川へ水を返すための水路

石岡第二発電所余水路は、茨城県北茨城市中郷町石岡にある石造及びコンクリート造の開渠で、延長107メートル、大正2年(1913年)の築造、平成18年(2006年)8月3日に登録有形文化財となった。

起点は沈砂池の南側壁に沿って設けられた越流式の余水吐で、そこから丘の斜面を下って大北川に達する。発電に使えない水、あるいは使わない水は、ここで水路から抜けてすぐ下流の川へ戻る。

導水路には、水車が絞られたり止まったりしたときに水を逃がす場所が必ずいる。逃げ場のない水路で門を閉めれば、水は壁を越える道を自分で探し、堤ごと持っていく。石岡第二発電所余水路はその問いへの答えであり、同時に沈砂池と副水路から出る土砂の排出口も兼ねている。

斜めに積まれた石

石岡第二発電所余水路の壁面は谷積である。四角く整えた石を斜めに向け、角を下にして隣り合う石のあいだに落とし込む積み方で、目地は水平ではなく斜めに走る。一つの石を押す力は周囲の四つが受け持ち、斜面につきものの小さな沈下も吸収してしまう。

前面の一部にはコンクリートが入る。この併用は雑なのではない。石工の判断が地盤に合う場所には石を、積んだ石では出せない一体の強さが要る場所にはコンクリートを充てている。どちらがどこに使われ、なぜそうしたのかを読むことが、この構造物を眺める楽しみの大半を占める。

勾配はきつい。上端に立つと、道路から見ているときには分からなかった川までの落差がはっきりする。水の音が、この水路が生きていることを最初に教えてくれる。

登録に至った理由

石岡第二発電所余水路の登録番号は第51回登録の第08-0215号、基準は国土の歴史的景観に寄与しているもの。同じ発電所の5件と同時に登録されたため、取水口から発電機までの順序がひとまとまりの土木技術として読める。

余水路が文化財として扱われることは多くない。何かが起きた日のために存在する部分であり、たいていは黙って造り替えられる。これを登録有形文化財として残したことで、大正2年(1913年)に人の手で積まれた石垣が、地味な役目を果たし続けたまま保存されている。

石岡第二発電所余水路の見学

石岡第二発電所余水路は東京発電株式会社の所有で、無人で動いている発電所の敷地内にある。立入りはできず、水路沿いの通路も解説板もない。できるのは公道からの外観の観察までで、川に近い下流側のほうが姿を追いやすいことが多い。

現地までは車が要る。JR常磐線の南中郷駅から約5キロ、所要は15分ほどで、石岡地区に路線バスは通っていない。公道からの撮影に制限はない。水路の中へ降りるのはやめてほしい。床は斜面上の濡れた石で滑りやすく、上流の門が開けば予告なく水が来る。

北茨城市の秋の文化財公開では、上流の石岡第一発電所が申込制で少人数に公開された年がある。石岡第二発電所余水路はその一覧に載っておらず、内容は毎年見直されるので、市教育委員会生涯学習課の案内を確かめてほしい。

Q&A

Q石岡第二発電所余水路は何のためにありますか。
A発電に回せない余った水を沈砂池から大北川へ戻すための水路です。沈砂池と副水路にたまった土砂を排出する経路も兼ねています。
Q石岡第二発電所余水路の長さはどれくらいですか。
A延長107メートルです。沈砂池南側の越流式余水吐から斜面を下って川に達します。石積を主体とし、前面の一部にコンクリートの補強が入ります。
Q石岡第二発電所余水路の石積は何という積み方ですか。
A谷積です。角を下に向けた石を斜めに落とし込む積み方で、目地が斜行します。力が横へ分散され、地盤のわずかな動きにも追随します。
Q石岡第二発電所余水路の中を歩けますか。
A歩けません。稼働中の発電所の私有地にあり、床は急勾配の濡れた石で、いつ通水されるか分かりません。見学は公道からに限られます。
Q石岡第二発電所余水路はいつのものですか。
A大正2年(1913年)、発電所の他の施設と同時の築造です。発電開始は翌大正3年(1914年)。石積は後年の造り替えではなく当初のものです。

基本情報

名称石岡第二発電所余水路(Ishioka No. 2 Power Station Spillway Channel)
所在地茨城県北茨城市中郷町石岡
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成18年(2006年)登録
員数1所
寸法延長107メートル
所有者東京発電株式会社
公開状況公道からの外観見学のみ。稼働中の発電施設のため敷地内と内部は非公開。

参考文献

国指定文化財等データベース 石岡第二発電所余水路(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005551
いばらきの文化財 石岡第二発電所余水路(茨城県教育委員会)
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6100/
有形文化財(東京発電株式会社)
https://tokyohatsuden.co.jp/csr/cultural_property/
令和8年度北茨城市文化財公開 集中曝涼の開催のお知らせ(北茨城市)
https://www.city.kitaibaraki.lg.jp/docs/2026080600013

最終更新日: 2026.09.05