造物ではない。落ちてくる水は曲がりのたびに外へ押し、支点を強く突く。管そのものも一日のうちに温度で伸び縮みする。下の地面が動けば継手はゆるむ。石岡第二発電所鉄管路擁壁は、鉄管の下の斜面を据えた位置に留めておくために置かれている。

花崗岩を角から落とす

石材は花崗岩で、積み方は谷積。四角く整えた石を斜めに向け、角を下にして隣の石に噛ませていくため、目地は斜めに走る。荷重は縦一本の目地を伝わらず横へ分散し、切土の斜面が最初の数十年に見せるわずかな沈下も、この積み方なら追随できる。

花崗岩が選ばれたのは硬さのためで、見栄えのためではない。近くで見ると面は粗く、石の大きさもそろわず、積み目は地形に応じて上がっていく。この不ぞろいは、決まった納まりを繰り返したのではなく、石工が現場を読みながら積んだ証拠である。石岡第二発電所鉄管路擁壁で当時の仕事ぶりがもっともよく分かるのはこの部分になる。

擁壁が登録されるということ

石岡第二発電所鉄管路擁壁の登録番号は第51回登録の第08-0217号、基準は国土の歴史的景観に寄与しているもの。擁壁は付属の工作物であり、それ単独で文化財として記録されることはあまりない。発電所の他の5件と併せて登録されたことには、この場所を建物だけでなく支える工作物まで含めた一つの系として見る立場が表れている。

この判断には実務上の理由もある。鉄管そのものは、管である以上、年月のうちに補修も取替えも受けてきた。その下の石垣は、それを必要としてこなかった。登録有形文化財の制度では守られながら働き続けられる。壊れれば鉄管を道連れにする構造物にとって、これ以外の扱い方はない。

石岡第二発電所鉄管路擁壁の見学

石岡第二発電所鉄管路擁壁は、東京発電株式会社が所有する稼働中の無人発電所の敷地にある。立入りはできず、見学のための場所も設けられていない。下の公道からまず目に入るのは斜面を登る水圧鉄管の線で、その下の石積は、鉄管が道路に近づく位置でもっとも見分けやすい。

公共交通機関では現地に届かない。JR常磐線南中郷駅から約5キロ、車でおよそ15分で、タクシーかレンタカーが手段になる。道路脇からの撮影に制限はない。擁壁を追って斜面をよじ登るのは、立入りであると同時に実際に危険である。鉄管の脇は急で、足元も締まっていない。

北茨城市は毎年秋に文化財を公開しており、上流の石岡第一発電所が事前申込制で対象に入った年もある。石岡第二発電所鉄管路擁壁は含まれていないため、公開に合わせて訪ねるつもりなら、その年の内容を市教育委員会生涯学習課で確認してほしい。

Q&A

Q石岡第二発電所鉄管路擁壁は何を支えていますか。
A水槽から本館へ下る1条の水圧鉄管に沿う地盤です。水槽下の取付部を受ける部分と、余水路や道路に接する区間の擁壁が含まれます。
Q石岡第二発電所鉄管路擁壁の長さはどれくらいですか。
A総延長49メートルです。一続きではなく、いくつかの区間の合計になります。いずれも花崗岩の谷積で築かれています。
Q擁壁がなぜ文化財として扱われるのですか。
A石岡第二発電所鉄管路擁壁が、切り離された断片ではなく一続きの水路の一部として読まれているからです。発電所の6件は平成18年(2006年)にまとめて登録されました。
Q石岡第二発電所鉄管路擁壁の脇を歩けますか。
A歩けません。稼働中の発電所の私有地で、斜面は急で足場も不安定です。見学は下の公道からになります。
Q石岡第二発電所鉄管路擁壁はいつ築かれましたか。
A大正2年(1913年)、発電所の他の施設と同時です。発電の開始は翌大正3年(1914年)で、石積は当初のものです。

基本情報

名称石岡第二発電所鉄管路擁壁(Ishioka No. 2 Power Station Penstock Retaining Wall)
所在地茨城県北茨城市中郷町石岡
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成18年(2006年)登録
員数1所
寸法総延長49メートル
所有者東京発電株式会社
公開状況公道からの外観見学のみ。稼働中の発電施設のため敷地内と内部は非公開。

参考文献

国指定文化財等データベース 石岡第二発電所鉄管路擁壁(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005553
いばらきの文化財 石岡第二発電所鉄管路擁壁(茨城県教育委員会)
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6109/
有形文化財(東京発電株式会社)
https://tokyohatsuden.co.jp/csr/cultural_property/
令和8年度北茨城市文化財公開 集中曝涼の開催のお知らせ(北茨城市)
https://www.city.kitaibaraki.lg.jp/docs/2026080600013

最終更新日: 2026.09.05