總持寺とは ― 能登で開かれ、鶴見へ移った曹洞宗の大本山
總持寺は、神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-1-1にある曹洞宗の大本山で、元亨元年(1321年)に能登で開かれ、明治44年(1911年)に現在地へ寺基を移した寺院である。山号は諸嶽山(しょがくさん)。福井県の永平寺とともに曹洞宗の両大本山とされ、境内に建つ木造の堂宇など18件が国の登録有形文化財に登録されている。
始まりは、能登国櫛比庄(現在の石川県輪島市門前町)にあった諸嶽観音堂である。瑩山紹瑾(けいざんじょうきん)禅師がこの観音堂を譲り受けて禅院に改め、總持寺と名づけた。曹洞宗では道元禅師を高祖、瑩山禅師を太祖と仰ぎ、總持寺はその瑩山禅師の寺として全国に末寺を広げていった。
転機は明治31年(1898年)の大火である。伽藍の大半を失ったのち、再建の方針をめぐって首都近郊への移転を求める建白や請願が相次いだ。明治38年(1905年)に貫首となった石川素童禅師が移転を推し進め、明治40年(1907年)に鶴見で地鎮式、明治44年(1911年)11月5日に移転遷祖式が営まれた。能登の旧地は總持寺祖院として今も法灯を守っている。
移築の堂から始まった總持寺の伽藍
鶴見に移った直後の總持寺の境内は、けっして整っていたわけではない。寺の公式デジタルアーカイブによれば、当初あったのは山形県鶴岡市の総穏寺から移した本堂(現在の放光堂)と跳龍室(現在の虎嘯窟)、それに仮の僧堂や庫裡ほどであった。大正年間に仏殿・紫雲台・香積台などが順に建ち、大正12年(1923年)の関東大震災による被害を経て、現在の伽藍配置が固まったのは昭和に入ってからである。
登録された18件は、この整備の過程をほぼそのまま年代順にたどれる顔ぶれになっている。
- 幕末の安政年間に建ち、明治44年(1911年)に移築された放光堂と虎嘯窟
- 移転と同時期の仮真殿と虎嘯窟渡廊下
- 大正4年(1915年)前後の仏殿(大雄宝殿)・紫雲台・衆寮・鐘鼓楼・鐘楼・百間廊下及び門、同年竣工の書院を昭和32年(1957年)に移築した待鳳館
- 大正9年(1920年)の三松関と香積台、大正12年(1923年)の放光観音台座、大正14年(1925年)の向唐門
- 昭和12年(1937年)の大僧堂と御霊殿、昭和17年(1942年)の三宝殿
このうち16件が平成17年(2005年)7月12日に、仮真殿と虎嘯窟渡廊下の2件が令和5年(2023年)8月7日に登録された。登録基準の内訳を見ると、仏殿・百間廊下及び門・向唐門・三松関の4件が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、鐘楼が「再現することが容易でないもの」、残りが「造形の規範となっているもの」である。總持寺の伽藍のうち、景観の骨格をなす建物と、細部の意匠に見どころのある建物とが、はっきり分けて評価されていることがわかる。
總持寺の境内の配置と歩く順序
總持寺の寺域は約15万坪に及ぶ。駅側から歩くと、最初にくぐるのが総門の三松関で、ここから参道が西へ延びる。鉄筋コンクリート造の三門(登録対象外)を抜けると、右手に総受付を兼ねる香積台が西を向いて建ち、その北側に迎賓の待鳳館と、禅師の大書院である紫雲台が続く。
参道の正面には向唐門が構え、その奥を百間廊下が東西に横切る。廊下の北、壇上に南を向いて建つのが伽藍の中心の仏殿で、仏殿の後方に御霊殿、東側に本堂の大祖堂(登録対象外)がある。仏殿の西には放光堂が東を向き、その先の虎嘯窟とは渡廊下で結ばれている。放光堂の背後には仮真殿が接する。
仏殿の南西には修行の場が集まる。衆寮が東を向いて建ち、その南に大僧堂が並ぶ。放光堂と衆寮のあいだに立つのが鐘鼓楼である。伽藍から南へ下ると鐘楼と三宝殿があり、南西には放光観音を載せる石造の台座が立つ。
18件をひととおり外から見るなら、三松関から香積台、向唐門と百間廊下を経て仏殿の周囲を西へ回り、最後に南の鐘楼・三宝殿・放光観音台座へ下る順が歩きやすい。境内は起伏があり、南側の建物へは坂や石段を伴う。
總持寺へのアクセスと参拝の条件
總持寺の公式サイトによると、JR京浜東北線の鶴見駅西口から徒歩約5分、京浜急行線の京急鶴見駅と花月総持寺駅からはそれぞれ徒歩約7分である。車の場合は首都高速横羽線の汐入出口(東京方面から)で約15分、生麦出口(横浜方面から)で約10分と案内されている。寺の駐車場があるが、年末年始や行事の日には使えないことがある。
總持寺の境内は誰でも自由に参拝できる。拝観・法要・墓地などの受付は香積台の総受付(電話045-581-6021)が扱い、同じ建物に売店と休憩所がある。
堂内は、案内者の説明を聞きながら諸堂を巡るガイド付きの諸堂拝観(一周約1時間)で見学する。2026年9月に確認した公式サイトの参拝案内では、点心(食事)つきの拝観が1日2回、午前11時と午後2時に始まる形で案内され、1回あたり3〜20名、1人3,500円で、2週間前までの予約が必要とされている。それ以外の拝観は受け付けていないとも明記されている。大遠忌などの行事のために受付を止める月や日が設けられることがあり、条件は変わりやすい。訪れる前に公式サイトか総受付で確かめたい。
各建物の内部公開の有無や、外観をどこから見るとよいかは、それぞれの建物のページで扱っている。
参考文献
- はじめての方へ|曹洞宗大本山總持寺
- https://www.sojiji.jp/about/
- 参拝のご案内|曹洞宗大本山總持寺
- https://www.sojiji.jp/visit/
- アクセス|曹洞宗大本山總持寺
- https://www.sojiji.jp/access/
- 境内マップ|曹洞宗大本山總持寺
- https://www.sojiji.jp/map/
- 總持寺の歴史-所蔵史資料からみる-|曹洞宗大本山總持寺デジタルアーカイブ
- https://adeac.jp/sojiji/top/timeline/index.html
- 總持寺仏殿(大雄宝殿)|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004717
- 總持寺仮真殿|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014577
- 大本山總持寺|横浜市観光情報サイト
- https://www.welcome.city.yokohama.jp/spot/details.php?bbid=197
最終更新日: 2026.09.16
基本情報
| 名称 | 總持寺 |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-1-1 |
| 所有者 | 宗教法人大本山總持寺 |
| 指定 | 登録有形文化財 18件 |
| 座標 | 35.50616, 139.67054 |